2012年12月16日日曜日

第3話、伝説の黄金物語、(36)


 陰謀の激突、

私がこの物語を書き始めて、ふと・・、過去の思い出から出会った人達を考
えていました。
すでに時は半世紀近くも経って、記憶の中に沈んだ思い出を引き出して、何
気なく心に浮かんだ思いが、今では私しが歴史の目撃者として、証人となっ
ていると感じる時が有ります。

全て過去に消えてしまった人達ですが、私が出会った時にはその人たちは
70歳を過ぎて居た方ばかりです。
またその話をしてくれた方もその方の友人であったり、昔の仲間であったりし
た事で良く覚えていたようでした。
ある方の話を聞いて歴史の重みを感じたり、奇遇さに驚いてしまった事も有り
ます。

日露戦争で、ロシア軍の捕虜となり、遥か遠いモスクワを経てフランスのパリ
から、当時繁栄していたアルゼンチンのブエノス・アイレスに来て生涯、日本
人としての縁を切って結婚した外人の奥さんの姓を名乗り、日本人社会とも
絶縁して、生涯をアルゼンチンに埋めた人もいます。

その様な中で富蔵と同じくサントスで脱船して、アルゼンチンとパラグワイ国
境のポサダの町でカフェー屋を開き、成功して農園経営にも手を出していた
方でしたが、パラグワイの独裁大統領として1954年から35年間、永

年居座ってパラグワイを支配した、ストロエスネル大統領が大学生としてア
ルゼンチンのミッショネス州、ポサダの町に居た頃にコーヒーを飲みに来て、
こずかいに困っていたので良くタダで飲ませて、時にはこずかいも与えたと
話していました。

彼がパラグワイの大統領を呼び捨てにして、大統領が敬語を使い俺に話すと
笑っていましたが、歴史の中にはその様な方も居たのです。

富蔵と同じ様なサントスからの脱走者が人生の一時期に富を掴み、繁栄して
そして消えて行ったと感じます。
私がその方と会ったのは、亡くなる1年くらい前でしたが70歳過ぎて居たと
思います。目が悪く夜は出歩けないと話していましたが、昼間明るい所で、
日本の古雑誌を拡大境で読んでいた姿を思い出します。

話に聞いたのですが、戦前の日本帝国海軍のアルゼンチン親善訪問艦隊か
ら、深酒の溺酔いで汽車を乗り間違えて船に戻る事が出来なく、脱走兵とし
て生涯をアルゼンチンで過ごした方の話も聞きました。

私が一時期、下宿していたブエノスの宿は戦前、ブエノス港から日本船を脱
走して逃げた人が、最後まで住んで亡くなられた部屋でした。

生涯、コックとして働いていたようですが、独身で最後は知人と、働いてい
た所のオーナーが葬儀を出したようです。

人生の今までの行程でブエノスで植村直己氏ともすれ違った事があります、
当時彼はアコンカグワ登頂を果して、次のアマゾン河筏下りを計画していた
時期とおもいます。
短い時間でしたが、彼もこの世には居ません。全てが過去に消えて行った
のです。

話しをもとの富蔵の話しに戻りますが・・・、

ジャマイカ人が来てからダイアモンド採掘現場の事件が起きて、富蔵達が
緊張して用心していた。
富蔵達の採掘現場の監督が突然行方不明となってから、かなり日時が経
過しても何処にも姿を探す事が出来なかった。
しかし、回りの仲間と業者間の情報を集めて検証すると、どうしても最後
はホテルに滞在して居る ジャマイカ人の3人の連中に行き当たる事となっ
た。

彼らは用心して決して単独行動はする事無く、何処をどう歩くかは分から
なかったが、彼等が欲しがる情報が金に買われて流れていた。

富蔵は一策考えて囮の情報を彼等に売り込む事にした。

ダイヤモンドの原石を餌に話を持ち込んだ。餌には直ぐに飢えた魚の様
に喰らい付いて来た。顔を知られていない下働きの仲間の男に、ダイヤ
モンド原石を持たせて情報と原石の販売を彼等に持ち込んだ。

持たせたダイアモンドの原石が飛び切り上質な物であったから、簡単に
餌に喰らいついたと感じた。
モレーノが『彼等をこのまま生かしておけば、次々と犠牲者が出る・・』と
言った。

すでに彼等に殺されたり、抹殺された人間は最近だけで確実に4名は
居た。何処にも彼等にはその犯罪の証拠も無く、誰も手が出せない様子
であった。

モレーノの提案は『目には目を・・』と、逆に彼等の抹殺を考えていた。
実際に彼等は不気味な存在であった。富蔵達はこれ以上、緊張とストレ
スある対立を重ねる事は不利と考えた。
どこかで決着を付けなければ富蔵達の事業にも差しつかえると結論ずけ
た。事は計画され、実行される事に決まった。

それはモレーノを、誰か分からない奴が狙撃して、危うく一命を落とす所
であったので、皆が賛成して決行された。
狙撃されたのは事務所を出て、駐車場に行く時に物陰から撃たれ、ほん
の僅かな差ですれ違うトラックに弾が跳ねて命拾いしていた。
でなければ完全にその場で即死していたと感じられた。

富蔵達の仲間で一番の行動力を持つ、パイロットのモレーノを狙う事は、
その重大性を認識している人間と感じた。実行はダイアモンド採掘現場で、
丁度、ジャングルを切り開き試験採掘を始めた場所で、 河岸の崖に近い
場所であったので、カヌーで河から来れる場所でもあった。

喰らいついた餌は大きかった。彼等が目の色を変えて罠に掛かった事は、
それだけ情報が彼等にとって重要だったと感じた。
採掘現場が休日の日曜日と計画され、崖の上にダイナマイトを20キロ
も設置して爆破させ、土砂で一気に押し潰すことが決まった。

ダイアモンド採掘現場を案内して発見された地層を見せるという条件に、
原石を見せて納得させた。段取りは全て整い、実行はモレーノとパブロが
すると決まった。

仲間の案内役の男がホテルに出向き、三人を連れ出して来た。
河の上流から2隻のカヌーで、1隻に二名ずつ乗船して河を降りて来た。

富蔵達は仲間と隠れて河岸に身を潜めて居たが、前のカヌーには仲間の
男が乗船して、後ろにジャマイカ人がライフルを持って座っていた。
後ろのカヌーにはジャマイカ人の仲間二人が同じくライフルで武装して乗船
していた。全て段取りどうりに動いていた。

日曜日の休日で試験採掘現場は誰も居なく、静まり返っていたが、マウ
ザー・ブルームハンドルの大型自動拳銃にホイルスターを取り付けてカービ
ンライフルの様にして富蔵は構えていた。
横でモレーノがトンプソンマシンガンを構えて狙っていた。

カヌーが岸辺に近ずいて来て、仲間の案内役が崖下の試験採掘現場まで
連れて来た。パブロがダイナマイトの発破ヒユーズのスイッチを握っていた。

反対側にも富蔵を護衛していた仲間の一人が同じくトンプソンを構えて十字
砲火の様に掃射出来る様に狙って伏せていた。
ジャマイカ人達三名が熱心に地層を掘ってサンプルを採取していた。
側に3人のライフルが岩に立て掛けてあり、案内役は彼等の油断を見逃
さなかった。

仲間の道案内の男が後ろで見ていたが、ライフルを掴むといきなり河に投
げ込み、それと同時に河に飛び込んだその瞬間、一斉射撃が開始され、
三名が一瞬でもんどり打って倒れていった。

時間的には10秒も掛からない短い時間で、銃声が止むと同時に崖の上
でダイナマイトの発破が炸裂した。腹にズシーンと響く音が、轟音と共に
ジャングルに響き、土砂が崖下に崩れ落ちた。遠くで発破の音がこだまし
て鳴って居たが、すぐに元の静けさに戻った。

ジャマイカ人達、三名の姿は何処にも無かった、分厚く積もった土砂が全
てを覆い被せていた。ジャングルの中で鳥達が騒いで居たがそれもすぐに
静かになった。
パブロが『明日は土砂を取り除いた地盤から作業を始める事に成るよう
だ・・』と皆に話していた。

富蔵達はゆっくりと現場を見て廻っていた。
河に飛び込んだ仲間の案内役が濡れた身体で河から岸辺に戻って来た。
そして現場を見渡して『ことは完全に成功した、これでしばらくは安心して
仕事が出来る・・』と話していた。

全てが土砂に覆い被されて、何も目立った物は無かったし、そして邪魔者
達が消え去った。

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