2012年7月7日土曜日

死の天使を撃て!

第2話、『ブエノスに遠い国から来た狼達』

 (17)パラグワイへの飛行、

翌日、朝早くタクシーが迎えに来た。
予約してあった知り合いの運転手が迎えに来ていた。後ろのトランクに
荷物を入れると混雑のする上り線の道路を反対に見ながら、モレ-ノの
飛行場に行った。

民間飛行場で旅客機は発着はしては居なかった。
タクシーの中で、ルーカスの犬はおとなしく座って外を見ていた。首輪
には狂犬病の予防注射の鑑札も付けて、毛の短い雑種の中型犬はよそ行
き顔で、犬ながら嬉しそうな顔をしていた。

飛行場に着いて、セスナの駐機場に行くとすでに準備が済んで居て、
マリオが側で何か用意していた。
我々に『コーヒーが入れて有るから、飲んでくれーー』と近くの事務所
を指差した。
荷物を下ろしてタクシーを返した。先ず荷物を飛行機に積み込みして、
それから事務所に犬を連れて行った。

コーヒーの良い香りが外までしていた。テーブルには私が好きなクロワ
ッサンが置いて有り、コーヒーにクリームをたっぷりと入れると、ゆっ
くりと飲んだ。

マリオが入って来て全ての準備が整ったことを知らせてくれて、マリオ
もコーヒーのカップを取ると飲んで居た。
彼もゆっくり飲んで居たが終って、彼は所持していた拳銃のワルサーを
差し出して、陳氏も呼んで彼のポケット拳銃も一緒に私に渡してくれた。

上着を脱いで何も武器を持っていない事を見せてくれた。私も安心した。
私は腰の後ろにいっもと同じホルスターに入れた愛用の拳銃を隠してい
た。ルーカスも私の予備の拳銃をカバンの下に入れていた。

そしてボールペンに仕込んだ毒牙を胸のポケットに差していた。それは
ボールペンの頭をポンと押すと僅かに毒蛇の牙が出てくる様になってい
た。ダブルのペンで黒と赤の2色が出るタイプであったので、普通に黒
インクでは文字が書けた。

ルーカスが細工して私に用心の為に持たせてくれたのでいざと言う時の
為に胸のポケットに仕舞っていた。離陸する前にトイレに行って、用を
済ませて来た。

プロペラがすでに旋回して轟音を出していたので、私達が乗ると直ぐに
ドアを閉めて、マリオがラジオの送受信器を耳に掛けると、管制塔に離
陸の許可を求めた。
直ぐにOKの返事が来て、誘導路を滑走し滑走路に入ると、アッと言う
間に飛び立った。

ぐんぐんと高度を上げて行った。ラプラタ河が濁った大河を見せて流れ
ていた。しばらく飛んで水平飛行に入り、自動操縦に切り替えてマリオ
が、前の席より話し掛けて来た。
『約束どうりの時間に来てくれて感謝します。現場は貴方とルーカスし
か近寄れない様だ、その他の人間は直ぐに怪しまれる、最善の協力をす
るから必ず確信出来る情報を集めて下さい、お願いしますーー!』と
誠意を込めて話し掛けてきた。

陳氏も『是非とも、マリオの願いをかなえてやってくださいーー!』と
言った。
私は『出来るだけ貴方の希望に添いたいと思います、貴方が捜す標的が
目指す場所に住んで居たら、あらためて最終目的の条件を話し合いまし
ょうーー!』と言った。

マリオは黙って握手をして来た。晴れた空は快適な飛行で揺れもしなか
った。ルーカスの犬は床に寝そべって静かにしていた。

単調な飛行はパンパの景色も変わり映えしない様に、のどかに飛んでい
た。眠くなってトロトロと夢心地でまどろんでいた。どのくらい飛んだ
か分らないが、マリオがエンカナシオンが見えて来たと教えてくれた。
緑濃いいジャングルも見えていた。

いよいよパラグワイでの戦いが始まった。

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