2012年9月18日火曜日

第3話、伝説の黄金物語、(6)

    砂金の隠し場所、

富蔵はマリアと正雄が離れに電球の交換に行くのを見送ってから、寝静ま った静かな部屋に戻った。 自分が居る窓から離れの部屋の入り口や窓がはっきりと見えるので、そこ を注意しながら、正雄は聖書のぺージを机のスタンドの光りで丹念に見て いた。

活字に打たれた黒点は規則的にページの中に在ったので、それを書き出し て見ると、そのポルトガル語の意味が『砂金の隠し場所』と意味が解った。 辞書を引いてそのポルトガル語の単語を再確認して、富蔵は直ぐさま、手 描きの地図を自分のノートに書き写していた。

  簡単に簡素に手描きしてあるが、要点を書いてあるので意味が完全に理解 出来た。 離れの窓は一度電灯が明るく付いて、人影も微かに動いたが、直ぐに消え てシーンと静まり返っていた。 富蔵は自分の仕掛けが成功したと感じていたが、しばらくして部屋のドアが 開き正雄が出て来たが、直ぐに引き返して、見送ったマリアを強く抱きしめ ているのを見た。

しばらくして、正雄が静かな居間のテーブルでピンガの酒を珍しく飲んでい た。 微かにグラスを持つ手が震えて、まだ興奮が冷めては居なと感じたが、富蔵 も側でグラスに酒を注いで、『うまくいった・・!』と聞いたが、正雄は黙 ってうなずていた。

  翌朝早く、まだ薄暗い内に起きたが、マリアは井戸の横で洗濯ものを洗って 仕事をしていたが、マリアの身体から発散する物が昨日とはまったく違って いた。 富蔵達が馬車に荷物を用意している時に、正雄は数人の畑仕事に来た労務者 達に、マリアを紹介して、『しばらく家族として滞在する』と使用人達に釘 を刺していた。

彼等が手出しをしない様にしたと感じた。 マリアの子供は犬達を家来にして庭を走り回っていた。犬達もおとなしく、 アナの後を嬉しそうに付いて廻っていた。 食事が終わり、市場に出かける前に、おやつのお握りを貰いに奥さんの所に 行き、小声で『正雄はマリアに興味がありそうだ・・』と言うと奥さんは 『母親の感で正解よ・・!』と教えてくれた。

  マリアは食事の後は上原氏に教えてもらい、収穫物を箱に詰めていた。 家族に送られて市場に馬車を走らせたが、しばらく走って富蔵が聞いた。 『どうだった・・』というと正雄は、昨夜の事を話し始めた。

マリアと電球交換に暗い部屋に入ると、イスに乗っての電球交換は正雄が 義足で危ないので、マリアが電球を交換したが、降りる時にスカートがイス に引っ掛かり転びそうになり、正雄がマリアを抱きしめて側のベットに倒れ 込んで、掴んだ所がマリアの乳房で、マリアは正雄の手を拒否はしなくて、 胸を広げて両方の乳房を正雄の手に委ねたと話していたが、その後は余り覚 えては居ないと正雄は話していた。

男としての本能を押さえる事が出来ず、また肝心の男のシンボルが痛い様に 張り、後は自分でも考えもしないことを、してしまったと言っていた。 全てが済んでしまい、正雄の筆降ろしが昨夜済んだ様だ。 マリアは若いながら、子供が居るくらいの男の経験があり、正雄の要求など 十分に感じて受け入れたと富蔵は思っていた。

その正雄もまったく昨夜からしたら、大きく変化していた。 マリアを見る目が変り、愛情と言う感じが見て取れた。 市場の帰りに、マリアと子供に可愛い帽子を買い、テレながら似合うか気を 使っていた。 帰宅するとマリアが今朝洗濯したものをせっせとアイロンを掛けていた。

奥さんがニコニコしてマリアの子供の手を引いて迎えてくれ、その日のお昼 は賑やかで楽しいランチであった。 その夕方、サンパウロから次女の絵美ちゃんが市場からのトラックに同乗し て帰宅した。 休日を過ごす様で、絵美ちゃんも富蔵が居るので楽しい感じで帰宅したと 奥さんが話していた。

上原夫妻は急に賑やかになった家族に満足して、奥さんも富蔵が絵美ちゃん に興味があるのを感じて嬉しそうにしていた。 その夜、遊びつかれたマリアの子供が早目に寝付くと、テラスで若い者同士 カップルになり、ベンチに座っていた。 絵美ちゃんもブラジルで育って、言葉も不自由なくマリアと話していたが、 直ぐに正雄との関係に感ずいて、兄をマリアに押し付けて相手をする様に させていた。

正雄は、はにかみながらマリアの相手をして、離れの部屋にマリアの子供を 見に連れだって行った。 絵美ちゃんは『兄も結婚が出来ないかと心配していたが、安心した』と話して、 『あんな働き者のマリアでないと、農家の嫁は務まらない・・』と喜んでいた。 富蔵も小柄な絵美ちゃんが気に入り、話も日本語もポルトガル語も上手に話 せる彼女に引かれて、彼女の誘いでサンパウロの街を見物に行く事を約束し ていた。

絵美も富蔵に心許して恋人のつもりで富蔵の腕を握っていた。 かなり時間が経っても離れの部屋は静かであった。 絵美が笑いながら『今頃はお兄さんはマリアと仲良く楽しんでいるは・・!』 と言うと大胆に薄暗いテラスのシートで富蔵に寄り添って居たが、富蔵もしば らくご無沙汰していた女人の感覚が戻ってきた。 そして、絵美の腰を抱いて大胆になっていた。

しばらく絵美の若い肉体の感触を 楽しんでいたら、離れのドアが開き正雄が出て来た、今日は激しく抱き合いキス を交わしていた。 テラスに戻ってきた正雄は、富蔵と絵美がシートのクッションの中で仲良く抱き あっているのを見て、戸惑っていたが、絵美が『お兄さん、何も遠慮する事は 無いのよ・・、マリアの所に泊まりなさいー!』と声を掛けた。

絵美は立ち上がり、正雄の肩を離れの方に向けると『サアー!お兄さんは男で しよう・・!』と背中を押した。 少し戸惑っていたが、うなずくと離れの家に行きドアを叩いた。 マリアが飛び出てくると正雄を抱える様に部屋の中に入れた。

絵美がそれを見てにっこりと笑うと、『これでお兄さんも心配が無い・・!』と つぶやいていた。 翌朝、富蔵が起きた時は正雄もマリアも起きて忙しく仕事をしていた。 すでに薄暗い内に済ませた洗濯が干され、マリアは家の外にあるパン焼き釜の火 を見ながら、側には小麦粉が煉られて、パン作りの準備が出来ていた。

馬車に今日の野菜が積まれ、出かける用意が整い、朝食前の僅かな時間にマリア は正雄と富蔵を呼ん二人の目の前で、パン焼き釜の火に亡くなった夫の遺品の 聖書を投げ入れた。 そして、マリアは正雄の前で『これで私の過去は全て切れて捨てました』と言った。 正雄がマリアを抱きしめると、連れ立って食堂に歩いて行った。

食堂では絵美ちゃんが忙しく奥さんと食事の用意をしていたが、正雄が母親に先 ほどの話をすると、絵美ちゃんと奥さんがマリアを抱きしめていた。 娘のアナが犬達と熟れたマンゴーを手に戻ってきた。賑やかな朝食が始まり、 それが終わるとマリアはパンを焼き始め、正雄と富蔵は市場に出かけて行った。

日が暮れて、家族がそろい夕食の時間となり、食卓に新鮮な魚が手に入ったと 刺身の皿が飾られ、ワインが開けられ、上原氏がグラスを取ると皆で乾杯の音頭 を上げた。 その夜、富蔵はワインに酔って絵美ちゃんと踊った、正雄もマリアと抱き合って 踊り家族で歓声を上げて楽しんでいたが、明日の午後、市場に行くトラックで 絵美ちゃんの案内で初めて休日を利用して、サンパウロの街に出る事を上原夫妻 に話したが、心良く許してくれた。

かなり酔って部屋に戻り、一人になって手描きの地図から書き写した自分のノート の地図を見ていた。 原本はもう焼いて無いので、残ったこの地図が残された、ただ一つの砂金の在り 場所を示した地図と思っていた。

目的の地点にはワインの瓶らしき絵で6本埋めたと印があった。 この秘密は誰にも明かさなかった。 静かに夜も更けて行ったが、その夜から正雄は離れの家で寝るようになった。

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