2012年11月10日土曜日

第3話、伝説の黄金物語、(27)


 仲間3人の奪還作戦、

しばらく旅に出ていました。
旅はカリフォルニア州の太平洋沿岸の都市です、そこにも昔から沢山の日
本人達が各地に僅かずつ住んでいました。
昔から、シアトルからロサンゼルスまでの鉄道が開通していたので、シアト
ルで船を降りてロサンゼルスまで鉄道で南下して行った日本人達の足跡が
あります。

サリーナスでは大規模な蔬菜栽培が昔から行われ、『エデンの東』や『怒り
のブドウ』などの作品で知られる、スタインべックの故郷です。
そこでも多くの日本人達の蔬菜栽培で働いた足跡が残っています。

そこから僅かに離れた場所ですが、昔はイワシの大漁場であったので、多
くの缶詰工場があったモントレーも、日本人の労働者が働いていました。

今もその働き手の宿舎が記念に残されています。僅かな面積の小屋です、
ベッドと洗面台、粗末なタンスがあるだけの部屋です。中にセピア色に変色
した当時の写真が飾られていましたが、その中に古い日本の風景の飾りが
写って入るのが見えました。

1895年当りから、1935年ほどまでは最盛期だったようです、近所ではア
ワビの潜水採取の良い海岸があり、日本人がそれも缶詰にして輸出してい
たようです。
現在では近海に居たイワシが消えて、アワビ漁も出来なくなり、全てが過去
に消えてその痕跡だけが残っています。

ブラジルでも当時のコーヒー園に契約雇用で入植して、余りの激しい労働と
貧困から夜逃げ同然で都会に出て、その都会の片隅でひっそりと人集めの
甘言に誘われて、奥地の鉄道建設や金鉱採掘などに出かけて行き、誰にも
知られることなく草葉の陰に眠っている人も居ました。

私も08年6月に訪ねたパラグワイで、1927年頃、パラグワイの、当時は陸
の孤島の様な所で、現地人に襲われて亡くなった若者の墓を見ました。

日本人の86歳にもなる一世が誰も訪れることも無いその墓の面倒を見てい
ました。その様に世界には、多くの日本人達の誰も知らない墓標があると思
います。

ブラジルの奥地で金鉱や鉱山採掘、、森林伐採などで使役に使われた人達
も同じ様な運命をたどったと思います。

モレーノは木にぶら下った男の長靴を脱がし、ゆっくりと研ぎ澄ましたナイフ
で足を叩いた。
『お前のキャンプには何人の仲間が居るのか?』と聞いた。
男は無言で木にぶら下っていたが、微かにナイフの先が足を刺すと、『8人
居る』と答えた。

モレーノの犬が緊張して、鼻を動かして何かを探していたが、その時、近くに
ラバの鳴き声がして誰か歩いて来る様な感じがした。

木に吊るされた男は叫び声を出そうとしたが、モレーノが男の馬から取り出
したライフルを口に差し込むと目を見開いて緊張していた。
静かなジャングルの茂みの道に、誰か近くに歩いて来る足音がして来た。

まさかこんな時間に人が通るとは予想もしてはいなかった。
犬に吼えないように合図して、静かにさせた。

右手にライフルを、左手に拳銃を構えていたが、モレーノは男の頭をライフル
で殴り気絶させていた。男は血の滴る頭をうなだれて、みの虫の様にぶら下
がって居た。

足音は間違いなくこの道を歩いてくる様で、ラバのいななきも聞こえていた。
拳銃を構えて木陰に隠れていたが、男が僅かに木に吊るされた男に気が付
く瞬間に、モレーノはラバのたずなを握った男の顔に懐中電灯を突き付け、
拳銃の銃口を額に押し付けると、男はへなへなと腰を抜かして座り込み、
ガタガタと震えていた。

しばらく時間が経ってその男が正気に戻り、回りを見回して居たが、突然・・、
木にぶら下った男を発見すると、表情が一変した。ゆっくりとその男がモレー
ノに聞いた『この木にぶら下った男を殺して良いか?』と聞いて来た。

何か事情がありそうだが、モレーノの『なぜかー!』という質問に、『俺の弟
と仲間の一人が殺された。そして何人かの労務者が酷い目に合い、働かさ
れている』と答えた。
『間違いなく、この男が帰りが遅いので探しに来ていたようだ・・』とモレーノ
に話した。
足が不自由の様だが、『それもその男に足を撃たれて逃げられないように
なった』と答えた。
『今日はキャンプで炊飯用の薪が不足したので、ラバで伐採地点まで取りに
行かされた』と答えたが、目は木に吊るされた男から離さなかった。

モレーノは足の不自由な男に巡り合ったので、木にぶら下った男は不要に
なったと感じた。何でもこの男は話してくれると思った。
ゆっくりとナイフを鞘に収め、ロープの結び目の所を教えた。男は両手でロ
ープを引いて緩めた。
『ドスーン!』と音がして気絶していた男が首に縄を巻いたまま、ストーンと
下に落ちた。

靴を脱がせた足先が痙攣して、大きく身体を動かしてもがき始めた。
足の悪い男が下で、木にぶら下ってもがく男に声を掛けていた。

『弟や仲間の仇を取ってやる、苦しむが良い・・、同じ様にして殺された仲間
の苦しみを思え!』と叫んでいた。

しばらくして静かになった現場で、モレーノは足の悪い男と救出の相談をし
ていた。相手は両手を挙げて歓迎してくれ、そして木にぶら下がった男を指
差して、あのボスの男が死んだので、救出作戦は間違いなく成功すると話し
ていた。

使役の奴隷同然にこき使われている労務者達が20人ほど居ると教えてく
れ、その中にはパブロと他の仲間2名も居ると教えてくれた。

きずかれない様に明日の朝にキャンプを襲うので、先ず飛行機が来たら発
炎筒を投下するので『大声で「毒ガス!毒ガス!」と叫んでくれ・・』と頼んだ。

そして『皆で河の方角に逃げてくれ』と頼んだが、直ぐにその事を納得して
くれ、同時にジャングルからも見張り小屋を3ヶ所から襲うと教えた。

パブロに明日の救出作戦を書いた伝言の紙が預けられ、木に吊るされて
死んだ男の銃器、拳銃2丁とライフルを手渡した。
死んだ男の懐中時計も救出時刻の正確さを守るために渡され、全ての手配
が済んでしまった。
死体をかたずけて、死んだ男の馬だけ引いて、モレーノは犬を連れて現場
を離れた。

足の悪い男はラバの背に積まれた薪の中にライフルを隠すと、拳銃2丁を
ベルトに挟み、シャツで隠して歩き出した。お互いに手を振って暗闇に消え
て行った。

モレーノは町に引き返すと、直ぐに明日の救出作戦の再点検をして、皆と
話して役割分担を確認して、明日の用意を済ませてしまった。
各自、銃器の手入れと弾の用意をして、それが済むと軽くビールで乾杯し
た。

富蔵もトンプソン・マシンガンの弾倉に弾の装填を済ませると、救出してか
らの労務者達の食料の用意と、負傷者が出た時の緊急薬品の用意をして
馬車に積み込ませた。

ホセがその馬車を馬で引いて早目に出かけて行ったが、救出作戦開始前
に現場に到着して偵察の役目も兼ねていた。

明日は朝5時に行動開始を決めて各自の時計を皆で合わせた。
モレーノが飛行機に燃料を補給して、発炎筒を10本ばかりバケツに入れて
用意して来たと話していた。

これで明日の用意が全て終了した。

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