2012年7月29日日曜日

死の天使を撃て!

第2話、『ブエノスに遠い国から来た狼達』


(28) ヨハンス愛犬の死、

泣いて居たヨハンスは肩を脱臼したのか、片手が上がらなかつた。
彼の愛犬は無残に口から血を流して横たわっていたが、まだ温かみの
残る遺体は眠っている感じがしていた。

ヨハンスは肩をかばいながら起き上がると、側の後ろ手を縛られた
現地人を拳で殴ろうとした。
私は無抵抗の男を殴る事はさせなかった。
『犬を射殺したのはライフルを持った男だ~!』と言ったが、彼の
興奮は中々収まる事は無かった。

私は吉田氏と息子の健ちゃんに馬車で、先にエンカルの町まで行く様
に話した。

私はまずジープが横倒しになっているのを、吉田氏親子も手助けして
貰い、もとに押して戻した。
『がた~ん!』と音がして一度軽くジャンプすると車体は元に戻った。
車体の横に少し擦り傷が出来ただけで、頑丈な車体は何も問題は無く
エンジンが掛った。

シートに犬を包み、助手席に座らせて、現地人はルーカスが横で監視
して座っていた。私がハンドルを握り、彼の注文で実家の父親の農場に
連れて行く事になった。

余り離れた場所ではなく、彼の父親は昔のナチス・ドイツ軍に兵役でい
た時代に、医療関係の部隊に居たと話していたので、直ぐに見てくれる
と言っていた。

犬は後ろの荷台に乗せて、吉田氏親子と別れてジープを走らせた。
先ほど足を撃たれた現地人は陰も形も無かった。
ルーカスが馬の走り去る音を聞いたと言った。

確かに足に傷を受けたのでしばらくは行動に自由は無いと思った、それ
と必ず誰がヨハンスの犬を射殺したか分ると感じた。

仲間の一人を捕まえていたので、後で調べて見る事にしていた。
ヨハンスは無言で、ただ父親の農場に行く道の、曲がり角などを教えて
くれただけで有った。

余り走る事なく農場に着いた。彼の父親が飛び出して来て抱える様にし
て部屋に案内してくれた。
イスに座らせて、シャツを脱がせると鎖骨の脱臼だと言った。

その他は軽い擦り傷で腕を消毒して薬を付けて包帯を巻いて、手馴れた
仕事で終わり、肩は直ぐに母親の準備したギブスの用意が出来ると、
あお向けに寝かせて腕を横に真っ直ぐ伸ばすと、気合を入れて下に引き
元に戻した。

ギブスを当てて、固く縛って全てを済ませると、私の手を取り
『今日は息子が危うい所を助けてもらい感謝致します』と話して、
コニャックを注ぐと、私と傍らに座っているヨハンスにグラスを渡し、
ルーカスも呼んでグラスを合わせた。

父親はそれが終ると、納屋からスコップを持って来ると、シートで包ん
だ犬を抱いて、ヨハンスと家族達で少し離れた空き地に丁寧に埋葬した。

母親が御花を盛り上げた土の上に置き、十字を胸の前で切った。
そしてジープで連れてこられた現地人を、外の空き地で農場の使用人達
が顔の検分をすると、直ぐに身元がばれた!

父親は何か使用人に命令すると、三人ばかりが馬を用意すると銃を手に
どこか消えて行った。

母親は私達を無理に台所に招いて、早めの夕食を出してくれ、ヨハンス
も片手でワインを開けるとグラスに注いでくれ、今日の出来事が無事に
済んだ礼を言ってくれた。

ソーセージとポテトの煮込みをご馳走になり、父親がジープを運転して
夕方遅く、吉田家まで私とルーカスを送ってくれた。

お土産に、沢山のチーズやソーセージ、ハムなど、自家製のワインも入
れたカゴを、母親の手で私に持たせてくれた。
ルーカスの犬にも何かお土産が有った様だ。犬は嬉しそうな顔をしてい
た。

その夜、遅くなって人目を避けてマリオが車で訪ねて来た。
吉田家では話しが出来ないので、ルーカスを連れて店に出かけて
行った。
話しは意外な展開となって進展して行った

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