2012年7月18日水曜日

私の還暦過去帳(271)

今日の二ユースを見ていて驚きました。
なんと・・、子犬が14億円もの遺産を相続したからです。
大富豪の奥さんが残した遺産でした。

それからしたら時代が大きく変化したと思います。私が46年も前
にアルゼンチンの田舎で見た事や、南米各地を歩いて見た当時の犬
や猫の有様からしたら、今ではお犬様、お猫様と言うレベルに達し
ていると感じます。

昔のブエノス・アイレスの都会では、犬を散歩させる専業の人が犬
達を連れて通りを歩いている姿を見ることが出来ましたが、田舎で
は、まだ犬は家族同様に飼われても、逞しい感じが致しました。
私がブエノス郊外の農場で仕事をしていた時期ですが、近くの牧場
に訪ねて行くと、ゲートから中には入る事は出来ませんでした。

必ず犬達が4~5匹がジット座って見詰めて居るからでした。
ゲートに手を触れると、一斉に『ワンワン・・!』とうるさいほど
吼えて騒ぎます、しばらくして家の誰かが出てきて、犬達を
『うるさいー!』と一喝して怒鳴ると、静かになりました。

これはまさに、ゲートを通過する儀式の様でした。しかし、家の方
が近くに居ないと10分でも待たなくてはなりません。犬達も誰か
来て『うるさいー!』と怒鳴るまでは吼えていますので、呼び鈴み
たいな物です、田舎の滅多に訪問者も無い様な牧場ですから、のん
びりしたものでした。

そこの牧場には大きな竹薮があり、トマト栽培に使う支柱に丁度便
利な竹を簡単に切り出すことが出来ました。毎年繁殖して増える竹
を抑制する為にも切り出していましたが、家の側の作業小屋の前に、
解体した牛がぶら下がっていて、犬達に主人がノコで骨をガリガリ
と切り、肉とブツ切りにした塊を分けて与えていました。

牛の皮はまだ脂と血が付いたまま柵に広げて有りましたが、牛をま
るでニワトリを解体する様に、ぶら下げてあるのには驚いていました。
それからしたら、ドック・フードなどはまだ田舎では見られない時で
したので、骨付き肉を貰う犬達が、私達の日本人が考えられない様な
贅沢な塊の、豪快なランチを犬達は食べていたようでした。とても

日本では見る事が出来ない様子でしたが、犬も子牛の様にでかく育
っていました。
犬達が骨をかじっている場所に牛が迷い込んでくると、いきなり牛
の尻尾をガブリと噛んで追い払っていました。
中の一匹の犬は噛付いたままで、イタズラする様にぶら下がって走
っていました。まさに野性味が有る犬達でした。

その犬達も主人が馬車で雨上がりの田舎道を馬車で買い物に出た時に
付いて来ていました。おとなしく、静かに、余所行き顔で・・、道端
でどこかの犬達が吼えても、知らん顔で決して喧嘩などすることは有
りませんが、馬一頭で引く馬車の両側に主人の顔を見ながらゾロゾロ
と仲良く連なって歩いて居ましたが、ウサギなどが草陰から飛び出し
て来て主人が『それー!』と声を掛けると一斉に吼えながら分担して
追跡を開始していました。

一度見た事が有りますが犬達は慣れて、若い元気な犬が一番先に追跡
して、全速で走り、次にバトンタッチして上手に追い詰めていました。
鉄条網の柵も慣れた感じで潜り抜けて、草原を追跡する様は見事でした。

私がブエノス近郊から離れてボリビア国境のサルタ州で農場の仕事を
していた時代に野菜をブエノスにトラックで出荷した帰りに、長旅の
長距離運転に疲れて、サンチヤーゴ・エステーロの砂漠地帯で夜が明
けて、朝霧に濡れた道端の小さな部落で、囲いからヤギ達が犬に追わ
れて一日の放牧に出る様子を見たことが有ります。トラックを停車し
て、道端で焼きたてのトウモロコシのパンを買い、マテ・コシードと

言うお茶を飲みながら、パンにヤギのチーズを挟んで食べていました。
トウモロコシ茎を燃やして焼くパン釜から煙が上がり、それ以外は死
んだような静かな大地でした。
朝焼けの塩が吹いて乾いた乾燥した大地に、どこに生命を養う力があ
るかと思うくらいの荒れた大地でしたが、人間が住み、犬がヤギを追
って放牧に出る姿を見て、トラックに有った食べ残しのアサード
(骨付き焼肉)を犬を呼んで手渡しで渡したら、私の前で座って犬達
が主人から食べる了解を貰うまで、よだれを垂らして待っていた可愛
い姿を思い出します。

その主人には農場で収穫する、バケツに入れて沢山持っていたオレン
ジを両手に持てるだけ上げると、皮袋に入れて喜んでヤギを追って犬
達と消えて行きました。
日干し煉瓦で出来た部落の家が朝日に輝いて、屋根のパームの屋根が
朝露で濡れてしっとりと輝いていました。

遠くでヤギ達の鳴き声がして、牧童が持っている麦焦がしか、トウモ
ロコシを同じ様に焦がして、水筒代わりの皮袋とそれだけが一日、昼
に口に入れる事が出来る食べ物の生活は質素で、とても現代では考え
られない事です。
日本ではペット・フードに費やされる金額が2468億円と聞いて、
それだけでも昔の半砂漠地帯で生きていた原住民の生活を比較して思
い出します。

朝の休憩を終わり、トラックを発進して微かにヤギの群れが立てる土
ほこりが潅木の荒れた大地に風に流れて、私のトラックに遠くで手を
振る牧童の姿を見て、それが朝日の輝きに消えて見えなくなった思い
が、今のように思い出します。

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