2013年2月26日火曜日

第3話、伝説の黄金物語、(57)


 リオの刺客を追え・・、

ダイアモンド商会の社長達が感謝の言葉を残して帰って行った。
黒人の助手も刺客の遺体を運び出すと、何処かに消えて行ったが戻っては
来なかった。

皆がしばらくは空腹を充たす為に、黒人の助手が持ち込んだバスケットの食
べ物を口にしていた。サンドイッチや鳥のから揚げなどと、チーズなどもあり、
空腹を充たすには十分であった。

ウイスキーのアルコールが身体に回り、昨夜からの寝不足と、緊張から解
放され、ぐったりとソファに座り込む者、タバコを取り出して吸い始める者など
が居たが、富蔵は自宅に電話を入れて、間もなく帰宅すると雪子に告げてい
た。
富蔵は座り込んだイスの前に置かれたテーブルの上を見て、刺客が身に付け
ていた拳銃のホルスターを開けて中の拳銃を取り出して見ていた。
自動拳銃のワルサーPPKの小型拳銃であった。皮のケースからは消音器も
出て来た。

簡単に消音器を拳銃から脱着出来る様になっていて、鈍いガンブルーの輝き
に魅せられていた。予備の弾倉も4個も出て来た。
急にこの拳銃が欲しくなり、スマートな型で当時のレボルバー式拳銃からした
ら小型で携帯にも便利と感じていた。富蔵がこの事を皆に話すと、誰も異存な
く了承してくれた。

あと一つの刺客が持っていた拳銃はサントスの情報提供者が、『俺が仕事に
使えるから・・』と言うとカバンに入れてしまった。

その時、電話が鳴り、情報提供者が受話器を取ると慌てて聞きなおしていた。
『リオの刺客が車で動き出し、二台の車で追いかけたが、サンパウロ行きの
   リオ街道の国道に入るのを確認して一台の車が連絡して来た』と言う事であ
った。

リオの刺客はサンパウロに向かった事が判明した。一台が追跡している様だ・・、
しかし、今の時間からすると、リオ街道を夜通して走ったとしても、最低で7
時間近く掛かる距離だから誰も慌てなかった。サンパウロ到着は朝の9時過ぎ
と推定した。

刺客の正確な容姿、頭髪、服装、車の種類、車両ナンバー、カバンの大きさ
色まで 知らせが来ていた。追跡している車には2名が乗車しているので、途中
のガソリンスタンドから電話をすると連絡が来ていた。

そこまで情報を皆が知ると安堵して、仮眠をするとモレーノやペドロが言うと、
上着を脱いでソファーに寝てしまった。
サムは自分の飛行場にある事務所に一度戻ってくると言うと、『富蔵も自宅に
一度帰るか?』と聞いて来た。富蔵もそれを了承してサムの車に同乗した。

朝方の空いた道路を飛ばして自宅にサムの車で帰宅した。サムは今日の事
務の手配と飛行計画を指示したら4時間ばかりで戻ってくると話して帰って
行った。

電話をしていたので雪子だけが裏口から迎え入れてくれた。秘書のアミーも
リカも同じ部屋で良く眠っていると言うと、寝室の浴室にお湯を溜めているの
で、入浴を勧めてくれた。
富蔵は雪子を抱きしめると唇を合わ無言でベッドに倒れ込んでいた。
事が終り、そのまましばらく、先ほどの疲れからか寝入っていたが、どのくら
い寝たかは分からなかったがコーヒーの香りで目が覚めた。

冷えた風呂に入ると下着を全部交換して、服も着替えていた。
子供を膝に、ゆっくりと雪子が入れたコーヒーを飲んで、朝のラジオに聞き入
っていた。
サントスでの倉庫火災の状況もラジオが話していたが、完全鎮火までに16時
間以上も掛かり、現場での長時間の高熱火災で、殆どの物が炭化して、鋼鉄
なども焼け爛れた状態で状況証拠が僅かしか取れなかったと話していた。
捜査はかなり時間が掛かるようだと付け加えていた。

コーヒーの後のフルーツを食べている時に、サムが迎えに来ていた。
サムもコーヒーを貰うと、飲みながら富蔵の子供としばらく遊んでいたが、腕
時計を見て富蔵を促すと裏口から皆を起さないように静かに出て行った。

ガレージに到着するとすでにモレーノもぺドロも起きて、燃料を補給して車を
点検していた。昨夜の事件で、公園の立ち木にタクシーが激突した現場から
60mぐらい坂の上に、ひっそりと駐車していたので、誰も気が付かなかった
様だが、警察では大木の衝突火災を事故とかたずたので、サントスの情報
提供者が昨夜、女が乗っていた車を現場から密かに持って来ていたが、車
のトランクが開けられ、荷物を検査して中身を見ていた。

富蔵は昨夜の光景を思い出して運転席を覗いていた、小さな散弾のへこみ
が3個ばかりドアに見えていたが、割れた窓ガラスもかたずけられ、後は何
も変わりない普通のフォードの車であった。
情報提供者が書類の中にあった手紙の住所から、死んだ女のアパートを見
つけていた。

手紙の差し出し先はリオから投函されて、その名前はエーリッヒ・へブナー
と読めた。手紙の内容からその死亡した女が恋人のようであった。
その時、電話のベルが鳴り、刺客がリオ街道の半分を過ぎた所を走ってい
ると途中のガソリン給油所から電話が来た。

全ての準備が整い、リオから急いでサンパウロに急行する男を迎え撃つ
事になった。サムとモレーノに分かれて二台の車に分かれて分乗した。
情報提供者達も、二台の車を出す事にして、すでに一台には2名が乗車し
て、リオ街道に先に出かけて30km地点で待ち伏せしていた。

サンパウロ市内に入る前にリオ街道の一本道を走っている時に狙うという
事が決まった。味方の目印は安物の白いパナマ帽子が配られ、運転する
も者がそれを頭に載せていた。リオの刺客を逃してサンパウロ市内に逃げ
込んだら、後は探すのが非常に難しいという事は誰でも感じていた。
チヤンスはその前しかなかった。

リオ街道の30km前から刺客を倒すチャンスを狙う事にした。
一番最後に富蔵とサムが乗った車がガレージを出て行った。出る時、使
用人が戻って来たら、軽くクラックションを1回鳴らしてくれと言った。

走り出してサムが『今回はプロの刺客を、こちらから狙うのであるから 用
心に越した事は無い・・』と話して後部座席に手を伸ばして、防弾チョッキ
を富蔵に見せた。

最初に出た車はリオ街道の30km地点の、電話がある休憩所ですでに
見張っていた。
20km地点近くのガソリン給油所辺りで、モレーノと情報提供者が出した
車二台で、連帯して襲うという手筈をしていた。

その少し走った所の大きなカーブ地点でサムと富蔵達が最後に待ち構
えていた。
モレーノが信号拳銃を用意して20kmのその地点を逃がしたら上空に
信号を打ち上げると話が決まっていた。

そこから数分も掛からない地点なので、いざと言う時の信号を見逃さな
い様に富蔵達は注意していた。
周りはジャングルが残る農村地帯で、微か遠くに農家が見えていた。
時間は容赦なく過ぎて行き、、刻々とリオの刺客が近よって来ていた。

富蔵とサムは防弾チョッキを付け、持って来た飛行場の事務所に置い
てあった、シュマイザーに弾倉を装填して、各自の銃器の弾を確認し
ていた。
サムがシュマイザーを軽々と片手で握り、マシーン・ピストルの感覚を
試していた。富蔵は今回も愛用の拳銃に猛毒を仕込んだ散弾の弾を
2発最初に詰めていた。

その時、いきなり信号弾が微かに晴れた空に打ち上げられた事を確
認した。

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