2012年12月27日木曜日

第3話、伝説の黄金物語、(39)


 リオでの出来事、

富蔵達がダイアモンド商会の御曹司と知り合い、仲良くなり、信用を得て
ビジネスに深く関わる上で解決しておかなければならない、ジャマイカ人
達との死闘の結末であった。
彼等はこのポルトベーリョの郊外に眠っているが、その情報は何処にも
漏れてはいなかった。ジャマイカ人達が殺した人間も発見されず、永久
に闇に消えてしまった。

ロンドンに本社を置くダイアモンド商会のビジネス範囲の広さと、その資
本力を改めて知らされたが、富蔵達には彼等から、おこぼれを貰う様な
感じであった。

しかし、御曹司のビリーが中心となって動かしている商会の政治力を考
えると、富蔵達の仕事は微々たる範囲であった。
完治してモレーノが彼等のオフイスがある、リオ・デ・ジャネイロに飛行機
で送り届けた。奥さんのスザンが改めて遊びがてら来る様に、リオの自
宅に招待してくれた。

この事が一件落着して、皆でリオ・ベールデに集まり、これからの自分達
の生き残りを相談していた。スミス商会のサンパウロの事務所に訪ねて、
今までの経過を話してダイアモンド取引に参加することを話して相談して
いた。

スミス氏親子はその話を聞いてスミス商会は金を主体に取引をして、そ
の中でダイアモンドを取り扱っていると説明してくれた。そしてスミス氏も、
ダイアモンド商会と取引があると教えてくれたが、どこかで繋がりがある
世界であった。

サンパウロのサムの事務所に皆が集まったが、アメリカに注文して居た
飛行機が到着したからであった。モレーノも来て、パブロもワイフを連れ
てサンパウロに久しぶりに出て来た。
これからの事業をどのように進めるか話し合った。

結論は政治力も政界の繋がりも無い、資金力も僅かな砂金掘り業者が、
不用意に新たな事業のダイアモンド採掘など手を出す事は、大きな火傷
を負う羽目になると考えた。
仲間の顔を見回しても、それだけの政治力も影響力のある者が誰もいな
いからだ。

分相応に生きて、仲間の生活とこれまでの事業を維持、成長させる事が
重要と皆で決
めた。回りの仲間達はジャングルで生き残る知恵はあっても、国際社会
で国を越えての取引など無理な事で、誰も大学など卒業した者も居なか
った。

ポルトベーリョで現在採掘しているダイアモンドも、たまたま砂金採掘か
らの続きで発見したものであったので、回りの鉱山などの資材調達、それ
らの運送などがブラジルの発展に連れて地道に伸びて行くことが富蔵達
には間違いない仕事であった。

話し合いが済んで富蔵もワイフと子供を連れ、それとパブロもワイフを連
れモレーノが試験操縦する飛行機でリオに飛んだが、飛行場ではダイア
モンド商会の迎えの車が来ていた。
御曹司の邸宅に案内されたが、リオのイパネマの海岸近くの高級住宅で
あった。

主人のビリーと奥さんのスザンの歓待を受けたが、富蔵には少し気にな
る事があった。出迎えの男がポルトべリョで仲間二人と死んだジャマイカ
人に良く似て、浅黒く精悍な体付きの男であったからだ。何かその目付き
が鋭く、富蔵には殺気が感じられた。

ダイアモンド商会とは運送契約も取れ、ダイアモンド採掘の新しい技術も
教えて貰った。これからお互いに協力して事業を伸ばしていく事で話し合
いが付いた。富蔵達のブラジル奥地での運送業務もかなり名が知られる
ようになり、顧客も増えていた。
御曹司との付き合いで彼の気質が分かり、ダイアモンド商会の規模の大
きさも知らされたが、これから生き残りを賭けて事業を進める上で大きな
手助けと感じた。

明日別れと言う日の前に、ブラジル名物焼肉、シュラスコの宴を開いてく
れたが、その宴の最中に、また死んだジャマイカ人に似た男の視線を感
じた。さりげなくパブロとモレーノにも注意していた。

庭園を歩きながらビリーと二人だけになったチャンスをつかみ、英語で直
接その男の事を聞いた。回りのポルトガル語を聞き流しながら、英語で話
し合っていた。誰も居ない海岸の砂浜が見えるテラスまでビリーと来ると、

『あの男は間違いなくポルトベーリョで行方不明になったジャマイカ人の
弟』と教えてくれた。

『彼等が貴方達を用心しているのは、ポルトべーリョで行方不明になった
 ジャマイカ人の兄達がダイアモンド原石の横流しと、略奪した原石の密
 売を知られたかと疑っているからだ・・』と説明してくれた。

彼等は、『リオまで来てその事を告げ口されるかと疑っていると・・』そう感
じている事を説明してくれたが、ビリーは彼等の電話を盗聴して気が付い
たと教えてくれたが、『弟がリオで兄の指示で動いていた様だとする証拠
も掴んでいる・・』と話した。

飼い犬に咬まれた様だと説明してくれたが、彼等が危険な飼い犬である
事は間違いなかった。『私も用心に腹心の部下にジャマイカ人の弟を見張
らせている』と言った。

富蔵はワインのグラスを飲み干すと、ビリーと向き合いポルトべーリョの
一件を正直に話した。ビリーは少し間をおいて『それで良かった・・、それ
でなかったらどんな事になっていたか、我が商会の信用に関わる大事件
になっていた』と話してくれた。

『私が調べただけで彼等が10人以上は関係する人間を抹殺していた』と
教えてくれた。『彼等が行方不明となり、一応は捜索と言う方法を取ったが、
実際は彼等の犯罪の隠密調査をして居た』とビリーが話してくれた。

ブラジル奥地の試験採掘でも彼等のウソの報告がバレたと説明してくれた。
『我々は何も知らず、また業務命令も出してはいない事だ』と富蔵に話すと、
『あの弟達を何とかしなくてはならない・・・』と富蔵に話し掛けて来た。

富蔵は少し考えて『それでは私が彼等が考えている様に、今晩、囮となっ
て声明を皆の前で発表する様にさりげなく彼等に流してください、そうすれ
ば必ず口封じを考えて、襲ってくることは間違い無いと思う』と言う事を伝え、
その場で彼等を始末する事を勧めた。

直ぐに了承され、腹心の部下を呼び、手順を示して用心して準備する事を
ビリーは命令した。しばらくしてダイアモンド商会と富蔵達の業務提携が成
立したので、重大な会見をすると連絡が出され、応接間で新聞記者達を呼
んで午後8時に会見と、その後のパーテイがホテルで用意された。

するとしばらくして腹心の部下が急いで報告に来た。ジャマイカ人の弟達
が動き出したという事であった。直ぐにビリーと部下達が用心に各自が拳
銃をベルトに挟んだり、ポケットに隠していた。
黒人の若い精悍な男が、小口径のライフルを持って事務所に入ってきた。
それと腹心の部下2名が自動散弾銃に対人用の弾を詰めていた。

モレーノが自分の使い慣れた拳銃をカバンから出すと弾を詰めてベルト
に隠し、予備の弾をポケットに入れていた。パブロに話して自分のワイフ
と富蔵の妻子を連れて、飛行場に駐機している所の、24時間開いている
警備が厳しいオフイスに待機するように指示して、飛行機の給油も頼んで
いた。

パブロは何も手に荷物も持たずに散歩に出る格好で道に出ると、流しの
タクシーで皆と消えて行った。しばらくして無事に飛行場のオフイスに着い
たと電話連絡があった。

それを聞くと富蔵もトランクから拳銃を取り出すと、最初の2発は蛇撃ち用
の散弾を入れ用心していた。デリンジャーの2連発もポケットに入れ、服装
を整えて身軽な様子でモレーノと準備をして居た。

部屋の電話が鳴り、海岸砂浜側の裏口ゲートから四名の不審者が侵入し
たと見張りから緊急報告が来たとビリーが電話して来た。門番が倒されて
いた様だ。

同時にモレーノがパテオ・ドアの外に、一人の男が突進して来る様子を見
た。手には大型の自動拳銃が握られているのが見えた。
瞬間、モレーノが拳銃を抜くと、窓ガラス越しに2発、男目掛けて撃った。

ガラスが砕けて丸く穴が開きその向こうで男が胸を押さえて棒立ちになっ
て居た。ゆっくりと朽ちた木が倒れる様に潅木の中に倒れていた。

モレーノが窓際の壁に隠れて外の様子を見ていた。
ドーン!と散弾銃の発射する音が響くと同時に窓が粉々になり吹き飛ん
でしまった。壁に散弾の弾がめり込むのが分かった。

二階のテラス辺りから軽く二度連続してライフルの発射音が響くと、遠く
でヒー!という声が響いた。黒人の精悍な感じの若者が応戦した様だ。

下の庭内でト・ト・トと短く拳銃を連射する音が響き、しばらくして静かにな
った。電話が鳴り、ビリーから『侵入者達が一人逃げているから外には出
るな』と念を押して来た。
そして『番犬が2匹とも侵入者に殺されていたから、その逃げている男を
犬では捜せない・・』と話していた。しかし、警察は呼ばないとビリーは話
していた。

薄暗くなりかけた外では波打ち際の音だけが響いていた。8時までは、
まだ1時間半は十分に時間はあるが、このままだと、記者会見が流れる
事もあると感じて居た。

風が出てきて広々した屋敷のうっそうと茂った木々が揺れて、岸辺に打
ち付ける波の音だけが響いていた。回りはすっぽりと茂みの中に沈んだ
屋敷がまばらに、微かに見えていた。富蔵とモレーノは窓際に身を隠して
外を見ていたが、回りの住人達は季節的に避暑のシーズンから外れてい
るので誰も居ない様であった。

波の音が轟音となって部屋に響き渡った時、ドアが開いて誰か部屋に無
言で侵入して来た。用心に外から見えない様に部屋の灯りを消していた
のが幸いした。

窓の飛び散った割れガラスを踏んだ、『バシャー!』と言う音が響いたと
同時に、富蔵とモレーノの拳銃が火を噴いた。
閃く銃口からの閃光で浅黒い男の影が瞬間見えた。

暗闇でモレーノが拳銃の弾を詰め替える音がかすかに響くと、暗闇で微
かに動く音がして人影が動いた、それに向けて富蔵のデリンジャーの2連
の散弾の弾が同時に発射された。窓ガラスが散弾の粒で無数に小穴が
開き、一部は吹き飛んでしまった。

男の影がカーテンの脇から崩れる様に窓に倒れ込んで行った。
ガシャーン!という音が響き、動かなくなった。
モレーノが身を低くして男に近寄ると、先ず止めの1発を男の頭に撃ち込
んだ。

モレーノは直ぐに富蔵を促して隣の部屋に逃れ、受話器を取りビリーを
呼んだ、『無事かー!』と言う声が響き、『その部屋を動かないで待て・・』
と連絡して来た。

廊下に足音が響き、五人ばかりが走り込んで来ると、外から見えないよ
うにカーテンが閉め回され、スタンドを点けた。皆が手に武器を握ってい
た。

ビリーが『良かった、客人に怪我がなかったのが一番だった』と話すと、
部下に隣の部屋を点検させていた。窓の外側で一人、中で窓から身体
半分突き出してもう一人が死んでいた。直ぐに部下達が死体をキャンバ
スに包むと移動してどこかに消えて行った。
ビリーに案内され二階の居間に通されると、ウイスキーがグラスに注が
れ、無言でグラスを合わせると、富蔵も飲み干した。
一言『邪魔者が消えた・・!』とビリーがつぶやいた。

モレーノが『邪悪な飼い犬に咬まれる事はもうありえない・・』と言って
グラスを飲み干した。
定刻に記者会見が開かれ、ダイアモンド商会と富蔵達との提携した事が
発表され、シャンペンが抜かれて乾杯すると、ビリー達が新聞記者達を
引き連れてホテルの宴会場に繰り出した。
玄関の前にはハイヤーの高級車が何台も並びホテルに皆を送り込んだ。

部下達も何人か来ていた。
馬鹿騒ぎの様な宴が終わりに近くなって、ビリーが『お前達と知り合え
てよかった、
全ての過去を忘れて、俺と付き合ってくれー!』と肩を抱いて来た。
富蔵もモレーノもビリーの肩を抱いていた。

その朝早く、星が瞬くリオの飛行場を飛行機が一機飛び立って行った。

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