2012年10月11日木曜日

第3話、伝説の黄金物語、(17)


  隠し埋蔵砂金の発見、

富蔵はカラカラになった喉でグッとつばを飲み込んだ。
震えていた手が収まり、ビンを手に大体の重さを量っていたが、小ビンの重さ
は1kgはあると検討を付けた。

6本ではかなりの金額になると直ぐに感じていたが、小ビンは酒ビンらしくポケ
ットサイズの小さな物であった。2本が僅かに地中から先が覗いていたが、他
の4本も直ぐに側に僅かな浅さで並んでいた。

掘り出す手間が省けて、富蔵は腹に巻いた帯状の布筒に移し替えた。
簡単に6本の小さな酒ビンが空になったので、そのビンをまた地中に埋めてし
まった。
砂金の6kgは、さすがにずっしりと腹に感じていたが、シャツの下に巻いた布
筒は外には目立たなかった。

計画した様に全てが誰にも知られなく上手く済んでしまった。
パブロも富蔵が用便を済ませた様子で戻ると、自分も用便に行きたいと言っ
て、どこかシャベルを持って藪の中に消えた。
富蔵は水筒の水を飲み干すと、自分の腹に巻かれた砂金の重さを感じてい
た。

しばらくジャングルの木陰で昼休みをしていたが、皆がそろい、馬達も青草を
食べて元気に戻っていた。馬のタズナを手に、歩きながら3人で地形を見て
廻った。パブロが、ここは有望と感じるので試し掘りをしたいと話していた。

近くに水も有り、水路も近かった、それより奪った地図に丸く印を付けてあっ
たのが一番心に感じていた所であった。今の採掘現場からも近く、水路で機
材を運んでくる手間も簡単に済んでしまうと思った。
富蔵達が動力付きのボートを持っている事が強みであった。

現場を見て直ぐに結論が出たので早目にキャンプの小屋に帰る事にした。
犬達が勇んで帰途に付いたが、馬も帰り道の速度が早い様であった。

小屋に帰り着くと誰か居る様であったが、犬が5匹ほどおとなしく木に繋がれ
て居るのを見て、直ぐに賞金稼ぎ達と感じた。

彼らは木陰で銃の手入れをしていた。首領らしい男が近寄ると全部終ったと
言って、バナナの葉を広げて見せた。中には人間の鼻を削いだ肉片が3個
あった。

富蔵は一瞬、ドキリとしたが、平静を装い、パブロにピンガの酒を持ってこさ
せ、コップに注いで渡した。グラスを合わせてグッと飲み干し、砂金の皮袋を
小屋から持ってこさせると、小さな酒のグラスに砂金を入れて相手に渡した。

グラスの一杯の砂金はこの地方の相場で、10時間ほどで強盗を追い詰め
てケリを付けて来た彼等の腕にプロの仕事を感じた。

賞金稼ぎの首領は『強盗の3人は間違いなく倒して証拠に鼻先を持って来
た。でも中の一人は我々の犬が見つけた時はすでに負傷して、1発撃って
来たので、その場で射殺して河に流した』と話していた。
富蔵達が聞いた2発の微かな銃声はその音と感じていた。

首領はライフル2丁と拳銃3丁を買わないかと誘ってきた。富蔵は他に銃器
が流れるのを防ぐ為に即座に買取を了解した。
その代価にグラスにもう一杯の砂金が渡され、全てが終った。

首領はバナナの葉に包んだ鼻先を繋がれた犬に投げ与えたが、一瞬で犬
が肉片を飲み込んでしまった。
賞金稼ぎ達は小屋の裏の木陰に繋いでいた自分達の馬を引いて来ると、
アマンダに町まで一緒に帰るか聞いていた。富蔵はアマンダに車の運転を
教えるので自分も付いて行くと言うと、パブロも町に行くと言うので、そのま
ま3頭の馬で賞金稼ぎ達の後を付いて町に出た。

今日の予定が全て済んでしまったが、富蔵は埋蔵砂金を手にして、賞金稼
ぎ達は余禄の砂金を手に入れ、アマンダも富蔵が今日のお礼にと、今朝渡
したコルトの拳銃を持ち帰って良いと許可すると、アマンダが喜んで犬達と
先頭に町まで戻って行ったが、賞金稼ぎ達は先ほど強盗を3人も殺して処
分した様な感じは一切無かった。

町の酒場に到着して、皆で冷たいビールで喉を潤すと、握手して別れた。

富蔵はアマンダの家に行くと一部屋が与えられ、少し寛いでから、トラック
の運転練習を開始したが、兄弟達が見守る中、アマンダは機用にトラックを
運転して僅かな時間で重要な運転操作を学んでしまった。

薄暗くなるまで裏の草原で練習して、夕食を食べる頃にはトラックを自由に
乗り回していたのには驚かされた。

兄達もそれを見て驚いていたが、確かに抜群の運動神経と感じた。
遅い夕食を食べながら荷車屋の兄弟3人と話して、これからはトラックの時
代が来るからトラックを持てと勧めた。とりあえず自分のトラックを使って良い
と許可を与え、パブロに簡単な契約書を書かせて兄弟3人のサインを取った。

五分五分の配分でトラックの保管と整備は兄弟が責任を持った。
アマンダが『俺がトラックの運転手になる・・、』と飛び上がって喜んでいた。

このリオ・ベールデの町でしばらくは砂金採掘の仕事をするので、駅前に長
くこの地方に住む兄弟を仲間に入れる事は、これからの事業に大きな意味
があると感じていた。
倉庫とガレージを作る様にと、必要な資金を富蔵は豊かな懐の金で惜しみ
なく出す事を決めた。

その夜は兄弟の家で泊まったが、翌朝早くアマンダに起こされた。
トラックの運転練習がしたいという事で、起きたらすでにコーヒーやパン、
果物などがテーブルに並べられ、朝食をさせられると、トラックで街中や街道
を走る練習を付きあわされた。

昨日から練習したとは思えない運転技量で、富蔵もパブロも驚いていたが、
アマンダに運転を教えてトラック運送を共同で開いたことは、これからの砂金
採掘での運送需要にも心配が無いと感じていた。

その午後に町の役場で運転の試験を受けたが、役場の周りを一ブロック周
遊するだけで終わり、手書きの免許証が発行された。
アマンダに、それが終ると無理やり酒場に連れて行かれ、
『俺の人生で、今まで一番嬉しい日だ・・』と言って乾杯させられた。

富蔵はこの地で大きく砂金採掘事業が動き出したと感じていた。

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