2013年3月6日水曜日

第3話、伝説の黄金物語、(59)


 リオの協力者組織の壊滅、

電話が終ると急に皆が額を集めてリオでの対応を話し始めた。

サントス港の拠点は完全に破壊して、組織の人員も全滅と感じていたが、
最後のリオの拠点も潰す事が皆の意見で決まった。

欧州で、ドイツ勢力拡大の凄まじさは、南米ブラジルやその周辺諸国ま
で及んで来ていた。ビジネスを維持する為には、完全に新興勢力の芽を
潰す事が、これからの周りの情勢を見て必要と感じた。

ビジネスでも、食うか食われるか・・、の世界で、これまで富蔵達もスミ
ス商会、ダイアモンド商会などに加担して、ビジネスを維持拡大して来た
ので、その中で仕事をしている富蔵達の組織にはドイツ勢力は完全に敵
であった。

モレーノが『今から飛行場に戻ってリオに飛ぶ・・』と皆の前で話した。
ダイアモンド商会の社長と幹部が、スミス商会の同じく社長と幹部達と短
く話すと、『全ての責任を持ってバッアップするので、直ぐに行動を起こ
して貰いたい・・、』と頭を下げて来た。

サムが直ぐに受話器を取ると、飛行場の従業員に飛行機の点検給油を
命じていた。
直ぐにガレージに皆が戻ると、二台の車を連ねて飛行場に急いだ。

飛行場に到着すると、プロペラが始動して車輪の車止めを外せば、いつ
でも飛び出せる用意が出来ていた。4人乗りの飛行機でモレーノとペドロ
と富蔵達3名がリオに飛ぶ事を決め、情報提供者が一人同乗して総勢
4名で飛び立った。

サムはサンパウロの事務所で、運送業務の采配とビジネスの指揮をする
為に残る事にした。
2丁のシュマイザー、小口径の消音器付き狙撃ライフルなどの武器が飛
行機に積み込まれると、同時に離陸した。

日暮れ前、リオに有視界飛行で、予定どうりに到着した。迎えの車には
情報提供者の配下が4名で迎えに来ていた。一台の車に、モレーノとペ
ドロ、富蔵が乗り、出迎えの男がハンドルを握った。後ろからもう一台の
車が情報提供者が乗り込み後に続き、目的地に向かって走り出した。

リオのフラミンゴ海岸を走り、少し海岸端の倉庫群が並ぶ建物に到着した。
労務者相手のカフェー屋に入り、外の目立たないテーブルに席を取ると、
見張っていた男が報告に来た。
倉庫の中は戦略物資の見本や現物などと、すでに買い込まれた生ゴム
などの梱包が積まれていると報告して来た。中の荷物には外部に知られ
たくない物資もあると狙んだ。

見張りを残して、皆はダイアモンド商会社長のリオ別荘に、裏口から車で
入った。木々が生い茂り、外からは中の別荘を見る事は出来ない様な邸
宅であった。
サンパウロと電話で話すと、リオの拠点を襲い、中の戦略物質に関係な
く倉庫を焼き払うという事を決めた。

現在では2名しか居ない協力者達を圧倒して、制圧出来る機会であった。
溜め込まれた資材とサンプルは彼等にしたら欧州の不穏な情勢からした
ら、戦略物資として貴重な物と感じていた。中にどの様な種類の品物が
有るかは分からなかった。

倉庫は厳重な塀で囲まれ、倉庫の中を覗う事は出来なかった。
番犬も3匹居て、これでは倉庫に手も出せなかった。外の中庭にはトラッ
クが二台、乗用車も一台駐車していた。
見張りの報告では協力者2名は倉庫の中に入ったまま出てこないと報告
が来ていた。

皆が別荘で、テーブルを前にグラスを手に食前酒を飲んでいた。
情報提供者が提案したのは・・・、

1、70mばかり離れた隣の倉庫の屋根から番犬を狙撃して殺し、倉庫
        に時限発火装置を協力者が中に2名居ても取り付ける。

2、番犬を先に殺して協力者2名を外におびき出し、狙撃して倒し、倉
       庫に同じく時限発火装置を取り付ける。
この2案を提案したが、しかし場合により、臨機応変に行動する事を確認
していた。

簡単な夕食が出され、それを皆で食べながら話していた。
突然電話があり、『協力者が一人、車で倉庫から出かけた・・』と緊急
連絡が来た。

皆は食事を中断すると素早く用意を始めた。見張りの一人が車で追跡して
少し離れたピザ屋に入ったと連絡が続いて来た。おそらく腹が空いて夕食
にピザでも買いに出たと思った。チャンスの時間は30分程度もないと考
えた。

皆は無言で車に乗り込み、そのピザ屋を目指した。車内で情報提供者が
ワルサー拳銃に消音器を取り付けていた。ピザ屋の前に到着したが、ま
だ協力者の一人が店内に居るのが分かった。
モレーノが直ぐにピザ屋店の前通りに駐車して、横の暗がりに拳銃を手
に隠れた。

その後ろに、ぴったりと駐車した車に情報提供者が消音器装着のワルサー
PPKを新聞の下に隠して、新聞を読むふりをしているのが薄暗い外灯の
光りに見えていた。

ペドロが道路先で、富蔵が後手で見張っていた。
情報提供者の配下の車は道路向かいにさりげなく駐車していた。全て用
意が出来たが、緊張した時間が流れ、獲物に襲い掛かる猟師の様に闇
に紛れていた。

ついにチャンスが来た。協力者は手にピザの入った箱を持ち、車に歩い
て来た。
まるで闇に溶けていた様なモレーノが、協力者の後頭部に拳銃の銃口を
ピタリと押付けた。同時に情報提供者が顔面に消音器を鼻先に突きつけ
た。モレーノがピザの箱を取り上げ、肩に下げていた拳銃を取り上げた。

あっと言う間に誰にも悟られず、目撃されずに協力者を車内に押し込めた。

用意されていた手錠を後ろ手にはめられ、観念した様に協力者は後部
座席で青ざめていた。情報提供者の配下が協力者の車を運転するとアッ
と言う間に現場を離れて行った。
皆が別荘の裏口から車で滑り込むと協力者をガレージに連れ込むと、服
を剥ぎ取り、体格が同じペドロが着た。
ピザの箱が座席の助手席に置かれ、ペドロが協力者の車を運転すると、
皆が後を二台で付いて走った。倉庫の近くに来ると見張りの一人が近寄
り、番犬が外に2匹いて、他の犬は倉庫の中に居ると教えてくれた。

後を付けて来た二台の車は離れた街路樹下の、目立たない場所に駐車
した。モレーノが小口径狙撃銃を持つと、見張りに案内されて近所の倉
庫の屋根に消えて行った。
微かに合図するのが分かり、ペドロがハンドルを握り、後ろの座席に隠
れた情報提供者がシュマイザー構えて横になっていた。富蔵が入り口の
ゲートの鍵を開けると、その微かな音で番犬が何処からか走って来たと
同時に、1匹の犬が即死するのが分かった。
富蔵はワルサーの消音拳銃を他の犬がゲートの前で足がすくんだ瞬間、
射殺していた。犬は一声も吼える事無く倒れ、シーンとしていた。

ゲートが開け放され、車が倉庫の入り口に横付けされた。
それと同時に倉庫の中で犬が吼える声がして、ドアが開いて人影が見え
た瞬間、その人影の顔面に鮮血が散るのが見えた。
犬が側で倒れた男の顔を覗き込んだ瞬間、車内から音を殺した鈍い銃声
がすると、犬も崩れるように男に倒れ込んでいった。

車から走り出たペドロと情報提供者が死体と犬の死骸をの倉庫に引きず
り込むと、情報提供者が小型の時限発火ケースを手にすると倉庫に入る
と、直ぐに出て来てドアをロックするのが分かった。
ゲートで見張りをしていた富蔵を車に乗せると、ゲートも閉められ鍵が掛
けられた。

外の道路に駐車していた車に、モレーノと見張りが薄暗い歩道から出て
来ると乗り込み、お互いにうなずくと車は走り出した。

三台の車は適当な間隔をおいて走っていた。行き交う車も無く、静まり
返った倉庫街は、外灯だけがぼんやりと見えていた。

先頭のモレーノが運転する車が道路の坂を登り切った所で停車すると、
下の倉庫群を見ていた。他の二台も停車して見ていた。

ボーン!と鈍い音が響くと倉庫から紅蓮の炎が噴出した。
モレーノが車から手を差し上げて親指を突き出した。

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