2012年12月12日水曜日

第2話、伝説の黄金物語、(35)

 
 事業の拡大と暗雲

富蔵達がスミス家の事業に参加して順調に事業を伸ばして安定企業と
なり、仲間達の生活とその家族の安定がもはや不動になった事が分か
った。

平凡に事業が回転して、地道に伸びるビジネスが仲間の大きな信頼と
なり、若いながら富蔵が30歳を前にして仲間のボスとしての地位を確
立していた。
それには誰にも好かれる性格と、他人と摩擦を起こさない人徳もあった。

それぞれのブラジル各地の砂金や貴金属を集荷する基地の事業所も
他にビジネスを開いて着実な実績を挙げていた。
歳月の流れは速く、仲間の子供達も育ってビジネスの基盤の支えとな
っていた。

砂金採掘や生活関連物資を取り扱い、発注を受付て、取り寄せ、運送
してそれが大きなビジネスと成っていた。
それはサンパウロで富蔵とサムが主体となり物資を集めて各地に配送
をおこない、情報を集めてスミス家の会社にも送っていた。

それと同時に海の向こうの海外情報も富蔵達にスミス家の企業仲間か
らの情報として流れて来ていた。
平穏な生活と時間の間に世界情勢は動いていたが、富蔵達に入ってく
る情報は貴重なニユースもあった。
ロンドンを拠点とする昔の大英帝国の威信を借りた様な会社が南米に
も勢力を伸ばして、アルゼンチンの鉄道敷設などからヨーロッパに建設
された鉄道の枕木まで輸出ビジネスに手を出している企業であった。

穀物や食肉まで幅広く扱い、スミス家の事業にも割り込んで来た。
摩擦が起きて、ブラジルから産出する貴金属や宝石の原石まで手を伸
ばして来た。

スミス家のアメリカ系ユダヤ人とイギリスの貴族階級が投資して行う企
業との摩擦が起きて、アマゾン上流のペルー国境近くのポルトべーリョ
辺りで衝突した。ダイヤモンドの鉱石が発見されたのであった。それに
触手を伸ばして来た。

大英帝国時代に南アフリカで大きく勢力を伸ばしたダイヤモンド採掘の
利権を、ここブラジルでも彼等は狙っていたと考えられる。
金銀の採掘より巨額な利益が出るダイヤモンド採掘事業である、彼等
が目を付ける事は当然と考えられたが、ある日事件が突発して起きた。

富蔵達の鉱区に何者かが侵入してサンプル採掘をした後を発見したか
らであった。
それと採掘現場の監督が突然行方不明となって、何処を探しても陰も
形も無くなっていた。
富蔵はリオ・ベールデの拠点で皆と相談をして今後の対応を図った。
決めた事は『歯には歯を・・、目には目をー!』という、撃たれたら撃ち
返す生き残りの方法であった。
富蔵がパブロの協力でアマンダ兄弟の家族達と組んで町中に情報網を
張り巡らしていた。すでに事業も定着して多くの協力者も出来て、ビジネ
ス仲間も何処でも顔が効く様になっていたのが幸いした。

英国系の不審者が洗い出され、目星が付けられた。
その居場所のホテルを看視して、そこの部屋の掃除係りを買収して二
人の男の行動を見張っていた。部屋の中から検査機械や現場地図など
もある事が確認され、逃す事の無いように行動を見張っていた。

そんな事の最中に飛行士のモレーノから、『見慣れない飛行機が飛ん
でいた』と連絡が来ていた。彼等の動きが本格化した様子が測られて、
対策を考えていた。

先ずホテルを拠点にする二人を看視して、その動きから彼等が何を重
点に目標としているか探していたが、ある日、飛行場に見慣れない機体
が着陸してカバン一つ提げた男が降りて来た。
出迎えはホテルに居る男二人であった。

パブロが緊張して富蔵達がいる事務所に報告に来ていた。
パブロが言うには『今日来た男はジャマイカ人で早く言えば殺し屋と言
える男だ』と言った。
各地の揉め事に顔を出して邪魔な者を密かに消し去る仕事をしている
様だと話した。英国人の血が入るハンサムで背の高い褐色の肌をした
精悍な感じの男であった。

パブロが前回、近所であった砂金鉱区の紛争でその男が出入りしてい
たのを覚えていたからであった。紛争当事者の男が行方不明になり、
裁判所の担当判事が自動車事故で急死した事で、紛争はうやむやに消
えてしまったと話していた。

パブロが富蔵に身辺を注意するように言って来た。そして仲間のアマン
ダ兄弟と親戚の中から一番の機敏で射撃も出来る若い男二人を護衛
に付けてくれた。中の一人はリオ・ベールデから来た軍隊経験もある男
であった。

彼等二人は慣れた土地で、仕事仲間と友人達に囲まれて町中の情報を
すばやくキャッチ出来る立場にあり、砂金採掘現場でも仕事で顔が売れ
ていたので、誰が何処に居るという事もすばやく知る事が出来た。

そのジャマイカ人が来て直ぐに、ダイヤモンド採掘現場の事務所が襲わ
れ、事務員二名が殺され、採掘計画書と地図、試掘されていた原石が
盗まれていた。

富蔵達に緊張が走り、モレーノも飛行機で駆け付けて来た。

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