2023年10月6日金曜日

私の還暦過去帳(786)

 移住の昔話, (10)

昔の写真から・・、
先日から書斎の整理をしていました。
すでにビジネス関係は、あらかた税金関係も書類の保存
義務も過ぎて、殆んど破棄してしまいました。
貴重な、すでに亡くなった友人などの手紙も 読み返して
記憶に納めて、それも破棄致しました。
中から出て来た写真は手元に留めていましたが、かたず
けの手を休めて秋の昼下がりのお茶の時間に、ぼんやり
と眺めていると、過去に消えた遠い昔の思い出が、
ふと・、思い出され、懐かしい顔も浮かんで来ました。

過去に流れ、二度と戻らない時の模様が灰色に染まり、
そこの僅かな隙間から、漏れ来る光のように、懐かしい
顔がまぶしく感じていました。
忘却からの長い時間を経て、昔の写真を見て思い出した
事は、時が止った60年も昔の光景でした。
時は流れても、記憶から蘇った光景は何か輝いて居る
感じでした。
昔の記憶から取り出した一枚の写真でしたが、私がパ
ラグワイからアルゼンチンに出て来て、将来を模索し
て人生の道を探していた短い間の事でした。
知人の紹介で働いていた所の園芸屋が、ブラジルに最
初に笠戸丸という移民船でブラジルに移民して、それ
から数年も経ずに、当時の第一次大戦の影響で好景気
のアルゼンチンにブラジルから転住して来た家族達で
したが、その当時、母親だけは生きていて、ご主人と
長女の婿はすでに亡くなっていましたが、男の子供達
5名も居て、それに次女の婿も働いていましたので、
かなりの大家族で店を支えていました。

その母親の苦労した話を聞かせて貰いましたが、ある
日、私が潅水をプラントにしながら、水加減を見てい
たら、母親が自分で育てて居るトマトの苗に水を与え
に来て、『見てご覧なさい、ゴマ粒ぐらいのトマトの
種が、私の背丈以上も伸びて、枝が折れるぐらいにト
マトが成るのは、苗を地面に植えて、肥料をやり、水
を与え、手入れをするからこのトマトを手にして食べ
られるのだから・・』と言って『貴方もこのアルゼン
チンに根を下ろしたら、このトマトのように自分を育
てる様に頑張りなさい・・』と励ましてくれました。

側の小屋を指差して、『この小屋は家族で建てたもの
だ・・』と教えてくれ、アメリカから輸入されるフォ
ード車の梱包枠木だったと話して、この小屋に家族が
寝起きして、今の基礎を築いたと話していました。
昼はそこにある昔からの粗末なテーブルでランチを食
べていましたが、食後に母親が木の下の、涼しい木陰
で子供達と家族がマテ茶のボンベを飲みまわして、寛
いでいる姿をジッと見詰める姿を思い出します。


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