2012年11月20日火曜日

第3話、伝説の黄金物語、(30)

 動き出した組織、

富蔵がサンパウロのサムの飛行学校の滑走路に着陸して、絵美が抱く子供
と二人を抱えて、感激の再会をしていた。

サムに借りていたコルトの自動拳銃を返して礼を言い、使うことも無かった様
に簡単に事が済んだと説明した。

サムが富蔵家族とモレーノを入れて食事を用意していたので、食事を共にし
ながら情報交換をしていた。モレーノが今回の仲間の救出作戦で分配された
砂金と、懸賞の金を合わせるとかなりの額になったので、思い切って現在使
用している飛行機の所有権を買い取ることをサムに話した。

サムは新しい飛行機とエンジンもアメリカから取り寄せた資金的な事もあり、
即座に賛成してくれた。
富蔵は自分の名義ではなく、その所有者にモレーノの名前を入れた。

食後に彼の事務所でタイプが叩かれ、書類を作成すると今日の金相場でで
決済され、名義が変更された。お互いが握手してこの取引に満足していた。
機体は少し古い型であったが、エンジンは新品同様に手入れされていた。

そしてエンジンの予備部品も出してくれ、リオ・ベールデに持ち帰るようにして
用意してくれた。
その夜、サンパウロの自宅に帰り着いた富蔵は子供を寝かし付けると、久々
に絵美を抱いていた。
事業も順調に進み、各地に投資した事業から入ってくる資金も貯まり、隣の
食堂の実入りだけでも、食べていく以上の金が入って来ていた。

しばらくはサンパウロで家族の休養にあてて居たが、奥地からパブロが帰っ
て来た。
ずっしりとした砂金が入った皮袋が持ち込まれ、採掘現場が良質で、回りの
採掘場からしたら3倍も産出したという話をしていた。

それは機械化して掘り出していた事もあるが、良質な採掘現場であったと思
った。しばらくして、富蔵はリオ・ベールデの町にパブロと戻り、仲間から歓迎
された。

事業の発展と繁栄が町の広がりと同時に皆に恩恵を与えてくれ、全ての事
業が平穏に動いていた。
パブロもアマンダ兄弟の親戚の女性と結婚することになり、リオ・ベールデの
町に家を構えた。

町の勢力地図が大きく代わり、アマンダ兄弟の事務所も世間で誰もが認めて
昔のように地主や牧場主達の天下が終わり、仲間と飛行場まで開いて活動
を始めたビジネスの力は誰も阻む事が出来なかった。

ある日の早朝、サムがリオ・ベールデの飛行場にサンパウロから飛んで来た。

モレーノがサムを連れて事務所に来たが、着くと同時に口を開いて、『知り合
いの金融と貴金属取引をしているスミス氏が新規開拓で、富蔵達が開いた新
しい地域の金採掘現場に助手兼護衛を連れて商談に行ったら誘拐され、抵抗
した護衛は殺され身代金を5万ドルも要求して来た』

と説明してくれ、『ブラジル連邦警察にはまだ何も話してはいなく、救出の援
助も頼んではいない、前回は、同じ様な誘拐で警察の手配が行われたと同
時に、誘拐された人物は殺されて犯人達が逃げてしまった。』と説明してくれ
た。

当時の5万ドルは巨額な金で、犯人達が準備周到に計画して実行したと富蔵
は思った。
富蔵もサムの紹介で何度も砂金を引き取って貰い、外貨のドルやポンドに交
換して貰っていたユダヤ系の信頼おけるビジネスマンであった。

家族と彼の親戚、仲間がつい先月、仲間の救出をした富蔵達の話を聞いて
相談して来たと思った。
皆を集めて話をするとアマンダの親戚仲間で、前回の救出に参加した4名も
今回のスミス氏の捜索に参加を了承してくれた。

話が決まり、サムは直ぐにサンパウロのスミス氏の事務所に電話連絡すると、
飛行機で戻って行った。
その日の夕方、飛行場に戻って来たサムは誘拐されたスミス氏の弟を連れて
来た。

事務所の皆が座るテーブルを前に、持参したカバンから札束が出され『これ
が手付けの救出資金です』と話した。
無事に救出したら犯人達の請求額5万ドル相当は支払うと約束した。

『必ず生きて兄を救出してくれ・・』と皆に哀願した。現地の警察内部に協力者
が居るので犯人達に知られないように行動してくれと再度念を押して来た。

弟は『身代金を払って解放を考えたが、前回2回の誘拐犯達の行動を考える
と危険と感じて貴方達に相談に来た』と説明してくれた。

2日後、犯人達との交渉はリオグランデ、ドスール郊外の牧場と決まっていた。

その夜のうちに全て準備され、翌日まだ夜明け前の薄暗い内に、モレーノと
サムの飛行機に分かれて同乗した6名が武装して出発して行った。

その中にはモレーノの犬も、富蔵とパブロも居た。

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