2013年8月21日水曜日

私の還暦過去帳(411)


 ある朝の思い出、

数年前でしたが・・・、
政府は6月11日、「10年版自殺対策白書」を閣議決定した。

国家レベルで自殺対策を推進し、人口10万人当たりの自殺者を
約20年で3割減らしたフィンランドの取り組みを特集し「遺族
調査と、民間団体や研究機関等との効果的な連携は非常に参考に
なる」としている。  

警察庁によると、日本の09年中の自殺者は3万2845人と、
12年連続で3万人を超えている。

私はこの記事を読んで胸が痛む思いでした。

40年以上も前に、私の脳裏に刻まれた思い出があるからです。
それは過去に私の思い出したくない事の最初に出て来る事なので
す。 南米から日本に帰国して再度海外に出る前で、がむしゃら
に稼いでいた時代でした。

見栄虚勢はありませんので、アフリカのモロッコに海外青年協力
隊で派遣されるのをキャンセルして、人生のチャンスを逃すとい
つ相愛の人とめぐり合うかと考えて、結婚して家族の為に将来を
賭けて働いていた時期でした。

その当時、知人の紹介でモヤシ屋の早朝配達の仕事を紹介されて
いました。早朝に朝の4時頃からモヤシを小型トラックに積み込
み、店の開店前には全部終るという簡単ですが、根気と忍耐を持
っていないと続かない仕事でした。

先ず暑かろうが寒かろうが、雨が降ろうが、台風襲来でも朝の4
時には起きて、モヤシ製造所で積み込み配達に出て行かなければ
なりませんでした。
それが終ってからまた別の仕事が出来るので、体力と根気と忍耐
さえあればそれが出来る仕事でした。8時の店の開店前には私の
仕事も終わりました。

南米から帰国した時、神戸の港に到着した時点で文無し状態でし
た。郷里の大牟田市に到着した時、財布にはお守りの5円玉一個
だけ残っている様な状態で、それからの出発でしたから、家族を
持って気合を入れ仕事をしていました。

その様な時でしたが、冬の寒い凍りつく様な早朝に、東横大井町
線の緑が丘駅近くのスーパーにモヤシを納品に行った時でした。
平行して大井町線を走っていた時、駅に進入して来た電車が突如、
大きな電車の警笛を連続して鳴らすと、急ブレーキを掛ける音が
響きました。

側の踏切では警報機が鳴り響き、駅と目の先の距離で、駅員が飛
び出して来るのが分かりました。踏切りの警報機は凍るような寒
さの中に低くカンカンと警報が響いていました。 私は一瞬、そ
の場の状況を見て納得いたしました。

それは電車に誰か飛び込み自殺をしたと直感で感じていました。
電車の最前列の運転席から6mばかりの下で、微かな人の吐く息
の様にもやが立ち上っているのが分かりました。
駆けつけた駅員が電車の下を覗いていました。

電車の運転席から首を出して居た運転手と駅員が何か手短に話す
と、電車は最徐行で駅に移動いたしました。私は向かい側の道路
で見ていたのですが、不自然に捻じ曲がった遺体が見え、駅員が
その上に何か被せるのが見えました。

踏切りを塞いでいた電車が移動したので警報は鳴り止み、凍り
付くシーンとした朝の雰囲気に戻りました。新聞配達のバイク
が止まって見ていましたが、直ぐにエンジンの音を響かせて立
ち去りました。

私も時間でのモヤシ納品ですから、軽く手を合わせると現場を立
ち去りました。でもそれから家に帰るまで、帰っても、寝ても
起きてもその光景は脳裏に焼き付いた様に離れませんでした。
今でも思い出すと鮮明にビデオの画像の様に思い出します。

そして、その人がなぜ自殺しなければならなかったかと・・、
考える事が有ります。

私の様に死にもの狂いで、家族の為に働き、幸せを積み重ねる
その喜びと、充実感に満足していましたので、死ねば終わり、
家族を残して死ぬ人間は卑怯と感じていました。
配達の仕事は6カ年間続けて、その間1日しか休みませんでし
た。欠勤もしなく、遅刻も無しでした。そして家族を連れて再
移住の資金を貯め、チヤンスを探していました。

モヤシの配達が終わり、その後に借りていた倉庫に行って、
トラックを乗り換えて、冬は暖房用の灯油の販売をしてかな
りの収益を出ていました。文無しからの出発です、新婚旅行か
ら帰って来た夜にアパートで、ワイフが永年使ったコタツを利
用したテーブルの上に出した有り金の残金が、1万数千円だっ

た事を考えると、預金も無く、所帯道具も無い、無い尽くしで
始めた新婚生活でしたが、なんとかワイフが独身時代からの家
財で生活していた時代です、家財を買い足すごとに喜びと、
少しの余裕があれば、家族と豚骨ラーメンが美味しいと言う
ぐらいで、喜んで食に行っていた時代でしたが、幸せの価値観
を忘れ、努力もしなくて、それに耐える心と感情も失くせば人
は悲劇と感じます。

金が無い時にでも1本10円の水仙の花をコタツのテーブルに
一輪挿しで飾り、お疲れ様と1本のビールを食卓に置いてあっ
た小さな幸せを今でも思い出します。

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