2012年10月5日金曜日

第3話、伝説の黄金物語、(14)

人質交換、

富蔵はパブロから説明を聞いた。 仲間の一人が砂金採掘現場近くで、朝
早く寝る前に仕掛けていた魚カゴを揚げに行ったら、待ち伏せされ、その男
が誘拐されてしまった。

人質と交換の要求は砂金を要求してきた。何処で調べたか、貯めてあった
砂金のあらかた全部の量で、1200グラムの量を交換の条件として来た。

かなりの砂金が出る採掘場で、6人で2組に分かれて掘っても短い期間に
良く採取出来たと感じていた。良い機械を持ち、使いこなしているので、手
掘りの僅かなスコップとツルハシだけとは格段の差がある様だ。

富蔵は隣の家の銃器庫から、レミントン狩猟ライフルのスコープ付きをケ
ースに持って、明日のリオ・ベールデ行きを考えていた。

翌日の朝、まだ薄く暗く、空には星が瞬いている時間で、微かに夜が開け
始めていた。
富蔵とパブロが車で飛行場に到着した時は、飛行機のエンジンがアイドリ
ングして暖められていた。

二人が乗り込むと同時に、飛行士のサムが水上飛行機のエンジンを吹か
して離陸する為に水面を滑るように滑走し始めた。

アッ言う間に飛び立ち、今日は荷物も無く、速度も速い感じであった。
1時間も掛からず目的地の川岸に到着した。

採掘現場を旋回すると、直ぐにボートが漕ぎ出され、着水と同時にボート
を横に付け富蔵とパブロを陸に上げてくれた。
操縦士のサムが、2日後の午後3時頃に、近くに医者と医療品を載せて
飛ぶので、ここにまた、立ち寄っても良いというので、礼を言って頼んでお
いた。

富蔵達が岸に上がると直ぐに仲間全員が小屋に集まり、誘拐の対応を協
議していた。警察には連絡しない事が先ず決まり。仲間の数人が全額の
砂金を出す事には反対して居たが、払わないと間違いなく、仲間の男が
殺されるという事は違いはなかったので、強盗の要求どうりに払う事が決
まった。

決まると後は簡単であった。人質交渉の為に、荷車引きの男に手紙を持
たせて砂金受け渡しの場所を決める事になった。

サンパウロからトラックで来ると、ジャングル内は道が悪くて荷物は牛2頭
で引く、牛車に荷物を載せ代えて、現場まで運び込んでいた。

リオ・ベールデ駅の近くにある荷車引きの家に、いつもはトラックを預けて
いたので、丁度交渉には、この周りを全て知り尽くした男が良いと考えて
頼んでいた。

荷車屋は若い三人の兄弟で開いていた。その内一番下の男に手紙を持
たせた。馬に乗ると早足で走らせて消えていった。

条件は人質は危害を加えないで、砂金と人質を交換にすること。河の真
ん中でボート上で、何処からでも見える所で人質交換すると書いていた。

2時間もせずに使者が戻って来た。人質交換条件が了承され、夕方、日
が暮れる前に河の真ん中でお互いにボートを出して、人質と砂金を交換
する事が決まった。

まだゆっくりと時間が有るので、皆と安全に仲間を取り返したら必ず復讐
する事が決まり準備が始まった。皆が見ている前で狩猟用スコープ装着
ライフルをケースから出して見せたが、皆が手を叩いて、これがあれば川
の真ん中で相手を倒せると喜んでいた。

インジオの血を引く男で、先日も夜間偵察に出て男を捕まえて来たオラ
シオが、兵役時代にはライフル中隊の狙撃手として訓練され、レミントン
製の狙撃銃を使用した経験があるからと言って、銃にさわる許可を求め
て来た。

富蔵はライフルに弾を5発装填すると、オラシオに渡した。彼は射撃の許
可を求めたのでそれも許可を与えた。

彼はスコープのカバーを外すと、しばらくライフルの全体を見て、感触を
見ていたが、伏せ撃ちの姿勢で銃身は材木の上に載せ、かなり離れた
パパイヤの木にぶら下る実を標的に狙って撃った。

轟音がして、パパイヤの実が炸裂する様に吹き飛んだ、2発目も同じ様
に吹き飛んだ。
彼が一言、『これは軍隊で使ったレミントンのライフルより精度が良い』と
驚いていた。
人質を安全に取り戻したら、反撃をする事にしてその具体的な計画を立
てた。
河の真ん中で受け渡しをするので、寸前に相手の武器を持っている男を
狙撃して倒し、ボートの中に居る他の男達は、トンプソン・マシンガンで制
圧してチヤンスがあれば、先制攻撃で人質を取り戻すと決まった。

川岸で狙撃ライフルと、トンプソン・マシンガンで待ち構え、ボートの中に
も他のトンプソン・マシンガンを隠して持ち、瞬時で3方向から十字砲火の
様に撃ちまくり、制圧すると手順が決まった。

ボートには三人乗船して、一人は船の中に横になり身を隠して、二人が
身をさらして相手の船に向かうと決まった。こちらの船は船外機を付け、
船足が比較にならないほど速いので、それを生かして勝負を決めると決
心した。

仲間からその要員の希望者を募った、直ぐに泳ぎが上手で、船の船外
機操縦も上手に出来る男が手を上げた。
他の男2名は陸軍に徴兵されて銃の経験がある男が乗船を決めた。
陸で狙う者はオラシオが狙撃ライフルで、富蔵がトンプソンを持ち、受け
持つ事にした。
他の者は自分のライフルで各自狙う事に決まった。
人質を取って砂金を要求する強盗団は、これからの為にも壊滅を図る
ことが、富蔵達の仲間が生き残る最善の方法であった。

これで負ければ今後の砂金掘りは無理と皆が感じていた。
警察などの力が及ばないジャングルの辺地では、この方法しか生存の
道は無いと感じていた。

弾の封印が切られ、缶から出された弾が、50発入りのドラムマガジンに
装填され、予備のマガジンにも装填された。各自が身軽ないでたちで準
備すると、腰に付けた拳銃や各自の銃器を手入れしていた。

これからの戦いの前に、フェジョン豆と肉の煮込みが、米の上に掛けら
れた皿が配られ、コーヒーが注がれて皆が腹ごしらえをしていた。

それが終ると皆がそれぞれの銃器を用意して配置に付いた。
岸の上では双眼鏡で対岸を看視していた仲間が船が見えたと合図して
来た。相手は2隻の丸木船だと言った。
小さな船なので乗っている人数は一隻、三人しか居なかった。

2隻に6人乗船している中で、一人は人質の仲間である事は間違いな
かったので、実質は5人で対決する事になるので、当然の比率でこちら
が優勢で勝ち目が多いと感じた。
富蔵は勝負は一瞬で決まると思っていた。トンプソン・マシンガンの銃
口を木の枝に縛ったが、それは試射した程度であったが、連射で銃口
の跳ね上がりがキツイと感じていたからだ・・、

強盗団と生き残りを掛けての戦いが始まった。
仲間のボートが微かにエンジンの音を響かせて動き出した。

仲間の人質が手を縄で縛られ、首に縄を付けられて船首に犬の様に
座って、丸木舟をライフルを横に置いて漕いでいる男二人が見えて来た。

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