2013年12月14日土曜日

私の還暦過去帳(456)


遠い昔の思い出、

アメリカに来て38年も経つと全米各地を歩いたと思います。
そろそろ日本に住んだ年月より海外で生活した時間が長くなりましたが、
世界各地を見て歩いて比較するとアメリカの穀倉地帯の豊かさや、ブラ
ジルの広大な肥沃の土地にも驚きでした。

カリフォルニア州のサリーナス地帯は、戦前の昔の時代より豊かな蔬
菜栽培地帯です。
『怒りの葡萄』の物語にも出てくる東部からはるばると西部に新しい生活
と豊かさを求めて来た農民達の物語ですが、日本人の移民達も豊かさ
を求めて、アメリカーン・ドリームの夢をサリーナス地帯で追ったと感じま
す。
サリーナスの日本人墓地を訪れると先駆者達の夢を感じる墓標が並ん
でいます。
私が歩いた人生も、第2次大戦の前後に挟まれて、戦後の成長期に貧
しさ、物の無い時代の食料難の苦労などを味わい、
今でも『もったいない・・』という精神と、与えられる食物に感謝の心を持
つ事が出来ます。
私の子供時代は学校給食で、粉ミルク、パン、ジャム、チーズ、乾燥フ
ルーツ、ハムなどのアメリカ政府の余剰農産物の恩恵で学校で出され
るランチで食べた様な感じです。

そして70も過ぎたこの歳になると、60年以上前の秋の情景を思い出す
事があります。
その頃はまだ終戦後から余り時間的にも経ては居なかったので、稲刈
りが終わった田んぼの中に落穂拾いの人を見ました。

今では飽食で空腹などと本当に困って空きっ腹を抱えていたと言う経験
は少ないと思います。贅沢した食事を食べる事が出来て、お金させ出せ
ば、何でも口に出来る世の中と思います。

昔の田んぼは農家の集団農薬散布も無く、沢山草むらにはバッタが住
んでいました。友人達と網のネットを持ってバッタ捕りに行くと、かなりの
数のバッタが捕れました。
友人宅に集まり、火鉢に炭火を起こして竹串に刺し、まるで焼き鳥の様
にして砂糖醤油を塗って食べていました。

シャキ、シャキと歯ごたえのある香ばしい味で、上手く行った日は、串を
5本以上も食べる事ができました。子供の頃でしたが印象に深く刻まれ
て覚えています。

その頃は、おやつも蒸かし芋や、冬場はかき餅や干し柿などが嬉しい
おやつでした。たまにおやつに森永のミルクキャラメルなどを貰った時
は、大事に食べていました。
当時は遠足などに行く時しか買って貰えないお菓子でした。

当時の田舎では農家でない人達が稲刈りが終わった田んぼの中で、
落穂拾いをする年配の人の姿が見られましたが、今の世の中では無
縁な姿です。
友人達と近所のおばさん達が背中にリックを背負って、塵取りと小さな
箒を持って落穂拾いに行くのに付いて行ったことがあります。おばさん
達の弁当は、白米のお握りか、弁当箱に銀シャリの入った弁当でした。

ほんの僅かな米粒ですが、夕方までには『今日は2升半拾った・・』と
かいうおばさん達の声を覚えています。当時は殆どが麦が混じってい
るご飯か、サツマイモがあるときは、それが混じっているご飯でしたの
で、銀シャリの弁当は贅沢なお昼の弁当でした。

友人宅の家でおばさん達数名が、大きな竹で編んだ浅い丸い籠で稲
穂の籾を選別していました。
上手に籾を風に吹かせてゴミや小石を取り除いていましたが、子供
心に上手だなー!と感心して見ていた事があります。

それが終わるとお茶やコップ酒が出て、沢庵や白菜の漬物をつまみ
ながら賑やかに話をしていました。湯のみ茶碗に注がれる酒は、当時
はどぶろくと言う自家製の酒で、コタツの中で上手に酵母を発酵させ
て、真ん中にひび割れの青竹に筒を差し込んで、そこに染み出す澄ん
だ酒をついで呑んでいたようでした。

友人が家人が誰もいない時に、内緒で味見をさせてくれたので良く覚
えています。
その時からしたら30年も経て、郷里を訪問した時に周りの田んぼは
全部なくなり、宅地化していました。私が育った郷里の家も売って引越
し、すでに父も亡くなり、そこにはすでに母親も親戚も誰も住んではい
ません。
時代の流れに消えて行き、新興住宅地域化した波に呑まれて行った
と思います。

私もこの歳になり、アメリカに骨を埋める覚悟も出来て、帰化してアメリ
カのパスポートで旅行するようになり、すでにアメリカの10年有効の
パスポートもページが真っ黒になるほど旅行して歩き、数年前に新し
い10年有効の旅券に切り替えもいたしました。

ここで育った娘もアメリカで結婚して、孫も生まれて大きくなり、共に
バケーションで孫と旅が出来る様になり、時代が過去に飛ぶように
消えて行ったと感じます。

その孫を見ていると、私の子供時代の貧しかった日本の時代など無
縁で、豊かなアメリカの溢れんばかりの消費社会で生きていると感じ
ます。

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