2012年9月20日木曜日

第3話、伝説の黄金物語、(7)

 

奥地の砂金ブーム、

富蔵は絵美ちゃんと揃ってサンパウロに出かける事にしていた。

朝はいつものように正雄と市場に出かけて行き、帰宅すると4時の市場行き
のトラックに同乗して絵美ちゃんとサンパウロに行く事にしていた。

ランチの後に、奥さんも長女の美恵ちゃんにお土産を作り、絵美に持たせて
いたが、富蔵も久しぶりの休みで、サンパウロに行く事が出来るので楽しみ
にしていた。
富蔵は明日の市場にはマリアを連れて行く様に正雄に勧めた。
言葉には不自由無しで、マリアも商売の感があるので、絶好なカップルと感
じていた。
上原夫妻は富蔵に『これはサンパウロで何かおいしい物でも二人で食べな
さい』と金をポケットに押し込んでいた。

富蔵は砂金の地図の事など全て忘れて、絵美とサンパウロ市場行きのトラ
ックに乗った。2ヶ所ばかり積み増して、トラックは中央青果市場に向かった
が、富蔵は初めてのサンパウロに興奮していた。

しばらく走り、市場近くの長女の家に着いて、そこで降ろしてもらい、絵美ち
ゃんの案内で歩いて直ぐ近くの家のドアを叩いた。

長女の出迎えで二人は部屋に案内され、歓迎してくれた。絵美ちゃんは姉
の家で下宿して、親戚のレストランで働いていた。
長女のご主人が働く市場までは歩いて直ぐ側で、そこにはオフイスも在った。

その夜は富蔵の歓迎で長女夫妻が色々と準備をしていた。

ワインも抜かれ、乾杯の声で何度も杯を重ねて、皆と楽しくその夜は過ごし
たが、食事も終わり、コーヒーを手に皆が世間話を交わしていた時に、長女
の美恵ちゃんが新聞の話だと言って、『奥地で金鉱が発見され、人が群が
るように集まって居る』と教えてくれた。

中には数日で、数キロの砂金を掘り出して、郷里で大きな土地を買い、農
場を開いたと言う話も出ていた。富蔵は一瞬、ドキリとした。

新聞の記事であるが、現実にどこか奥地の土地で人が蟻の様に砂金の河
に群がり掬い取っているという事は、事実であるは確かであった。

富蔵の頭の中に在る地図の場所も、そこに距離的には凄く近いと感じた。
まだ概略の地図しか見たことがないので、どこかで詳細を画いた地図を買
う事を考えていた。
その儲けたという若い男が掘り出した砂金の金額が、ドル相場になおして
5万ドルの金額に成った様で、砂金買取業者がユダヤ資本に押さえられえ
て居るという事も富蔵は知った。
それにしても5万ドルと言う大金は、昔では想像も出来ない巨額な金額であ
った。

富蔵は新聞を見せてもらい、その記事を、たどたどしい速度で読んでいた
が、確かに金鉱ブームは凄いと感じていた。

美恵さんのご主人も、奥地の日本人入植者が砂金を掘り当てて、家族を連
れて帰国したと言う話をしてくれた。
それは大金を手にしてから命を狙われ、家族の誘拐などを心配して帰国し
たと話して居たが、船も1等船客で帰った様な話であった。

なぜか富蔵は心の中で震えが止まらなかった。あの地図が本当であった
ら巨額な金額の砂金が手に入ると考えていた。

しかし、新聞には砂金採掘業者同士の殺し合いの記事も出ていたので、
いかに安全に都市まで持ち出して来るか・・!、強盗にせっかくの金を盗まれ
ないようにしないと何も意味が無いと思った。

それにしても奥地の無法地帯での金の採掘は、一攫千金の夢を秘めてい
る多くの男達の夢をかき立てると思った。

その夜は酔いもあってグッすりと朝まで寝入っていた。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム