2012年10月14日日曜日

第3話、伝説の黄金物語、(18)


 動き出した砂金採掘、

翌朝、アマンダの兄弟に見送られて河縁の砂金採掘現場に戻った。
アマンダが馬で送ってくれ、富蔵とパブロが乗って来た馬二頭は、アマンダが
引いて帰って行った。
別れ際にアマンダが『兄弟でトラックなど持てることなど、考えもしなかった。
これで運が少しは我々の方にも廻って来た』と言うと戻って行った。

水上飛行機が迎えに来るまで、皆と採掘した砂金を対等に分けた。
仲間は誰も不平を言う者は居なかった。公平で仲間の平等を皆が知ってい
たからと感じ仲間割れで、殺し合いなどが起きた現場も沢山在ったので、作業
、食事、住居などで、皆が満足していると感じていた。
近所の労務者達が仕事を求めて来るようになっていた。

ランチが終わり、少し昼寝をして起きたら爆音がして水上飛行機が旋回して
着水した。ボートが直ぐに出され、エンジンが回転して待機している飛行機に
乗り込んだ。
飛行士のサムが笑顔で迎えてくれ、直ぐに飛び上がりサンパウロに向けて
飛んだ。

途中の飛行機の中でずっしりと腹に巻いた砂金を感じていた。
これは死んだマリアの夫が採掘した砂金であったので、何か複雑な気分で
あった。
しかし、この秘密は誰にも明かす事は考えて居なかった。この砂金を有効に
使う事を考えていた。
まだ明るい内にサムの飛行場に着いて、車に乗り換えて帰途に付いた。
パブロも全て無事に済んだ今回の出来事にホッとしていた。

絵美が飛び出してきて迎えてくれ、車を車庫に入れて部屋に戻り、寝室の
秘密の金庫に砂金を入れて隠した。
ゆっくりと絵美とコーヒーを入れて飲んでいたが、食堂は心配ないと言うぐら
いで、絵美は何も砂金の仕事の事は聞かなかった。そして口も出さなかった。

その後にシャワーを浴びて、絵美を抱いた。
子供が出来たということで、激しくは抱かなかったが、お互いに満足して抱
き合っていた。
富蔵が不在の間はミゲールに調理が任され、オナーの奥さんが手助けして、
何事も無く営業していたようだが、ご主人が再起不能と言う事で富蔵が不在
の間に譲渡の話が出ていた。
奥さんが料理の腕を活かして賄い付きの下宿屋を開く良い不動産を見つけ
たので絵美に食堂の権利と不動産をまとめて買ってくれと言う話しであった。

下宿屋を開けばこれから身体の不自由なご主人を抱えても、食べるのに困る
事がないと感じての話であった。今の富蔵の資金力からしたら僅かな金であ
ったので、その夜の内にオナーの長男で、絵美の姉のご主人に電話を入た。

感謝の言葉で身内同士の話が決まり、翌日書類が作られ、内々に全てが終
ってしまった。
ミゲールも富蔵が食堂の持ち主になり、自分の主人となったのでそれを良く
理解して働いてくれた。
ミゲールもワイフと仕事が出来る事に感謝して、弟にもこの日本食調理を覚
えさせたいと言って来たので、助手として雇う事を決めた。

これから忙しくなり食堂の仕事も余り出来ないと感じていたので、丁度良い
機会と思った。食堂も豊かな資金で改修工事をして便利で使いやすい建物
に変えた。

平穏ながら忙しい日々が過ぎた、パブロはリオ・ベールデと行き来しながら
砂金採掘事業を見ていた。そこも順調に採掘量が増え、新しい採掘現場も
準備が終った。

アマンダがトラックを運転してサンパウロに出て来て、資材を積み込みに来
ていた。積荷の在るトラックを駐車するのに富蔵を訪ねて来たので、裏の車
庫に入れさせた。

その夜、アマンダが『今日街中を走っていたら、ビルの取り壊しで、金庫の
ドアだけを無料で譲ると言う看板を見た』と話していた。

アマンダの計画ではリオ・ベールデに運送業の倉庫と保管金庫を作りたい
という構想であった。
夜中ながら早速に近くの現場を見て即決した。タダで貰うという考えであった。

しかし、入り口の金庫のドアだけで2トンもあると書いてあった。自分でクレ
ーンを雇い、トラックに積んで運び出すという事であった。
広告には一切の責任は持たないということであったが、完全に使える金庫の
ドアであった。
手回しのハンドルを裏で20回廻すと最高48時間の自動開閉も出来る様に
設計されている物であるが一度、時間にセットするとその時間にならないと
絶対に手動では開かないという金庫ドアであった。
翌日、目が覚めるとアマンダとパブロを連れて工事現場に出向いた。

現場の責任者は簡単に了解してくれ、タイプを叩いて用紙にサインをすると、
『金庫のドアはお前達の物だ、さっさと持って行けー!』と言ってくれた。

その足で工事現場に来ていたクレーン車のボスに話をすると、かなりの金
額を要求したが、現金で領収書も要らないと言うと、笑いながらいきなり半
額にしてくれた。
家に急いで帰り、フォードのトラックを持って工事現場にとって返した。

その時はクレーンの用意が出来て、釣り上げるばかりであった2トンの金庫
のドアは簡単に釣り上げられ、トラックの荷台の横たえられた。ボスが現金
をポケットに入れて、金庫のドアをロープでしっかりと固定してくれると、アッ
と言う間に家に持ち帰った。

アマンダが町一番の大きな貸し金庫を作る事が出来ると張り切っていた。
簡単な設計図を皆で書いてそれで建設する事が決まった。パブロが建設
資金を腹に巻いて金庫のドアを載せたトラックを運転して、アマンダと2台
でリオ・ベールデに出発して行った。
そのことが、後でどれだけの利益になったか、その時は予測も付かなかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム