2020年12月26日土曜日

私の還暦過去帳(727)

 移住の昔話、(37)

その夜のアフリカ丸の夕食が少し豪華でした。

今回、航海の最後になる夕食で、皆でビールで乾杯していました。

明日は皆がそれぞれの目的に目指して散って行く事が分かっ

ていたので、その感慨も深い物でした。

ボリビアのラパスに行く者、疑似トラコーマの為にサント

スを迂回してブラジル内陸のマットグロッソ州から入国す

る者、私の様にパラグワイに単身移住する者、親戚の呼び

寄せでアルゼンチンに行く者、日系企業にブエノスで就職

する者、花卉実習生で入国する者、アルゼンチンからの祖

国訪問者などが残っていました。

全部合わせても食卓に並ぶのは1テーブルだけで、寂しい

物でした。

その夜は飲んだビールに少し酔い、昨夜余り眠れなかった

ので、早めに荷物の整理も終わり安心して寝ていました。

翌朝、早朝に目が覚めて甲板に出ると沖合にモンテビデオ

の町影が微かに見えて、海の色が変色して、ラプラタ河

の河口に到着した事が分かりました。

船員さんがアルゼンチン領海に入れば、日本に電報を

送れなくなるので、早めにブエノス到着の電報を出す

希望者は電信室に申し込む様に教えてくれたので、家に

「無事ブエノス到着す、これからパラグワイに向かう」と

打電しておきました。

日本船からの電報は国内料金扱いで、間違いなく実家

に届いていました。

私の船内荷物は船で作った木箱とトランクで身軽で、長

い航海で寝たベッドを整理して、ラプラタ上陸の全ての

準備が出来ていました。

船は水先案内人が乗船すると、濁ったラプラタ河を遡上

して、昼頃にはラプラタ港に到着して接岸しましたが、船

は早めにランチを出してくれ、税関の検査も船内で終わり、

荷物も移住者だと言う事で簡単でした。

船倉荷物も船の岸壁にトラックが来て直接積み込まれて、

殆ど検査なしでした。

短時間に全てが済んで、船員さん達に見送られて、岸壁に

待っていた小型バスに皆が乗り込むとすぐに出発して、

ブエノスの日本人会宿泊所に向かいました。

ラプラタ港の海軍施設の横を通過して広い道を1時間ほど走

りブエノス市内に入り、レンガ造りの建物が並ぶ市街地を

通過して、日本人会館の前に到着して、そこで明日の出迎

えの約束をして隈部氏ご夫妻や、ミゲール氏達は迎えの車

で自宅に戻り、実習生達も、出迎えの受け入れ先の家族に

迎えられて去って行き、ブラジル行きの数名は飛行機の関係

でタクシーでホテルに行き、残った者はボリビア行きとパ

ラグワイ行きの私達2名でした。

荷物もトラックから降ろされて各自に配分され、残った荷

物はボリビア行きの彼の茶箱3個、私のドラム缶と茶箱1個

でした。

荷物類は全部日本人会宿泊施設の倉庫に入れられ、汽車が

出発まで保管されるので、それが終わると出迎えていた移住

事業団の係も帰って行き、急に寂しくなりましたが、宿泊の

割り当てられた部屋に行くと、日本人の先客がいて自己紹介

をしてくれ、会館の内部と、近所の店やレストランなどを紹介

してくれました。

会館の日本食のレストランは値段が高いので、皆は近所のイ

タリア人の大衆レストランで食べていました。

その時の宿泊者は当時のメモ帳を見ると、日本人の拓大南米

学生視察者が3名、パラグワイからのイグワス移住地から家族

で来た1家族、同じくパラグワイからアルゼンチン転住で

下見に視察に来ていた2名でした。

船からトランクと私が作った木箱だけで部屋にそれをかたずけて、

宿泊施設のホールで皆と自己紹介して話をしていましたが、直ぐ

に私が作った木箱はパラグワイから来ていた家族に事情を聞いて

差し上げていました。

その夜は皆と、近くのイタリアの大衆レストランに夕食を食べ

に出ていましたが、並んでテーブルに座り、皆で同じテーブルを

囲み、注文の仕方、食べ方などを教えて頂きました。

スープはお代わり自由で、ワインは1本ボトルが出され、飲んだ

だけ請求されると言う大らかさ、焼き肉も、魚の唐揚げも美味し

く、量が多くてパンも焼き立ての熱い物が出て、そのパンも2個

までは無料でした。

そのレストランは私がアルゼンチンに滞在していた間は、バスに

乗っても長く食べに来ていたレストランになりました。

その時、パラグワイからアルゼンチン転住を考えて視察に来てい

た2名に食事のテーブルで話を聞き、宿泊所に帰ってからも夜が更

けても話し込んでいました。

それはパラグワイの、その現実の実情を身を持って体験して来た方

の真実の話を聞くことが出来たからです。

その2名の方とは、それ以降、亡くなられるまでお付き合いがあり、

その家族とは今でも56年の歳月を経てもお付き合いがあります。

次回に続く、












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