2012年11月13日火曜日

第3話、伝説の黄金物語、(28)


 全員救出成功、

朝暗い内に皆が起きて来た。
ホセの養蜂農家の大きな倉庫に、皆が寝起きしていたので誰か起きると直
ぐに皆が起きた。
各自、銃器を確認して最後の点検と襲撃の手はずを確認すると、コーヒー
で皆と乾杯して4名が馬で出かけて行った。

モレーノと富蔵は飛行場まで馬車で出かけて行った。
直ぐ近くの飛行場と言っても、ただの草原で、飛行事務所と燃料を補給でき
る施設が完備していると言う場所であった。

複葉機の機体の側に馬車を停め、馬を馬車から外して草原に繋いでいた。
管理人に挨拶すると、エンジンに被せられていたカバーを外すと、エンジン
を始動させた。
まだ薄暗い中に排気管から赤い炎のような排気ガスが出ていた。
バケツの発炎筒がもう一度確認され、富蔵はトンプソン・マシンガンに弾倉
を装填して、予備の弾倉2個を直ぐ手に取れる場所に固定した。

肩から斜めに提げた袋に、コルト用30連発の弾倉2本を皮ケースに入れて、
予備の弾と持ち、腰にはコルト自動拳銃を下げていた。
用心に胸のポケットにデリンジャー拳銃を入れていたが、至近距離では意外
と強力な自衛武器となった。

時間を見ると、すでに仲間の4人が現場に到着する時刻であった。救出時刻
は5時と決めていたので、飛行機を発進させる事にした。
軽く爆音を響かせ離陸して飛び上がった。
日の出と同時に救出作戦開始を決めていたので、タイミングを見て居たが

明るく空が輝き、朝日がジャングルの梢から漏れて来た。
10分も掛からずに直行した現場の下で、ジャングルの外れの木陰から懐中
電灯の点滅する明かりを確認した。

ホセがすでに偵察して安全と合図を送って来た様だが、仲間も全員、見張り
小屋に襲撃する準備が出来ていると安心した。

モレーノはエンジンを吹かして爆音を上げると、翼を振り攻撃開始を告げた。
富蔵はトンプソンを胴体に固定して標準を地上に決めていた。

キャンプ小屋の回りの木々の梢をかすめると、発炎筒を正確にバケツから
束にして投げ落とした。空中でバラバラになり煙を吐きながら落下して行った。

小屋からバラバラと走り出す男達が見え、河岸に走るのが確認された。
旋回した飛行機は低空で小屋の反対側のジャングル側の見張り小屋辺りに
目星を付けて、富蔵がトンプソン・マシンガンを撃ちまくっていた。

地上で仲間が見張り小屋を襲撃するライフルの瞬く銃口の光が見えていた
が、短い時間でケリが着いたと感じた。

旋回して河の上から河岸のカヌーが繋がれていた船着場辺りを見たら、多
くの男達が手を振り、ライフルや拳銃、山刀などを手にかざして見せてくれ
た。
富蔵は成功したと感じた。モレーノが操縦席からVのサインを見せてくれた。

2ヶ所の見張り小屋から火の手が上がり、燃え上がる様子が見えたが、残
った1ヶ所の見張り小屋の側で男が一人、撃たれたのか、不自然な姿で倒
れていた。

モレーノはもう一度河岸の上を低空で飛行すると、懐かしいパブロ達の姿も
確認したので、大きな爆音と共に翼を振って飛行場に戻って行った。
飛行場に戻り、馬車でホセの養蜂農場に戻ると、用意していた馬に飛び乗
ると、モレーノと二人で現場に急いだ、モレーノの犬が必死で付いて来てい
た。
速度の遅い複葉機でも、アッと言う間に到着する飛行機の距離と、馬で走
る距離とは意外な差があった。
かなりの早足で馬を飛ばしたが、1時間ほどすると微かに現場辺りから煙
が見えた。燃えた見張り小屋からの煙りと感じた。

現場近くなってモレーノが馬を止め、しばらく休憩して犬も休めて水を与え
ていた。
双眼鏡で良く回りを用心深く見ていたが、犬を先頭に散弾銃を構え歩き出
した。その用心深さは昔の賞金稼ぎの経験からと富蔵は感じた。

まじかに迫った現場に来て馬を降り、林の中に馬を繋ぐと犬に様子を探ら
せた。何も反応しない事を確かめて、モレーノが腰に付けた物入れから、
飛行機の遭難信号に使用する小型の信号拳銃を取り出すと、空に向けて
一発発射した。

赤い尾を引いて空中高く上がり消えていった。
同時に2発の銃声が返ってきた。
犬が吼える声が聞こえて来て、誰かがジャングルの潅木をかき分けてくる
音が聞こえて来た。モレーノの犬が喜びの表現をして尻尾を振っていた。

突然、犬が飛び出して来て仲良くじゃれ始めたが、その後ろからパブロが
何か喚きながら飛び出して来ると、富蔵とモレーノに飛びついて抱き合って
いた。仲間の二人も駆け寄るとガッシリと抱き合った。

採掘現場の全員が怪我も無く河岸に逃げ出して、採掘現場を支配してい
た男達8人は寝込みを不意に襲われ、銃で抵抗した男3人がその場で射殺
され、降伏した他の男達は縄で繋がれている話していた。
見張り小屋に居た一人が抵抗したので上空から見たよう死体で転がった様
だ。
誰も逃がさなかったと話したので、発炎筒の煙の威力は凄く、うろたえた逃
げ惑う男達を簡単に降伏させたとパブロが話していた。
連れ立って皆で、キャンプの小屋に行くと全員が揃っていた。後ろ手に縛ら
れた男が5名地面に座らされていた。

この砂金採掘現場を支配していた連中が、食糧倉庫に蓄えていた酒を持ち
出して来て、皆に酒を注ぎ回すと、パブロが声高らかに今日の無事を神に
祈っていた。
皆も静かに聞いていたが、『乾杯ー!』と言う声で、皆がどよめき、叫び、開
放された奴隷同然に働かされていた男達が湧き返っていた。

フェジョンの豆ばかり食べらせられていた労務達に、馬車に積まれて持って
来ていた食料が開かれ、燻製の肉が切られ、生ハムが吊るされ、好きなだ
け切り取って食べていた。
パンも袋から出され、コーヒーが湧かされ、満足いくまで食べていた。

しばらくして皆が満腹して、酒も回り、皆が興奮から冷めた時に、採掘場を
支配していた男達が住んでいた小屋から、蓄えられていた砂金を持ち出して
来た。
テーブルに炊事小屋からバケツを持ち込み、皆が見ている前でバケツに袋
から砂金が入れられた。
富蔵は酒のグラスに砂金を充たすと、一人ずつに砂金を手渡した。
襲撃で奪い取ったライフルや、拳銃も全て皆に配った。

それが済んだ時に、少し酒に酔った男が貰った拳銃で、後ろ手に縛られ、地
面に座らされていた男の後頭部に銃口を突き付け、頭を打ち抜こうとした。

降伏して命乞いをする、無抵抗の男を殺す事は出来なかった。
モレーノが飛び掛り、拳銃を取り上げて危うい所を逃れたが、生き残った5人
の男達は中には殴られて頭から血を流して居る男も居た。

富蔵は皆が居る前で、『今日、皆を解放した褒美に、この男達5名を俺が貰
うー!』と言った。『文句は無いだろう・・』と問うと、いっせいに『ドンの好きな
ようにー!』と声が返ってきた。

救出作戦でリオ・ベールデから来た4人とホセにも皆の前で砂金が多めに配
られ、残りを皆の前で、今日の一番の立役者、飛行士のモレーノに与えると
言うと、皆から『何も異存は無い』と答えが返ってきた。

最後にもう一度乾杯が行われて皆が抱き合い、町に戻る者、ここの採掘場に
残る者、故郷に帰る者などが荷物をまとめ始めた。
死体は埋葬され、富蔵は5人の縄を切ると食事をさせ、ここに居ると殺される
から、町について来いと言うと、パブロが操る馬車の後を歩いて付いて来た。

町に帰る者と、故郷に帰る者が馬車に乗り、後ろから乗馬の富蔵達6名が、
歩いて来る5名を見張っていた。

細い道を馬車がゆっくりと進んで行った。

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