私の還暦過去帳(182)
これは昔、NHK80周年記念番組で制作した作品『ハルとナツ』の物語
の製作過程の批判を書いたものです。
私のお勧め映画の紹介です。
題名は『TSOTSI 』と言う今年度アカデミー外国映画賞受賞作品です。
この映画は南アフリカ社会の縮図を描いた様な感じがします。
かなり暴力やグロテスクな場面も出てきます、我々が普通見ることが
余りないシーンです。
全部黒人貧困社会の底辺の動きをストーリーにはめ込みながら、時に
はジーンと感動のシーンが出て来ます。それと言うのも、ギャングと
して殺人も平気な若い黒人青年が、生まれてまだ間もない赤ちゃんを、
強盗で乗っ取った車の後部座席に見つけてそれから、その若いギャン
グが自分の人生の生い立ちから考えて、覚り、反省して行く物語です。
現在の南アの現状が貧富の差から来る犯罪と社会の混沌とした現状を、
良く適切に映し出していると感じます。私が40年近く前に見た南ア
の状態も思い出した映画で、暴力的描写がリアルで、多いながらも、
誘拐された赤ちゃんの生命力とその希望を強く感じさせる映画である。
特に赤ちゃんがお腹を空かして泣き叫んでギャングの黒人青年が缶の
練乳をミルクビンにも入れる事無く、赤ちゃんの口に含ませて、それ
を飲んでいる赤子に、なぜか活きると言う活力を見た感じです。
南アフリカ社会の混迷と混沌とした社会で、犯罪が横行するする貧民
街のその中でも、人々はたくましく生きており、誘拐した赤ん坊に乳
を与える女性が自分の子供と同じ様に、乳房を赤子の口に含ませる
シーンは主人を亡くして裁縫仕事で自活している困窮に有りながら、
ギャングの黒人青年が犯罪で得た、多額の金の受け取りを拒否して、
拳銃を付きつけられて、強制されて居るのにかかわらず、優しく奪わ
れて来た赤子の世話をしているシーンは、見ていてこの映画が、どこ
か救いのある感動を心に持たせるのは、そのようなシーンが有るから
と感じます。この映画を最後まで見て、一番感動したのは、その撮影
で関係した全ての出演者の名前を、全員書いてあるかと思うくらいに
細かな字でびっしりと二分間以上も長々と画面にゆっくりと流れて、
中年過ぎの観客ばかりが目立つ土曜日の僅かな観客の中で、静かに見
ている人々が居た事も驚きました。
書き連ねた名前は、おそらく貧民街の撮影で協力した一般の人々の名
前と感じました。最後の字幕が終りかける時に、これらの撮影に協力
した人々に感謝すると一言書いて有りました。出演者としてあの群集
役として、チヨイ役で出演した人々もこの作品の、今年度アカデミー
外国映画賞受賞作品の受賞者達と感じます。
この作品の結末は貴方の眼でご覧下さい。それから・・・、
以前に見た映画で、アフガニスタンの動乱終了後に初めてアフガン人
の監督で全ての出演者がアフガン人で、圧政をしていたタリバンの情
勢を演じていたが、その映画もタイトルの中で、これも延々と書かれ
た出演者の名前が作品の感動を、より高めたと感じました。
それからしたら・・・・、
NHKが80周年記念番組で制作した作品『ハルとナツ』の物語のドラ
マの巻頭のタイトルには、ブラジルで撮影に協力した日本人の出演者
などは、どもにも書いては無く、でかでかと最初に大書きされた、
『橋田壽賀子、原作・脚本』とが眼に飛び込み、まさに他の細かな出
演者などの配慮などはどこにも感ずることは出来ませんでした。
わたしが感じたことは、NHKが『おしん』のドラマを念頭に置き、
橋田壽賀子と言う名前での『感激のお涙頂戴』のドラマ制作をしてい
たと感じます、もしこれがブラジルで出演した多くの協力者、後援し
た関係者の名前を網羅して字幕に出して居たら、もっと違った80周
年の記念番組となったと感じます。
それこそ全ての多くの日本人と日系人がブラジルで、これだけ協力し
て祖国に、このハルとナツのドラマを見せんが為に、昔の洋服を引っ
張り出して、時代物のカバンなどを持ち寄り、手弁当で演出に協力し
たことを示す事が、もっと次元の高いドラマとなり、NHKの80年記
念制作とした真意を、日本全国のお茶の間に示したと感じます。
私が個人的な心と思考で思うことは、この様な考えも持たない製作者
は、私が過去に見た映画や昨日鑑賞した『TSOTSI 』の映画からして
も失格と感じました。