2012年6月17日日曜日

『ゲバラのゲリラ残党を討てー!』

ゲバラ残党ゲリラ追跡の思いで(21)

畑が近くなると犬達が耳をそばだてて音を聞いていた。
河向こうの岸辺で、水揚げエンジンの音が規則的に聞えていた。
ジャングルの外れに来ると、そこには昔の製材所の跡が有った。
今は何も残ってはいないが、昔の森林からの切出しが盛んな時代

はここでも製材されて、トロッコで町の駅まで運ばれていた。
今ではそれも取り外され何も残ってはいない。昔は牛に引かれた
丸太がジャングルから切出され、遠くはヨーロッパまで送られて
いた。1890年代の鉄道全盛を迎える時代で鉄道の枕木として

鉄木などの大量の切出しが行なわれて、賑やかな時代があった。
今では当時をしのぶ建物はレンガ作りの売店であつた建物と倉庫
が残っていた。そこに新しく山に植林された木と、かなり大きく
育った鉄木の密伐採を監視する為に、管理人が住んでいた。

昔から製材所で仕事をしていたインジオで、この地方を知り尽く
した老人であった。彼は歳を取り管理人の仕事に余生を掛けて
居た様だ、少し若いワイフと仲良く2匹の犬と暮らしていた。
訪ねると必ずマテ茶を出してくれ、ナマズの干物などを土産に

持たしてくれた。私もトラックで町に出る時は良く乗せたり、
頼まれて買物をして来てやった。お互いこの様なジャングル
での共同体の生活では、ポッリ、ポッリとまばらにジャングルの
中に住んでいる社会では全部友達で、飼っている犬達も同じで
あった。

ジャングルが切れた所が見えて来た。犬達がそわそわして喜んで
管理人が住んでいる家を見ていた。遠くで犬が吼える声がして
こちらの犬達も応えていたが、ラバもいなないて嬉しそうにして
尻尾を振っていた。管理人が家の外に出てきて我々を歓迎して

迎えてくれ、奥さんも「マテ茶を飲んで下さい」と早速に木陰の
涼しい場所に場所を作り、訪ねて来た犬達にも乾し肉を与えて
水を用意していた。犬達は冷たい井戸水をバケツに貰うと、廻り
で仲良く飲んでいた。隊列の警備の兵士達もラバの荷物を降ろして

休憩に入り、自分達もマテ茶を冷たい水で飲み回していた。
ジョアン大尉も「一時間の小休止とする」と言うと、ラバ達に
水を与え、飼料を袋から出して与えて休ましていた。木陰の横に
ライフルが組んで立てられ、その横でラバが気持ち良さそうに

水を飲んでいた。全てが平和な風景で有ったが、このお茶の
休憩が終ると別々に別れて帰途に付く、お別れの時間でも有った。
私はルーカスとルイスを物陰に呼んで、今回のお礼を支払った。
彼等は多めに貰った日当に感謝して、喜んでいた。

そして管理人から分けてもらったタバコと菓子を兵士達に配った。
彼等は喜んで感謝の言葉を私に言ってくれた。管理人のワイフが
チーズパンを焼いて持って来た。美味しい香ばしい焼きたての
香りは食欲をそそって、休憩時間が一層に楽しいものになった。

一番先に兵士達が荷作りすると、最後のあと僅かな駐屯地までの
行軍の準備を済ませてしまった。我々はジョアン大尉と固く握手
して再会を約し、兵士達とも手を振って別れの挨拶とした。
隊列が動き出して、微かな砂埃が上がった。ラバがいななき
ラバも喜びの表情が感じられた。

直ぐに隊列は木立の中に消えて行った。我々も帰宅の時間であつた
が、カウアン氏から呼ばれると、包みが開かれ中からライフルと
散弾銃が出てきた。彼は「これはゲリラが隠していた中に有った」
と言って「押収品の中から内緒で大尉から貰った」と言った。

軍用ライフルではないので、どうせ廃棄さえれるのであるから、
旧式な銃は不用だと言っていた。しかしインジオにすれば貴重な
銃であった。ルーカスに散弾銃、ライフルをルイスが貰った。
彼等は喜んで、旧式な銃であったが財産である。彼等は喜んで
それを持って帰宅に付いた。

カウアン氏は私には中々手に入らない拳銃の弾を2箱渡して呉
れた。ジョアン大尉の気配りに感謝していた。何も話さず淡々と
若い兵士達を連れて隊列の先頭を歩いて行った大尉を思い出して
いた。ベアトリスが私に「今度の姉の結婚式には是非来て下さい」

と誘ってくれ、私のほっぺたに軽くキスをすると、父親とラバを
連れて歩き出した。犬も嬉しそうに後を付いて消えて行き後は
私だけが残った。私はカービン・ライフルから弾倉を抜くと、
カバンにしまい、管理人にお礼を言うと、ボコボコに乾いた

道を歩き出した。道の両側にトマトの畑が広がり、遠くで水揚げ
ポンプの音が響いていた。ふと空を見上げると青空が何事も無
かった様に広がっていた。

次回に総編を書いて終わりに致します。

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