2013年4月30日火曜日

第3話、伝説の黄金物語、(75)

金塊で動く世界、

日本海軍の真珠湾攻撃で、火蓋が切られた日本と連合国との戦いは、ブ
ラジルも日本は敵に廻してしまった。

日本人移民社会では直ぐに指導者的な日本人を政府は拘束して収容し
てしまった。幸いに富蔵まで手が伸びる事は無かったが、これもダイアモ
ンド商会やスミス商会の社長や幹部が、ブラジルのコネ社会の裏で、上
手く動いていたからであった。

日本人達は集会も禁止され、移住地から出て移動も侭にならなかったが、
全てこれも日本人達を監視する為であった。

富蔵はブラジルで生まれて、上原氏の亡くなった子供の戸籍を使って、
パスポートから全て、身分証明まで完全なブラジル政府の物を所持してい
るので、その点は何も心配なかった。

上原家には日本が戦争に突入したので、情勢が落ち着くまでしばらくは
情勢を見るように教えていた。
富蔵達がサムのオフイスで仕事をしていたら電信が来た、その文面には
ドイツ利益代表の中立国スウエーデン人関係者から、人質のユダヤ人
逃亡者リストの人員は確保したと連絡が来たが、3組が両親、子供そして、
妹を一人残しては英国に行けないと拒否したと連絡が来ていた。

子供を連れて英国に行けないのならと拒否したのは、サムが希望した女
性も生きていてその中に含まれ、娘が一人居てその子供と英国に行けな
いのであれば拒否するとあった。

直ぐに返信が送られ、『万全を図ってその3組の希望もかなえる様にしな
ければ、10名の交換人員が一人でも抜け無い様に、関係者全員で合意
したのであるから、速やかにドイツ側はその件に対処する様に希望する』
と電文が送り付けられた。

ドイツ側は今では絶対に戦略希少物資の天然生ゴム10トンの契約を破
棄して捨てる馬鹿な事は出来なかった。
その電文の返信は簡単で『申し出を了解した、希望人員の全員とする』と
来た。
事の動きは早く、中立国スウエーデンに送り込まれた逃亡ユダヤ人達が
引き渡され、金の延べ棒と交換に10トンの生ゴムもドイツ側に引き渡さ
れた。
その翌朝早く、スウエーデンの貨物船が交換人員を乗せて、英国に向け
て出港したと連絡が来ていた。英国大使館から交渉の報告が来て、交換
の取引が無事に終了したので感謝するという伝言がもたらされた。

富蔵達はサムの事務所で、アマゾン河支流の金採掘現場が、異常な金
価格の上昇で高騰した金に目がくらんだ盗賊達に襲撃されたので、その
対策に追われていた。

200kgも重量がある金庫に補強で鋼板を溶接していたので、全重量は
400kgは軽く越していた様な金庫を7名ばかりの強盗が夜明け方の一番
手薄な時間に牛で曳く牛車を持ち込んで警備員二名をを銃で脅して縛り
上げて、持ち去ったと電信が来ていた。かなりの重量で、金庫の中の砂
金量も時価総額したら巨額な金額であった。

強盗たちはガスバーナーも無く、ハンマーとタガネなどで金庫を叩き壊す
という事は長時間の作業と考えていた。
鋼板で補強された金庫であったので、すでに追っ手も銃器を手に捜索し
ている事であり、必死に逃げながら作業していると感じられた。

マットグロッソに仕事で飛んでいたモレーノに至急の連絡が飛び、飛行機
でジャングル上空の捜索を頼んでいた。
その日の午後にはモレーノが操縦する飛行機に、二名の地上看視する
視力の良い若者が搭乗して、強盗達を探して現場上空を飛んでいた。

簡単に強盗達が金庫を載せて逃げる牛車を発見した。爆音で牛が暴れ
て隠れていた茂みから飛び出したからであった。用意してきたトンプソン・
マシンガンとライフルでまず牛を狙撃して倒すと、後は持って来た弾を撃
ち尽くすまで周りのジャングルを掃射していた。

それが終ると捜索隊に伝言筒が投下され、その現場の地図と、すでに牛
は射殺されたと書かれた紙が入れられていた。捜索隊は投下された地図
を目当てに、政府の連邦捜査官が馬4頭で現場に急行した。

国有地内の金鉱発掘現場で警備していた捜査官により、犯人達は銃を
持って抵抗した男一人が射殺され、他の6人は簡単に降伏した。
捜査官が操車する牛車を6名の強盗達が引いて、発掘現場の事務所ま
で金庫を持って来た。
6名の男達は事務所の前の広場まで来ると、全員が牛車の周りで、倒れ
るように伸びてしまった。金庫は傷だらけの姿であったが、ドアは開けら
れてはいなかった。
鋼板を溶接した金庫はハンマーなどでは、全然歯が立たなかったようだ。

その夜、広場では強盗達が見せしめに木に縛られて晒されていたが、大
勢の見物客が来て、馬鹿な男達だと罵倒されていた。

翌朝、長い鉄の鎖に一列に繋がれた強盗達が両側を馬に乗った捜査官
に囲まれてトボトボと町に連れて行かれた。

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