2012年11月6日火曜日

第3話、伝説の黄金物語、(26)


 仲間の救出作戦、

パブロと他の仲間二人が消えてから10日が経過したが、何も消息がつか
めなかった。
マットグロッソのカンポグランデの町に飛行機で飛んだ。

小さな複葉機ではギリギリの航続距離であったが、サムが飛行距離を伸ば
す為に燃料タンクを2割程度大きくしていたので、荷物が少なく、人間だけ
の重量であれば問題なく飛ぶ事が出来た。

カンポグランデの町に入り、そこで情報を探した。仲間の一人の、郷里の親
戚と言う家族を探し出していた。ホセと言う名前だったが、小規模の蜂飼い
をしていたが、地理はその周りの全てを知り尽くしていた。

馬車で蜂箱を積んで各地を移動するので、大抵の水場や山道なども知って
いた。
パブロ達はそこからは道案内人と馬車で奥地に入って行ったが、それっきり
消息が消えた事は、どこかで奴隷同然に、こき使われて金鉱掘りをさせられ
て居ると考えていた。
郊外のホセの家で世話になりながら、まずホセを道案内で上空から偵察す
る事にしたが、ホセは生まれて初めて体験出来る飛行に興奮していた。

先ず金鉱が発見された地域の周りを飛んで見ることにして、ホセが指差す
地域をゆっくりと旋回してテントや、小屋がけで採掘している地域を見下ろし
て居たが、富蔵が双眼鏡で採掘現場を舐める様に見ていると、中から人が
飛び出して来て手を振った。

ボロをまとった男が必死に手を振っているのが見えたが、手首から上が無
かった。富蔵は一瞬、『パブロー!』と確信した。双眼鏡では顔までは判別
出来なかったが、見慣れた動作は間違いなくパブロと確信していた。
すぐさま操縦席のモレーノに伝言管を通じて現場を離れるように言った。

怪しまれないように、ただの砂金採掘現場に飛来した飛行機と言う感じで飛
んでいた。まさか当時、サンパウロから飛行機で捜索に来る事など先ずはあ
り得ない事なので採掘現場では珍しい飛行機を見ようと大勢の人が飛び出
して来ていた。
まさに富蔵の計画の様になった。

モレーノはサムの飛行士から借りて来ていた、航空写真を写すライカのカメ
ラで現場を撮影していた。この航空写真撮影は、牧場主などが自分の領地
を撮影して自宅の客間に額に入れて飾る写真で、当時はかなり流行して、
サムも良いビジネスになっていた。
これで富蔵はパブロ達が生きていると確信して安心した。
後はいかに安全に救出するか、金の採掘などはそれからの話だと感じてい
た。

急に開発された金鉱で人出が不足していたのと、大規模な金の採掘場を発
見したら、他人に嗅ぎ付けられぬ様に現地人では無い人間に掘らして、それ
が終ると殺して居た様な事が多くあったと話しに聞いていた。

一日か二日では掘り尽くす事は無いと考えたが、救出はゆっくり出来ないと
考えていた。
持って来た銃器などの荷物は全てホセの家に預けて、リオ・ベールデに戻っ
て来た。アマンダ兄弟達と相談して、銃の上手な若くて元気な、血の気の多
い男を救出に連れて行く事にした。

モレーノはサンパウロに帰って写真を現像焼付けして拡大すると、検証して
間違いなくパブロであり、他の仲間一人も確認できた。これで計画の実行が
決まった。

サムは近頃商用で行き、アメリカから持ち帰った、コルト45口径自動拳銃を
モレーノに持たせていた。それは特注の自動拳銃で、弾倉が長い30連発も
出来るマガジンを装填出来る様にしてあった。

弾倉が2個付いていた。弾倉を交換して撃ちまくれば60発も連続して連射
できると思った。
ホルスターに自動拳銃と普通の交換弾倉が2個、その横に皮のケースに入
った30発入りの弾倉が同じく2個あった。
アメリカでガン・スミスが個人的な設計で製作したと感じた。

モレーノはそれを試射していたので聞いたら、『すげー!威力がある・・、』と
驚いて話していた。

サムからの手紙を開けると、そこには『お前は子持ちで、乳飲み子を抱える
ワイフが居る事を忘れるなー!』と書いてあった。富蔵はサムの心使いに感
謝していた。

富蔵はトンプソン・マシンガンと45口径の弾が共通なので便利だと感じてい
た。救出作戦は用心深く準備を進めていたが、リオ・ベールデから4名の腕に
自信がある男を二回に分けて飛行機で送り込んだ。これで人員と資材が全
部整った。
後には引けない作戦となったが、相手も非合法に奴隷同然に集めて強制労
働をさせている労務者達を銃器で看視して、働かせているのであれば危険な
事は承知であった。

まず、ホセの家で航空写真と地図を前に基本的な作戦原案をまとめた。

全員で6名、富蔵とモレーノが飛行機で攻撃する事を考え、それに2名差し
引くと実際の攻撃要員は4名であったが、ホセも荷物運びと、看視を引き受
けてくれた。

先ずはモレーノが自分の犬を連れて馬で金の採掘現場近くまで偵察に出た。
そこにはパブロが飼っていた犬も居て、直ぐに母犬が嗅ぎ付けて探して来た。
犬の親子は吼えもせず、迎えてくれたパブロの飼い犬が外のジャングルま
で出て来て、お互いにぺろぺろと舐めてじゃれていた。

他には犬は居ないようで安心した。航空写真の様に、二棟の小屋があり、
片方が倉庫と食堂と感じ、他は居住の小屋の様であった。
馬が3頭ばかり草原に繋がれているのが見えた。
回りは囲いも無く、無防備で、見張り小屋が3ヶ所にあるだけであった。

少し離れた河岸にはカヌーが2隻繋がれているのが見え、双眼鏡で見ると盗
まれないように大きな鎖で木に結ばれていた。
これだけ調べるとモレーノは静かに現場を逃れて来た。
帰り道、暗くなる前にモレーノの犬が誰か町から馬で戻って来るのを探し出
していた。

馬から下りたモレーノは藪に隠れて待ち伏せていた。この道を戻る人間は
あの金の採掘現場に行く者しか通る事がない道であったからである。
片手にロープを持ち、木の枝によじ登り下を通過するタイミングを図っていた。

モレーノが投げ縄の要領で下を馬で通過する男の身体に縄を後ろから投げ
た。胴に縄が絡まると同時にモレーノは枝の反対側に飛び降りた。

胴を吊るされた男は両手の自由も無く、枝に吊るされた状態で宙に浮いて
グルグル回っていた。
片方の縄を木に結び付けると、首にも縄を締め付けて上に吊るした。
モレーノは、『暴れると自分の首が絞まるからおとなしくしろ・・・!』とゆっく
りと言った。
顔はスカーフで半分隠していた。男はモレーノに『お前は強盗か?』と聞いた。

暴れて胴を吊るした縄が緩んで下に落ちれば、首の縄が締まり、絞首刑と
同じになるので相手は静かに木にミノムシの様にぶら下っていた。

モレーノは腰のナイフを抜くと『今から俺の問いに答えなければここで死ん
でもらう・・!』と脅した。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム