2012年8月14日火曜日

死の天使を撃て!

第2話、『ブエノスに遠い国から来た狼達』


  (35) 待ち伏せで陳氏とマリオの負傷。

私達は用心して、藪の中を歩いて行った。

陳氏の声が聞こえるが、かなり切羽詰まった感じで有った。小川が見えて来
たが、人影が争って水の中で激しく格闘していた。
その時、犬がどこからか飛び出して来た。

ルーカスの犬がパッと飛び出すと迎えておびき出す感じで、少し逃げる様子
で走り、パット仰向けになり降参したポーズをした。
ドーッと犬が覆い被さり噛みついた瞬間、ルーカスの犬が相手の犬の喉を、
下からガブリと噛み付き、激しく両足で相手の犬の下腹を蹴り出した。

犬は棒立ちとなり声も出す事無く横に倒れた。
ルーカスが山刀でその犬を刺し殺してしまった。その間、アッと言う感じで、
事が済んでしまった。
ルーカスは小川の中で格闘する現地人を拳銃で威嚇して、私に陳氏を助ける
様に言った。
私はライフルを背中に背負うと、山刀を手に、陳氏を助けに行った。
小川のなかでへたり込んでいる陳氏を引きずり出して、岸辺に連れて来た。
肩に傷を負って血が出ていたが、撃たれた様な感じであった。

現地人は濁った小川の深みに飛びこむと潜って逃げた。
同時にルーカスが拳銃で撃ったが潜って逃げられた様だ。
どこまで潜って泳いで行ったか分らないが、慣れた感じであった。

私は健ちゃんをトランシーバーで呼んだが直ぐに答えが帰って来た。
片方を車に置いて来た事が良かった。車を運転してこちらに来る様に話した。

了解の返事があり、ルーカスは犬と先に進んで行った。
私には付いて来るなと合図して、用心して藪に消えて行った。

死んだ犬が草むらに転がって、流れ出た血にハエがもうたかつていた。
陳氏はかなり弱っていたが、そこに健ちゃんが車を運転して現場に来た。

両側から抱えて車に乗せ、肩を押えて血が流れるのを止め、後ろの席に寝か
すと、近くの移住地の診療所に連れて行く様に話した。

すると陳氏が『マリオがどこかそこらに隠れているかも知れない、私が撃
たれて車が藪に突っ込んだ時に、ドアを開けて彼は上手く逃げたから・・』
と言った。

『標的は今日、ブラジルに逃げる様だ、水上飛行機を借りた人間を調べた
ら、ヨハンスの父親だった・・』それで追い駆けて来た。

彼はそこまで話すと、ぐったりとしてしまった。
急いで健ちゃんに頼んで車を運転して連れて行くように頼んだ。

そしてトランシーバを必ずポケットに入れて置く様に言った。
エンジンを掛けると陳氏が弱々しく『相手は二人居るから・・!』と注意
してくれた。
健ちゃんが運転する車は土ぼこりを上げて見えなくなった。

私は用心して肩からライフルを下ろすと手に構えた。物入に入れていた私
の小さな水笛に小川の水を少し入れ鳴らした。

澄んだ鳴声が遠くまでジャンブルに響いた。直ぐに返事が帰って来た。
ルーカスが近くに居て答えてくれた。それは『来いーー、来いーー』と鳴
いていた。

健ちゃんが車で出発する前に『この所から、小川を伝って行くとパラナ河
に出る小道が続いている』と教えてくれた。

私は山刀で木の枝を払いながら、歩き出したが、しばらく歩くと馬が2頭、
小川の横の草原に繋いで有った。襲った犯人のものと感じた。

現地人が使う馬の鞍が付いていた。しばらく歩いてまた、ルーカスの水笛
が『ここだーー!』と言う様に低く鳴いた。

ジャングルの茂みを抜けると、そこにマリオが倒れていた。
手にイギリス軍が第二次大戦で使った、弾倉が横に突き出た
『ステーン軽機関銃』を持って倒れていたが、右肩に浅く竹の鋭いトゲが
刺さっていた。

罠に掛った様だ。ルーカスが罠の竹は切り捨てていたが、彼は竹を肩から
抜くと血が吹き出るから、そのまま急いで診療所まで連れて行く様に私に
指示した。
マリオはショックでかなり弱っていた。

ルーカスは犬に命令して追跡を始めた。何時の間にか狙撃ライフルを出
して、弾を5発装填していた。
ボルトを閉め弾を装填すると安全装置を掛けて、カバンから皮袋の水筒
を出すと、近くの小川で水を入れると、スタスタと歩き出した。

犬が勇んで突進した。

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