2013年2月16日土曜日

第3話、伝説の黄金物語、(54)


人質奪還の戦い、

銃声が瞬時に一発に聞こえるように鈍く響いた。

開け放されたドアから、腰に拳銃を差した金髪の大男が顔面を撃ち抜かれ
て無言でスローモーションの様に倒れこんだ様子が見えた。
他の二人の男達はモレーノが撃った弾で、椅子に寄りかかるように即死し
ていた。
ペドロと富蔵が拳銃を構え、モレーノが用心深く両手に2丁拳銃を構えて
部屋に入ると、消音拳銃で用心に三人の男達に止めの銃弾を撃ち込んで
いた。
直ぐにアミーの縛られた肢体を解放すと、毛布に包み込み富蔵とペドロで
外に担ぎ出した。外灯の光りを透かしてサムに合図すると、車が急発進し
て倉庫の敷地に近寄って来た。
後部座席にアミーを寝かすと、ダイヤモンド商会の情報提供者が紹介して
くれた場所にサムが車を飛ばして消えて行った。
それと入れ違いに情報提供者が運転する富蔵達の乗用車が近寄った。

無言で黒人の助手に合図すると、車から石油缶を両手に抱えて倉庫に入っ
て来た。中に入っても驚く様子もなく、黒人の助手を使い、モレーノや富蔵を
達を指図して事務所内の机や、キャビネットを捜索をしていた。

幾つかの書類の束をカバンに詰め込み、外を見張っているアマンダの兄弟
に一人に倉庫の側の水路の岸壁に繋がれているモーターボートの中を捜
索する様に頼んでいた。

テキパキと手分けして倉庫と事務所内を探していた。
2百キロは有りそうな小型金庫は倉庫内に駐車していた小型トラックの荷
台に全員の力で投げ込まれた。長方形の頑丈な木箱もバールでこじ開け
られ、中からモーゼルのライフルとマシンピストルと言われる自動小銃も出
て来た。それもトラックに投げ込まれた。

その時、モーターボートを捜索していたアマンダの兄弟の一人が走り込ん
で来た。遺体がキャンバスに包まれて2体乗せられていると話した。

富蔵とモレーノが見に行ったが、後を付いて来たダイアモンド商会の情報
提供者がチラリと死顔を見ると、キャンバスを被せて『こんな所で死んでい
たのか・・』と言うと胸の前で十字を切り膝を付いて祈っていた。

黒人の助手に何か命令すると、黒人の男はボートのエンジンを始動させ
ると岸壁のロープを外し、水路を静かに出て行った。
情報提供者が倉庫のシャッターを開けてトラックを出すと、この倉庫を焼
き払うと言って持ち込まれた燃料缶を用意すると、富蔵達に外に出る様
に指示した。

倉庫の外の道路では薄暗い外灯の下でエンジンが掛かったままの小型
トラックと乗用車がひっそりと停車していた。
深夜誰も居ない倉庫群の侘びしい地域で、モレーノとぺドロに射殺された
死体も犬も倉庫内に運び込まれ、事務所内に適当に横たえられた。

倉庫の片隅に積まれた燃料のドラム缶が目標にされ、燃料缶からドラム
缶に石油を撒かれて、小型の包みがセットされた。

もう一度周りを見回すとセットされた包みを情報提供者が軽く叩くと、急ぎ
足でトラックに乗車して、皆を急がせた。
富蔵達は倉庫の入り口とゲートを閉めて鍵を掛けると5人が車に飛び乗
った。
トラックの後を付いて走り、後ろを振り向くと鈍いブオーンと言う音が聞こ
えると、紅蓮の火柱が立ち上り、瞬時に火炎が倉庫を包んだ。それを見
届けるとスピードを上げて現場を走り去った。

情報提供者が紹介した隠れ家は同じく倉庫で、それは街中にひっそりと
小さな入り口だけがあり、その奥にこじんまりとした平屋の倉庫があった。

中に車を入れるとすでにサムの車があり、アミーが気絶から覚めて服も
着て、肩から毛布を被り椅子に座っていた。手には暖かいミルクコーヒー
が握られ、安堵の表情をしていた。

外の道路を消防車が何台も走り抜けて行く音がしていた。

アミーがミルクコーヒーを飲み干すと、モレーノが抱きかかえて抱擁して、
『もう心配要らない・・』と言うと、車のドアを開けて乗車させるとペドロを
側に座らせ、サムがハンドルを握ると、先にサンパウロ郊外の飛行場に
戻らせた。

小型トラックから下ろされた金庫の裏が、簡単にガスバーナーで焼き切
られて富蔵達の前に中が開かれた。
英国ポンドとドル紙幣の束が出て来た。それと皮袋に入ったダイアモンド
の原石が少量と拳銃が8丁ほど出て来た。
武器が入った箱も開けられ、床に並べられたが、ライフルが10丁と自動
小銃が6丁出て来た。

情報提供者は先ほどのボートキャビンの遺体は『我々の仲間だった!』
と話してくれた。
紙幣の束を数えると、均等に2分して『この半分を遺体になった仲間の身
内に与える・・』と話した。
誰も異存はなかった。他の銃器類は二等分に分けてしまった。

分けられたライフル5丁、自動小銃3丁、拳銃4丁の戦利品が車のトラン
クに積み込まれると安心したのか、皆がホットしていた。

一仕事終えるとビールが良いか、スコッチウイスキーかと情報提供者が
聞いて来た。
富蔵は喉が乾いていたのでビールを頼んだ、他も皆がビールにした。

軽く皆とグラスを合わせると飲み干した。モレーノが『だいぶお土産まで
貰って来た』と声を出して皆を見た。
闇に情報を張り巡らしてうごめく者達と、それに対抗する太陽の下で行動
する男達の戦いであった。

当時の司法は力が弱く、末端の警察機構などは、誘拐などの組織だった
事件を完全に解決出来る力はなく、出来ても長期の時間と、忍耐と犠牲
の上に解決されると言う矛盾があった。

まして国家をバックに情報機関としての活動する構成員は、訓練と経験
ある行動で、資金と頭脳をフルに活用しているので、最終的には殺すか
殺されるかの戦いであった。
彼等、仲間2名の遺体は、黒人の助手が船で遠く離れた岸壁から密か
に持ち帰ったと話してくれた。
もしも、あのまま知られることなく居たら、密かに大西洋の海の中に重
石を付けて遺体は沈められて居た様だと話していた。

事務所のラジオを入れると、早朝のラジオニユースが速報を流していた。

『今朝の倉庫火災は貯蔵されていた燃料とドイツから輸入されていた染
 料の可燃物に引火して、消火困難で化学消防車がない現状では、燃
 えるにまかして、延焼だけしないように隣接の倉庫に放水している』と
報じていた。

カバンから書類を出して情報提供者が灯りの下で読んでいたが、大きく
唸ると、『これは重要な情報だ』と声を出した。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム