2013年2月19日火曜日

第3話、伝説の黄金物語、(55)


 殺すか殺されるか・・!

情報提供者はドイツ語も堪能と見えて、かなりの速さでページをめくりな
がら、書類の束を見ていたが、倉庫の中は静かに皆が注目して情報提
供者の動きを見ていた。

彼はしばらく書類を丹念に見ていたが、『これは金銭には計れない重要
なニユースが含まれているので、ダイヤモンド商会の社長と幹部に直ぐ
に会い、この書類を見せたいので、これで失礼する』と言うと握手を皆と
交わすと、『後で連絡します・・』と言い残すと、車で去って行った。

倉庫の従業員が、まだ暖かいパンの袋を抱えて戻って来た。
コーヒーが入れられ、バナナとパパイヤが盆に出されて簡単な朝食を提
供してくれた。

モレーノと富蔵はアマンダの兄弟と食卓を囲むと今後の行動を話してい
たが、サンパウロに帰る前に、今日の現場火災の様子を見て来るとモレ
ーノが言った。

彼は倉庫に置いてあったバイクを借りると、倉庫を抜け出して朝早い道
路に走り出していた。
30分もしない内にモレーノが戻って来た。帰ってくるなり声を弾ませて
『酷い火災だ、あれでは何も残らず完全に灰になると思う・・』と言うと、倉
庫の鉄骨まで高温で焼けて、アメの様に曲がり崩れ落ちて、まだ消防車
も周りの倉庫延焼を防ぐ防火放水だけで、火災は放置されている・・』と
話した。

もう一杯のコーヒーを飲むと、倉庫の従業員に礼を言って皆が乗り込む
と車をスタートさせた。
早朝のサントス街道はまだ空いて、サンパウロのサムの飛行場まで一時
間チョいで到着した。
サムとペドロは事務所に戻って来ていた。
秘書のアミーは富蔵の自宅で、リカと雪子に囲まれて安心して眠っている
とサムが教えてくれた。

全てが平常に戻り、こちらは何も損害も無く、怪我人も出なかったことを
皆が喜んでいた。全て、車の中身のかたずけも終って一休みしている時
にダイヤモンド商会の社長から電話が来た。
『今日のお昼に、ランチを挟んで内密な話をしたい・・』と言う誘いの電話
であった。

皆が事務所のテーブルを囲んで休み時間に先ほどの書類の件を話して
いたが、重要な話しになると感じて、サムとモレーノに、それに富蔵も参加
して三名で行く事にした。

アマンダの兄弟二人はリオ・ベールデ行きの朝の定期便に同乗して、持
参して来た銃器と戦利品の銃器一部を積み込むと帰って行った。

モレーノはペドロを連れて飛行場の片隅の倉庫の陰で戦利品の自動小銃
通称、マシーン・ピストルと言われていた、シュマイザーを試射していた。
モレーノが、使える銃器だと話して戻って来たが、ペドロも試して撃ったの
か二人で何か話していた。

時間になりダイヤモンド商会のオフイスにペドロが運転する車で、皆で出
かけて行った。ダイヤモンド商会の事務所に行くと、すでにテーブルが用
意され、レストランから持ち込まれていたランチが用意された。

その前にワインを開けて、チーズとオリーブの肴で話しながら食前酒とし
ていた。先に来ていた情報提供者も皆とワイングラスを持って話しの輪に
入って居た。
社長が ワイングラスを軽く叩いて注目を集めると、今回の事件の件で話
を始めたが、皆が緊張をして聞いていた。

最初に口を開いて『我々は狙われている、押収して来た書類から、彼等
が邪魔者を抹殺、暗殺して勢力拡張とビジネスの対抗勢力を蹴落とす魂
胆だった。』とはっきり言った。
その時、秘書がスミス商会の幹部達と社長が揃って今、到着したと告げた。
ドアが開き中に招き入れられ、社長同士が固く握手していた。

直ぐに二人は部屋の隅に行くと、何か小声で話し込んでいた。それが済
んでから、グラスを片手に書類を見ていたが、緊張してその書類を見てい
るのが、誰からでも分かるような感じであった。

その後、ダイアモンド商会の社長が、『我々は団結して、新興勢力からビ
ジネスを守らなければならない、ドイツ系の組織された新興勢力は、ブラ
ジルへの情報網設置も兼ねて動いているので、国家がバックに居る事を
頭に入れて行動しないと、直ぐに抹殺され、主だった経営陣は暗殺される
危険性が出て来た』とそこまで言うと、書類のページを見せて『ここに書い
てある事が事実であれば、すでに刺客が放たれ、先週から活動を開始し
ている・・』と言った。

この書類に書かれている名前の刺客の目標は、スミス商会とダイアモン
ド商会、我々二人の名前も入って居るので、狙ってくる事は間違いない事
だ・・、』と言った。

スミス氏は『私はユダヤ系の経営者だから彼等のナンバーワンの目標
となっていると感じる』と話していた。

サンドイッチとサラダなどの軽いランチが終わり、コーヒーが出される頃
には、食事の時間にあらかたの話が決まっていた。
情報提供者が総括して、食事時間に大体まとまっていた話を皆にして
いた。

『サンパウロには3名の刺客が放たれていたが、一人は今回のサントス
港の倉庫での事件で死亡したと推定され、後の一名がリオデジャネイロ
に活動していると確認されるので、事件が起きる前に刺客達を消さねば
ならない』と皆の前で話した。

『すでに私の部下が2名も彼等に殺されていた』と言うと、悔しさをかみ
殺しているのが誰の目にも分かった。

サムとモレーノが富蔵を交えて書類の名簿にあった3名の名前を見て
いた。リオで活動しているとされる人物は、エーリッヒ・へブナーと読めた。

サンパウロはフランツ・ハルダーとハンス・オスターと書いてあったが、早
速知り合いの電話局の係りに電話して、サンパウロに滞在して居ると言
う、この二人の名前で電話が登録されていないか調べてもらう事にした。

モレーノがペドロを呼んで金が入った封筒とフランツ・ハルダーとハンス・
オスターと名前を書いた紙切れを持たせていた。ペドロが急ぎ足で電話
局に急いだ。
サントス港近くの倉庫が事件での火災と判明する前に急がせていたが、
それは間に合った様だった。

電話局の知り合いは過去3ケ月の新規登録者から、ハンス・オスターと
言う名前を探し出してくれた。
場所はサンパウロでも高級アパートがある、南部地域の住所であった。
リオで活動していると予測される人物は、情報提供者が早速、電話に取
り付いて手配していた。

ダイアモンド商会とスミス商会の幹部や社長が、自分達の配下の中から
会社の警備と保安を担当する者を選んで直ぐに対策本部を事務所の一
角に開いた。

モレーノとペドロ達がすぐさま行動に移した。ダイアモンド商会の社長が
『この対策事務所は24時間開いているので、緊急の時はいつでも連絡
をしてくれば手助けを出す・・』とモレーノに話していた。

モレーノとペドロが夕方の混雑し始めた道を、車でアパートを偵察に出か
けて行った。
サムと富蔵は幹部と今後どう対処するかの話をしていた。暗くなり2杯目
のコーヒーを飲み干した頃に、電話があり、双眼鏡とスコープが付いた
小口径ライフルをモレーノが持ってくる様に頼んで来た。

警備と保安係りの幹部が、奥からブローニングの22口径に消音器を取
り付られるライフルと皮のケースには入った双眼鏡を持って来た。
そしてライフルは100m以内だったら完全にスコープは調整してあると
富蔵に教えてくれた。
サムが運転する車で富蔵とサンパウロ南部地域の指定された場所に行
った。

公園側のレストランでモレーノ達が待っていた。
フランツ・ハルダーとハンス・オスター達が アパートにいる事が確認され
、『彼等が急いで移動の荷作りを始めている・・』と、モレーノが教えてくれ、
彼等がアパートを出て動いたら直ぐに襲撃すると言った。

富蔵は『先手必勝』の言葉を思い出していたが、緊迫した時間に皆の身
体から殺気が出ていた。

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