2013年8月23日金曜日

私の還暦過去帳(412)


ある老女の人生の終末、

私が所有するレントハウスに、かれこれ20年近く住んでいた独身の老女
が亡くなりました。
アル中で、ヘビー・スモーカーでした。
亡くなる前はアルコールは控えていたようですが、タバコは吸っていました。

そのレントハウスは私が昔、不動産が格安の時代に投資で購入していた
家でしたが、私の管理が良いのか、テナントが動きません、そろそろ30年
近くもなりますが、昔、私の近所では、びっくりする様な安値で購入する事
が出来た時代でした。

最初の頃に若い人が3名でシェアレントで借りてから、それが今まで連続
して続いているのですが、誰かが入れ替わりますと残っている人がリーダ
ーになり、引き継いで今まで住んでいるのです。

かなり昔、私がそこを管理で訪ねると、その婦人が一部屋を借りて住ん
でいました。 部屋をアルコール中毒の再生治療施設から紹介されて、友
人を介して来た様でした。

離婚して、職も失くし、生活保護を受けて、レントの費用は公的機関から
直接払い込みがあったようでした。

私が訪ねていくと裏庭の木陰でタバコを吸って、ワインのグラスをチビチ
ビと飲んでいる光景を目にしました。
穏やかで物腰の静かな女性でカリフォルニア訛りの英語で話していまし
た。 時々は寝椅子に寄りかかって死んだ様に眠っている姿を思い出し
ます。

それからしばらくして、夜間の介護のヘルパーの仕事を見つけたのか、
金持ちが入居する老人ホームに、夕方から仕事に出かける姿を何度も
見かけていました。
それが体調を崩して家に居る様になるまで、永く続いていたと思います。

3月頃から、仕事に出るのが少ないのか、管理で見回りに寄ると、裏庭
の木陰か、フロリダルームの風通しの良いソファーに座っていましたが、
私と顔を合わすと必ず挨拶してくれました。

昔のようにリサイクルのゴミ箱に安ワインのビンが沢山並んでいるような
光景はありませんでしたが、人生に疲れた様な感じの皺が顔に出ていま
した。
裏庭に集まってくる鳥達に餌を与えるのが、彼女の心休まる憩いの時間
だと私は感じていました。

私が彼女が亡くなる前に管理で訪ねて行き、静かに裏庭に廻ると物静
かにイスに座り、鳥の餌が入った缶を横に餌を撒いていました。

無心な姿を見て、身寄りも無く、人生の苦労を背中に滲ませて座ってい
る姿に私は何か侘びしい感じを受けましたが、それが彼女の人生の道筋
だとすれば、それも運命だと私には感じていました。

先日、管理で立ち寄るとそのレントハウスのリーダーが私に、彼女が亡く
なった事を報告して来ました。
現在部屋を整理していると話していましたが、裏庭の片隅に積まれたダン
ボールの僅かな箱が残された彼女の財産の全てでした。

教会と救世軍に寄付する様に頼んでいた様で、覚悟の旅立ちだったと思
います。
鳥達に餌を撒く人が居なくなったので、鳥達が周りの木の枝から庭を見
下ろして いる姿は、彼女を探していると感じました。

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