2013年2月5日火曜日

第3話、伝説の黄金物語、(50)


 リカと雪子の顔合わせ・・、

しばらくは平穏な日を過ごしていたが、モレーノが招待してくれ、リオ・ベール
デに家族で飛ぶ事になった。

リオ・ベールデの飛行場ではリカが待ち構えて雪子を歓迎してくれた。
それまでに何度か手紙がお互いの間でやり取りされ、入念な下準備がされ
ていたと感じた。
元靴磨きで、現在は事務所で働いているペドロがハンドルを握って出迎え
ていた。
リオ・ベールデ郊外の砂金採掘現場近くの町まで、道路も整備され舗装道
路が走り町も発展して、農村地帯と言う環境も少し変化していた。

金持ちの未亡人宅に、今ではその主人の様にして住んでいる家に、リカが
案内してくれた。雪子とリカはすっかり打ち解けて、お互いに子供を膝に乗
せて子育ての苦労を話していた。
富蔵はその有様を見て安心すると、事務所に夕食には戻ると出かけて行
った。

リカが会社の営業係りの一員として動くようになれば、最高の営業開拓が
出来ると皆が考えていた。実際にそのとうりに動き出していた。

彼女が正装して、お付にカバンを持たせて交渉の場に出ると、先ずその
笑顔と、気品と美貌に圧倒され、話もそつなくこなす様子に、交渉の円滑
さが光っていた。
マットグロッソの州長官にも、すでに挨拶にリカが出かけていた。
飾りカゴにワインや高級ウイスキーを入れ、花で飾りオフイスを訪ねて丁
重に今度、仕事を始める事に感謝の言葉を述べると、長官も上機嫌で受
けてくれ、色々と便宜も図ってくれた。
何処に行く時も、指にはダイアモンドの結婚指輪が光り、ペンダントには
子供の写真を入れているので、マダムと言う事で皆が残念そうにしていた。

その夜はリカの招待で未亡人宅の広間で晩餐が開かれた。
ペドロの母親が来て料理の腕を振るい、何種類かのご馳走がテーブルに
並べられ、ワインの栓を開けて、雪子が招待された事に感謝の言葉を述
べた。

そして雪子が『我が家族の為に乾杯・・!』とグラスを上げた。

モレーノもアマンダの兄弟達もパブロも駆けつけていた。
グラスが鳴り響き、これからの事業の発展を同じく祝った。

小さな砂金堀りから伸びてきた事業で、富蔵もこれまでに運命の別れと、
また運命の出会いをして、人生模様の絡み合いを感じていた。
二人の女性の出会いも、富蔵との出会いも、運命と言う細い力に絡まって
いると感じていた。
富蔵の正式な家族となったリカとその娘マリーは翌日教会で洗礼を受ける
事になり、皆が教会に揃い、モレーノがゴッド・ファーザーとなり、洗礼式が
行われた。

その夜、リカの住む未亡人の家で、ささやかな洗礼式のお祝いが行われ、
皆が贈り物を持って集まった。
マリーは富蔵の血の繋がりの娘と言う事で、黒髪の可愛い子供であった。

その夜、皆が帰って、子供も寝かせてリカと雪子と富蔵が未亡人を囲んで
今日のお礼を話していた。
その時、未亡人が『リカを家に住まわせたおかげで楽しい思いが出来て、
日々の暮らしも何も不自由しなくて住んでいるので、私が亡くなったらこの
邸宅をあなた達に譲りたい・・』と申し出があった。

富蔵は喜んでその申し出を受ける事を未亡人に話すと、即座に了承された。
明日の朝、弁護士を呼んで手続の書類を作成すると話がまとまり、その夜
はお開きとなった。
その夜、雪子が富蔵を呼んで『この邸宅の購入名義を誰にするか、リカと
相談して話して決めておいて下さい』と話すと、『先にホテルに帰っていま
すから・・』と、富蔵に話すと、ペドロを呼んで眠った子供を抱いて先にホテ
ルに帰ってしまった。

富蔵は心に痛いほど雪子の思いやりを感じた。

リカは言葉にならない様な感動をして雪子を見送っていたが、我に返った
様に、富蔵の手を取ると自分の寝室に連れて行くと、子供が歓喜の声を出
すように富蔵に飛び付いて来た。
しばらくはお互いに過去の最初の愛の交換時の様に抱き合い、狂おしい様
に抱きしめて唇を重ねていた。

そしてお互いにどちらからともなく、子供部屋のドアを開けベッドにスヤスヤ
と眠る娘を見て、抱き上げると、富蔵は抱きしめた腕の中で安らかに寝息を
たてて眠る娘の寝顔を見ていた。

それが終ると、子供をベッドに寝かせてやさしく軽くキスをすると、リカに向
き直り、軽々しく抱きかかえ、ベッドに連れて行った。

リカが全てを脱ぎ去った後の身体は少し肉が付いたが、福与かな見事な
均整のとれた身体をベッドに晒していた。

後は声を気にするほどの激しい抱き合いの時間を過ごしていた。

それは約束の時間に、微かにペドロの運転する車のエンジンの音が聞こえ
るまで続いていた。

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