2013年1月30日水曜日

第3話、伝説の黄金物語、(48)

  
陰謀の蝕手

モレーノの話から、飛行機の航空燃料に何か混ぜられた事が判明した。

しかし、無事に緊急脱出をパラシュートで果して、一命を無事に取り留めた
事は不幸中の幸いであった。
怪我も無く、降下してパラシュートが木の枝に引っ掛かり、着地するのに、
紐をナイフで切ったので、それだけがモレーノの悔しがっていた事であった。
飛行機も保険会社から保険金が支払われて、新品の飛行機が注文されて
いた。
サムはモレーノをリオ・ベールデから飛んで来た救援機に富蔵を付き添いに
搭乗させ送り出すと、墜落機の残骸のエンジンを調べて、燃料フイルターを
分解して中の詰まって固まった不純物を持ち帰って来た。

富蔵はリオ・ベールデにモレーノと戻ると、直ぐに飛行機の格納庫周辺を二
重に外は鉄条網、内側は金網のフェンスで囲んでしまった。
夜間照明と番犬を2匹、24時間の警備も始めた。

燃料給油施設にはコンクリートで屋根付きの鍵が掛かる施設を作り、一切の
設備道具と機材を収納してしまった。その入り口は警備小屋の真ん前しかな
く、24時間警備員と番犬が見張っていた。

サンパウロの飛行場も用心して燃料給油施設は防御フェンスと夜間照明が大
きな物と交換され、格納庫も夜間は完全にドアが閉められ、警備員が巡回す
るようにして、見えない敵に対して用心していた。

フイルターから検出された物は普通の砂糖であった。
何処にでもあり、エンジンとフイルターにトラブルを確実に引き起こす物でもあ
った。
短時間で全ての用心の手配が済んでからは、何事も無く営業飛行が行われ
ていた。モレーノがサンパウロに飛行で来た時に、富蔵とサムを交えて今回
の陰謀を解き明かそうと話し合った。

営業機体の墜落で誰が一番利益となるか・・・、得をして儲かるのか・・・、
一つ一つと将棋の駒を積み重ねる様に考えて行ったが、それとも遺恨の復讐
か?
これまでの営業では対抗する敵も多かったし、実際に武器を持って敵対して、
倒して行った相手も居た。しかし選択淘汰されたこの世界では、資金力と活動
力と、コネに裏打ちされたブラジル社会の生き残りが仕事を続けて行けたので
あった。

それを阻むとする者は誰か?

あらゆる情報を集めて、また聞きまわっていたが、小さなニユースだが貴重な
話をリオ・ベールデで聞き込んで来た者が居た。

昔の地主達や牧場主達との初期の抗争の時代に、他の地域に引っ越してしま
った地主の一族が財をなして、昔の事を遺恨に思って居た男が、嫌がらせで
金を使い人を雇って事件を起こさせたと推定した。

町の電話局に勤めている女性から、ある地域の町から頻繁に電話接続がリオ
・ベールデになされ、素行の悪い前科がある男がそれを受けていた事が分か
った。
昔の電話接続は交換台で、いちいちワイヤーで接続させて話をする、旧式な
ワイヤー交換式だったので、それから判明した。
電話局に勤めている女性は、アマンダ兄弟のファミリーで、内部情報で知る事
が出来た。
前科がある素行不良の男を標的に罠を仕掛けていた。

絶対に次の事件を起こすと予測して、飛行場の囲いの外に2~3度夕方薄暗
くなっても駐機させていた。
直ぐにその男が動いた事が分かり、町外れの飛行場まで移動した事も、見張
りから連絡が来て、モレーノと富蔵が計画して囮の罠を仕掛けて実行していた。

駐機場の飛行機は暗くなる前に格納庫に納めて、絶対に手が出せない事を相
手が知っているのでその前に襲ってくる事が予測され、あらかじめ犯人が襲う
時刻が予測できた。
3重の手を打って相手が駐機場に来る事を待ち構えていた。犯人は一人の単
独犯行で、予測された時間帯に相手が町を出て、歩いて町外れまで来る事が
分かった。
相手が町を出た事が飛行場に電話で知らされた。拳銃を持ったモレーノが飛
行機の胴体に潜み、近くの倉庫に富蔵と若い者達がライフルと散弾銃を構え
て待ち構えていた。
犯人が身軽な格好で駐機場の草叢の陰から忍び寄るのが分かった。
微かな鳥の鳴き声でモレーノに合図して知らせた。富蔵はライフルを構えて犯
人に焦点を合せて狙っていた。
犯人が操縦席のドアを開けようとした瞬間、中からモレーノの拳銃が突き出さ
れ、相手が逃げようとしたとたんに、拳銃で殴り倒されていた。

事務所のイスに後手に縛られて、周りを囲まれて尋問されていた犯人は、簡
単に相手の名前を白状して、命乞いをしていた。

翌朝の新聞に大きく『また飛行機が行方不明になるー!』と言う見出しが出
ていた。その午後に、捉まえた犯人の男を使い、犯行を指示させた男に電話
して犯行報酬の受け渡しを決めていた。
誘いに乗った男がリオ・ベールデまで汽車でやって来る事が決まり、その夜に
ホテルで金の引渡しが決まった。全ての下準備が整い、富蔵達も用意が全て
済んでいた。

ホテルの隣の部屋に警察幹部が陣取り、全ての会話も録音される様にした。
町に予定どうり汽車が到着して、相手がカバンを手にホテルに来た。
全て用意された部屋に相手が現金のカバンを持って入って来た。

犯人には飛行機に細工する事を頼んだ事を相手に話しをさせれば減刑すると
約束されていたので、旨く話して『今回も旨く飛行機に細工して墜落させたか
ら、報酬をはずんでくれー!』という話しに、相手も釣られて『それは良くや
った、ここに現金があるから・・』とペラペラと話してしまった。

それと同時に隣の部屋から警察が踏み込み、その場で首謀者として逮捕して
しまった。そして新聞記者達が、部屋に踏み込み写真を撮影して証拠としてし
まった。
全ての事件の詳細が翌日の新聞に出て、手錠を掛けられ、犯行を指示した
地主のファミリーの写真が掲載され、遺恨での犯行という事で全てケリが付い
た。
その事件が一件落着したように感じていた数日後、サンパウロのダイアモンド
商会の弁護士が訪ねて来た。
首謀者の弁護士の友人だと言うことであったが、告訴取り下げで示談にして
くれと申し込んで来た。
リオ・ベールデの事務所ではこの話が討議され、最後はモレーノの最終決断
とさせた。
モレーノは首謀者アントニオの亡くなった祖母が所有していた、小さな農場が
郊外にあるので賠償金の代わりにそれを貰い受けたいと申し込んだ、それと
会社の所有機の営業補償と捜索費用が加算され、相手に提示されたが妥当
な請求で、交渉の話しに来た弁護士も納得して了解してくれた。

富蔵に電話があったダイアモンド商会の社長の顔を立てるからと話して、こ
の話をまとめる様に頼んでいた。

全ての話がまとまり、首謀者アントニオの祖母が所有していた小さな農場の
登記証書がモレーノの名前に書き換えられ、モレーノに詫び状と手渡され、
それで全てが終った。
富蔵はその後、ブラジル社会のコネ関係の凄さを身体で感じていた。

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