2021年1月29日金曜日

私の還暦過去帳(757)

 移住の昔話,(67)

エンカナシオンの町にある、ペンション滝本は便利な宿

でした。

移住地の情報が生で入って来るので、それと、ここに泊

まってアルゼンチンに入国する用意や、電話連絡も出来

ていました。移住地に入植している人は電話など持って

いる人は皆無でしたので、伝言も残して置けて、連絡な

ども移住地に託せるので、人が人を呼び、移住者には

便利な宿になっていました。

そこで聞いた事ですが、斎藤氏の農場は買い手があり、

売れた様だと聞きましたが、後で聞いた事は、その金が

アルゼンチンに引っ越し費用となり、アルゼンチンでの

当座の生活費になった様です。

折本氏の自宅を訪ねる前に、アルゼンチンから帰って来

た人が、移住地に行く乗り合いの小型バスを降りて、

宅まで歩いていたら、後ろを着けられていたオートバイ

に乗ったお男に拳銃を突き付けられ、有り金を奪われた

と言う情報がありました。

小型バスに乗車する停留所から尾行されて、降りた所で

原生林の道を歩いていた時に襲われた様だと言う事で

私も用心していました。

折本氏はロシア人の入植地にある土地を購入して、農場

を開いていました。

フラム移住地に行く街道から降りて2kmばかり入った

所にあると言う事で、地図を書いて持っていたので安心

でした。小型バスはその当時、殆どがVWのワゴーン車

で停留所から他の乗客と相乗りで出発しましたが、用心

にオートバイの若い男が近くに居るか見ていました。

送り狼は日本人が目当ての様で、小型バスを付けて来て

襲う様なので、バックサックの隠しに入れた拳銃を腰に

差して隠していました。

道中は土道をかなりのスピードで飛ばして行きましたが、

途中、バスの後ろを見ると、オートバイが離れて付いて

来て居ました。20分ばかり走ってからコロニア・

ルーソーと運転手に話していたので、停止してくれ

下車して歩き始めました。

街道から200mばかり歩いた所で、微かにオート

バイのエンジン音が聞こえて来ました。

バスの中から見た同じオートバイで、送り狼だと感

て身構えて、バックサックをずらして、腰の拳銃を

直ぐに抜ける様にしていました。

オートバイのエンジン音が高くなり、かなりのスピー

ドで走って来るのが見えて、私は道脇の40cmぐら

いの木の後ろに隠れ用心していましたが、相手も私が

急に隠れたので、そのまま直進して行き、20mほど

離れた所で停止して私を見ていたので、腰から拳銃を

抜いて相手に見える様にして構えると、相手は直ぐに

エンジンを吹かして消えて行きました。

やれやれで、拳銃を1発も撃つことなく、送り狼を追い

払い歩いて行くと、子供達がいるので、折本宅は知って

居るかと聞くと、その中の一人が日本語で「爺ちゃんが

居るよ!」と言って手招きして走って行きました。

折本宅は直ぐそばでしたが、日本人の農場らしく、奇麗

に手入れされた畑と、家が有りました。

折本氏のメモを示すと、連絡も有った様で歓迎してくれ

まず農場を案内してくれましたが、ツングーの木は成木

になり見事でした。

私は心にぐっと来るものがあり、これまで努力をして、育

て、時間と営農資金をつぎ込み、何も報いが無い事はショ

ックでした。

移住事業団の営農指導も全て裏目に出て、ツングーの永年

作1本にして植え付けた人達は悲劇でした。

この事は日本では二ユースにもならなく、営農資金に貸し

付けが有ったぐらいでした。

折本氏の奥さんも両親がブラジルに転住する時に、折本氏

と結婚してパラグワイに残ったという事でした。

折本氏の隣は戦後ロシアからドイツに逃げて、親戚を頼り

パらグワイに移住して来たロシア人家族でした。

その当時、スターリン独裁政治からの難民でした。

私が珍しい日本から来た移民だという事で、お茶に呼ばれ

ましたが、自家製の黒パンを切って、バターを塗って出さ

れた一切れを食べ、味が違うので、聞くと、何とー!

『自家製の豚脂肪のラードでした。』

豚の脂身を釜で炒る様にして、製造したラードで、脂を採

ったカスは、カリカリにしてそれも食していましたが、彼等

が今まで生きて来た生活は、日本人以上の貧しい生活では

なかったかと感じていました。

彼等は苦労してレンガを焼き、丸太を二人で挽く鋸で、製材

して家を建て、牛を飼い、ミルクを絞り、バターやチーズを

作り、豚を飼育してハムやソーセージを作り、馬車を手作り

して農耕や輸送に使い、開拓精神を見せているロシア人が、

『ここパラグワイは自分で努力して働けば、自分と家族の物

になり、豊かな生活を積み上げる事が出来る、共産社会では

農民は農奴だ』と言ったロシア人に深く考えて居ました。

次回に続く、









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