2012年7月15日日曜日

死の天使を撃て!

第2話、『ブエノスに遠い国から来た狼達』


 (21)日本人移住地での宴会、

その後、私達は馬車に乗ってもう一ヶ所に寄った。
そこは日本人の経営する雑貨屋で、多くの日本食品がおいて有ったから、
顔を出して移住地のニユースも聞いておきたかった。
そこに行けば何でも、話が毎日のごとく入って来るので便利である。
健ちゃんもそこに行くのは好きで、漫画の本を見れるからで、かなりの
数の週刊誌などが、月遅れで日本から来ていた。

私は移住地の奥に行くから、そこを訪ねる昔の友人にお土産としてかな
りの日本食品を買い入れた。皆が喜ぶ物は余り口に出来ない日本食品で
あったからで、ダンボールに入れ切れない様に買った。
ブラジルから来た物や、隣国のアルゼンチンから来た物も有った。佃煮
や、昆布、海産物など皆が目を細めて喜ぶ物を、豊かな懐の金に任せて
買い入れた。

健ちゃんが目を丸くして見ていた。私は彼が欲しそうにしていた日本の
漫画や少年マガジンを買ってやった。
店の横で出来立ての巻き寿司やお稲荷を買うと、ルーカスに試食させる
と喜んで食べていたから、彼の分も買うとルーカスはビールを買って食
べていた。

ルーカスの犬が欲しそうに見ていたので、巻き寿司をやると匂いを嗅い
で、『へへーー!私には食べられませんーー!』と言う感じで鼻の先で
コロがしていたから、犬にはカツサンドを買ってやると、ガツガツと食
べていた。
中の豚カツが美味しいのか前足で押えて、犬でも美味しそうな顔をして
食べていたから笑ってしまった。

吉田家の家族にもお寿司とお稲荷をお土産に買うと帰途についた。
馬車の後ろからルーカスの犬が満腹の感じで付いて来た。
丁度お昼時間で皆が喜んでくれ、私のお土産を開いて食卓を囲んだ。
私は奥さんが作った手打ちうどんをもう一度お腹に入れて、満腹の幸せ
で昼寝をしていた。

日が少しかげてから馬車で出かける事にしたが、吉田のおやじさんと
長男が案内してくれた。馬車の後ろに荷物を載せて、トコトコと走り出
した。

途中、移住地の手前に住んで居る鈴木氏の家にも顔を出して挨拶して、
お土産を置いてきた。主人はあいにく留守であったが奥さんが喜んでく
れ、今夜でも吉田氏の入植地の家に行くと話していたので嬉しかった。

道端のロシア人の雑貨屋で牛肉の新鮮な塊を買い、犬にもすじ肉の塊を
夕食に付けてもらったので、犬が鼻をひくひくさせて喜んで見ていた。
だいぶ遅くなって着いたが昨日に連絡していたから、留守番の現地人が
風呂も沸して、すっかり準備をして待った居た。

荷物をかたずけて私は牛肉を切り始めた。ルーカスも手伝わせて今晩の
すき焼き鍋と、ジンギスカン鍋の用意を始めていたが、健ちゃんが大釜
で御飯を炊いてくれ、持ってきた色々な日本食品を並べて、宴会の用意
をすると、そこに鈴木氏の家族が車でやって来た。

同時に同船者であった田口氏の家族もやって来た。皆はそれぞれお土
産に何か今夜の宴会に口に出来る物を作って持って来ていたので、直
ぐにテーブルは置き場がない様になってしまった。

カセットテープで民謡が流れ、日本酒やビール、私が飛行場で買い入
れたウイスキーなどが並べられ、近所の日本人も呼んで来て盛大な宴
会を開いて居た。

焼肉の匂い、すき焼きの美味しい醤油の香り、皆が大皿に盛られカマ
ボコや巻き寿司、お稲荷さんに目を輝かしてくれたので私は嬉しくな
り、ルーカスは焼肉のジンギスカン鍋でコックをしていた。

犬は横で嬉しそうにおこぼれを貰い、満足の顔で子供達とじゃれてい
た。ここでも日本の清酒で乾杯して、灯油の冷えない冷蔵庫で作った
氷を皆に分けてウイスキーも開けて飲む人や、ビールを片手に焼肉を
食べる人などで宴が進み、吉田氏の奥さんと子供達が車でやって来た。

ミクロと言う町と移住地を結ぶ乗合バスで有った。奥さんがおにぎり
を作り、今夜の長い宴会の兵量を皿に盛り上げて、多いに話も賑やか
になった時にオートバイの音がして、誰かがやって来た。

健ちゃんが隣りの佐藤氏の後を買ったドイツ人だと言った。
私は心の中で『チャンス~!』と思った。若い男で金髪の背が高い好
男子であった。
健ちゃんがその男の手を引いて私に紹介してくれた。
『ヨハンス』と自己紹介して握手して来た。

余りの騒々しさに驚いて見に来た様であった。
日頃、静かなこのジャングルの農場では騒々しくて、大騒ぎの音と
立ち上る焼肉の煙りと匂いが1キロも先までガンガンと響いて居た
様だ。
健ちゃんは私を『移住してくる時、船の中で先生をしていたお兄ち
ゃん』と紹介してくれ、『今はサルタ州で農場の支配人をして居る』
と彼に説明していた。

これが後々まで役に立った。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム