2012年8月24日金曜日

私の還暦過去帳(288)

私がこの歳に成っても忘れる事が出来ない事が有ります。
年末の僅かな数日の昔の思い出が、いまだに時々思い出します。

私が南米移住したパラグワイから、アルゼンチンのブエノスの
首都に出て来て、安いペンションの宿で生活していた時代です。
隣の部屋に住んでいた現地人の若い男と仲良くなり、近所の安い
レストランも紹介してもらい、時々は二人で食事にも行きました。

彼は2つの仕事を持って、週末や正月も無い様な忙しい日を過ご
して居るようでしたが、彼の癒しはギターを弾いて、故郷の歌を
唄う事のようでした。ある日彼と夕食に出て、その帰り道に仲間
が集まるカフェーに誘ってくれ、そこでコーヒーを飲んでいました。

場末の小さなカフェー屋です、テーブルも少なく、客もまばらで
した。隣のテーブルには若い女性が居ましたが、彼が誘うと同じ
テーブルを挟んで座り、話が弾みまして、楽しい一時となりました。

彼女達は近所の屋敷の、住み込みお手伝いさんとして働いて居る様で、
仕事が終わって近所のカフェーに仲間の友人と誘って来ている感じが
しました。 都会の底辺に働く、田舎から出てきた若者達が僅かな憩
いと、安らぎの時間を掴んで、若い者同士で恋の花も開いている感
じもしました。

久しぶりに楽しい時間を過ごして、明日の大晦日にもここに集まる
と言う事を約束しました。隣の部屋の友人とまた出かけて行きまし
たが、彼女達はアルゼンチンでクリスマスや正月に作る、フルーツ
ケーキを包んで持参していました。

安いシャンペンを1本注文してグラスを揃えて注いで、乾杯いたし
ました。遠くで花火が上がり、街頭には警笛を鳴らした車が通過し
て行き、午前零時が近くなった感じでした。外の街角では盛んに
ラッパの音が響き、号砲が鳴り出して、零時が告げられた時に彼女達
が軽くキスをしてくれ乾杯のグラスを上げました。

彼女の一人は胸の前で十字を切ると、今年も良き新年である様にと
祈っていました。 しばらくして、遅くなったので住み込みの屋敷ま
で見送る途中で、教会の前に来たら、階段の前で膝を折り、何事か
神に祈っていました。
彼女に後で聞いたら家族の幸せと、実り多い収穫を祈っていたと教え
てくれましたが、素朴な願いに心を打たれる感じが致しました。
私も彼女を屋敷に送り届けて、帰り道にその教会前で祖国日本に居る
両親や姉妹を思い、友人達を思って頭を垂れていました。

それから月日の経つのは早いものですが、時々その時の事を思い出さ
れます。

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