2012年8月12日日曜日

死の天使を撃て!

第2話、『ブエノスに遠い国から来た狼達』

(34) 標的が逃亡か!

ヨハンスの実家に着いたら、直ぐに彼が出て来た。彼の恋人も来ていたので、
部屋に案内して、『コーヒーでも飲んでくれ』と話して彼女を紹介してくれ
た。

綺麗なドイツ系の金髪の女性であった。
彼女が母親と共にコーヒーを準備してくれ、ケーキも切ってくれた。
健ちゃんは早速にケーキに手を伸ばして食べていた。

彼はコーヒーカップを手に話し始めた。

『今日、父親が私の農場に居る客人を、ブラジルに送り出すので
 農場に出かけているーー』と教えてくれた。

『私が襲われた事で、父が何か急いで決めた様だーー』と話すと
 彼は少しゆっくりして行く様に勧めてくれた。

しかし私は一瞬『ドキーン~!』として考えていた。
どのような方法でブラジルに行くのか知りたかった。
しかし彼の父親を巻き込みはしたくなかったので、話しを誘う様に聞いた。

『客人は車で行くのですか、それとも、飛行機かーー!』と質問した。

ヨハンスは何の用心もしないで答えてくれた。

『パラナ河から、水上飛行機で飛ぶのだと、そう父が話していた』と教えてく
れた。
私とルーカスは顔を見合わせて、健ちゃんを急がして食べさせていた。

それが終るとコーヒーを私も飲み干すと、お礼を言って『また来るから帰り
でも時間が有れば寄ります』と話すと外に出た。
ヨハンスと恋人が車まで送ってくれた。

別れてしばらく走って私はドキドキと心臓が高鳴る気分で運転していた。
車の後部の荷物置場には、シートを被せたライフルと荷物が乗せて有った。
健ちゃんは何も知らずにはしゃいでいた。

少し運転をしたいと頼んで来たので、私は運転を代わって、後部座席に
ルーカスと座り『社長気分でいいな~!』とおどけて見せた。

しかしこれが幸運であった。それはすぐにも分った。

先の茂みにフォードの車が突っ込んでいたから、一瞬、ドキリとして、
ひょっとしたらマリオの車かも知れないと思った。

多分、私達の後を捜して付いて来ていたみたいであった。

健ちゃんは『止る!、それとも黙って通過するーー!』聞いて来た。
今からでは遅いからスピードを落さず通過する様に話して、少し隠れて車を
見ていた。
すると右手の茂みの中で、人影が動いた感じがした。

100mぐらい通過して、停車した。
私はマリオ達が事件に巻き込まれたと直感した。

ルーカスの犬が先ほどの現場の方角に耳を立て、鼻をヒクヒクさせて様子を
探っていた。
健ちゃんに『ここから絶対に動かない様にーー』と話して外に出た。

ルーカスはアッと言う間に、用意始めた。
カバンから拳銃を出すと皮ひもを解いて首に掛け、ズボンのベルトに差した。

カバンを胸の前に固定して、皮ひもで縛った。細身の山刀を腰に差して
マウザーの狙撃ライフルを皮のケースごと背中に背負った。

ルーカスは犬を呼ぶと、口を軽く握って吼えてはいけない事を教えた。
犬は『承知ーー!』と言うような感じで、私達の顔を見ると小走りで歩き始め
た。

ルーカスが車からベニヤ板2枚を胸掛けの様にした板を、私に首から皮ひもで
頭から被せた。

『何でこなん物をーー!』言うと、
『罠の仕掛けが胸に穴を開けない様にーー』と言うと、今朝、健ちゃんにテ
スト運転させて居る時に、ベニヤ板で作っていたと話してくれた。

一センチぐらいの厚さがあったが、余り重くもなかった。
丁度、腰の下までの長さであった。
まるでチンドン屋の看板持の感じがしたが、板が小型であったから、おかしく
はなかった。
ルーカスは胸の前にカバンを皮ひもで固定してあり、これで罠は防げると言っ
た。私はインジオが簡単に作る罠を知っていた。
足で踏むと竹のバネで鋭く削った竹の針が胸の前に飛び出して来る、恐ろしい
しかけであった。

用心にこした事はないと感じた。犬は先を走って藪に飛び込んで行った。
私はブロウニング・ライフルを左手で掴むと、右手に山刀を持ってルーカスの
後に付いて行った。
しばらく歩くと、どこか直ぐ近くで、激しく争う音が聞こえて来た。

その声は陳氏の悲痛な声で有った。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム