2012年8月3日金曜日

死の天使を撃て!

第2話、『ブエノスに遠い国から来た狼達』

(30)狙撃の承諾、

ルーカスと犬が走って来た後ろで、誰かが銃で彼等を狙っているのが見
えた。

家の横角に立っていた男は、ライフルで狙いを付けてルーカスを撃とう
としていると感じて、とっさに私はあぶないと感じ、膝の上に乗せてい
た拳銃を窓から突き出すと、その男めがけて暗い中、慎重に狙い拳銃を
3発連射していた。

同時にルーカスが道にパッと伏せた。
男は一瞬に消えて見えなくなった。ルーカスが犬と車に飛び込んで来た。

『ハーハー!』と息をしながら、フォードの座席に座ると私が急発進し
た車で、後部ガラスを覗いて、誰も追ってこないのを確認して、
『犬が居なかったら、やられていたーー!』と話したが、口ぶりは安堵
の声であった。
ルーカスが説明してくれたが・・、
『角を曲がると、犬が足を止め、一瞬すくんで警告のポーズをしたから、
 それと同時に相手が撃ってきて、即座に撃ち返して走って逃げた』と
話してくれたが、危ういところで有った。

ルーカスは『馬に乗って店から出た男は、私の犬に足を噛まれた男に間
違いなく、待ち伏せしていた男は、多分拳銃で足を撃たれた現地人に違
いがない』と話してくれた。
『彼等は対岸のアルゼンチンに逃げる様だ』と教えてくれた。

待ち伏せした男は手にライフルを持っていた様だ、と話していたがボート
を漕ぐカイも壁に立てかけて有ったので、弾を買ってから逃げる予定でい
たと感じた。

私はルーカスに、これから店の主人と話す事を、解り易く説明しておいた。
これ以上に隠す事はないと感じたからで、彼の手助が必要と感じていた。
私一人ではこれからの話しを受ける事は無理と感じていた。

ルーカスは黙って聞いていたが、彼は・・、
『何か難しい、いわくの有る事と感じていた』と話してくれ、
『私は金を稼ぎたいーー!』とも言った。

目標はヨハンスの農場に現在居ると教えた。
私は用心の為に乗っていたフォードの車を店の裏の車庫に入れた。
そこから歩いて店の裏の居住部分に行ったが、マリオがすでに待っていた。

彼は『どこか遠くで銃声が連続して聞えた!』と言ったが、私は知らん顔
をしていた。

関連を知られたく無かったので、とぼけ顔をして席についた。
マリオはルーカスの顔を見て、また横に居る犬も見て、渋い顔をしていた
が、私は『私の助手だから、それとルーカスは軍隊時代は部隊一の射手で、
狙撃手としての訓練を受けていた』と主人とマリオに説明した。

主人は顔色を変えて聞いていたが、
『サルタ州では現在も狩猟で生活しているから、
 追跡などは絶対に他の人では真似が出来ない』と話して、今回は同席し
て最終の交渉と、その判断をするとマリオに説明して了解を取った。

話しはテーブルを挟んで、コーヒーのカップを前に始まった。

店の主人は穏やかな口調で、
『標的は間違い無く、我々が捜していた人物だ・・!
 標的に近ずいて倒す事は貴方にしか出来ない』
と言うと、マリオに隣りの部屋から狙撃ライフルを持ってこさせた。

私は一瞬、ドキーン!とした。それは私が射撃競技で使ったマウザーの
ライフルであったからで、スコープも固定して取りつけて有った。
マリオは『スコープは完全に調整してある』と言った。

手に取り、ルーカスに見せた。ルーカスは全てのライフルの機能をテス
トすると、一言『完全な狙撃ライフルだ・・!』と言った。
テーブルの上に置いて、話しを再開した。

店主は『これで標的を倒してくれ・・・!』と言って、私の顔を覗き
込んだ。

私は狩猟で獲物を倒すのとは違い、人を抹殺する事には抵抗が有った。
私はコーヒーのカップを手にして、考えていた。

決断は中々つかなかった。そこにルーカスが私の耳もとで
『外で話しが有る・・!』と言った。私は席を立つと、店の主人に向
かって、『ルーカスと二人で話したい・・!』と言った。

主人は直ぐに了解してくれ、私ら二人は部屋の外に出た。
陳氏が部屋のドアを開けてくれ、私達は中庭で話し始めた。

ルーカスが小声で『俺は金が欲しい・・!、これまで頑張ったが金と
は無縁の生活で、歳を重ねるだけで何一つ無い・・!、
せめてここいらで金を握って、農場でも買って家族と落ちついた生活
がしたい』と話して、私の手を握って頼んで来た。

私は決心して決めた。

『決行する・・!』と、そして『ルーカス・・・!お前が撃て・!』
と言った。彼は黙ってうなずいた。

席に戻り私は口を開いた、そして『標的の抹殺』を承諾した。

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