2012年6月5日火曜日

『ゲバラのゲリラ残党を討てー!』

ゲバラ残党ゲリラ追跡の思いで(16)

朝方に冷えて来て、自然と目が覚めた。
夏用の寝袋では、大陸の寒暖の差が大きい内陸部では寒い様な感
じで有った。目が覚めてテントから出て、用をたして来た。
警備の若い兵士が二人起きていた。一人は少し離れた所の高台で
毛布をかぶってライフルに着剣して立っていた。

もう一人はテントの横で、焚き火の火を見ていた。
空はまだ月がこうこうと輝き、夜明け前の一番暗い闇と言う感じ
で、近くのジャングルが黒々と静まり返っていたが。
犬達が起きて来て、私の前に座り尻尾を振って挨拶していた。

犬達に乾肉を袋から出して与えた。それぞれ犬達は前足で押えて
かじりだした。若い兵士がマテ茶を勧めてくれた。
大きな薬缶が焚き火の上に釣るして有り、湯気が出ていたが何か、
ホットした感じになって熱いお茶を飲んでいた。
冷えた体が暖まり、心寂しい感じも無くなった。

昨日の戦闘はウソの様に感じられていたが、現実は迫撃砲の弾を
入れてあった木の空箱を壊して作った墓標が並んでいるのが見え
、空しい感じが白木の板に感じられた。
それはゲリラを復讐心に燃え、追いかけて来た事が少し悔やまれ
た感じで、何か空しさが心一杯に広がって、殺し合いの残酷な

場面を思い出していた。若い兵士達は警備の二名を除いてまだ
テントに眠り込んでいた。シーンとした野営地に犬達がかじる
乾肉の音が響いていた。私が子供の頃、終戦直後の焼け野原の
風景が突然思い出された。どこまでも連なる焼け野原の風の音と
今の野原の風の音が同じで、そうさせたのかも知れなかった。

私は黙り込んで、暖かいコップを両手に挟んで、ポツーンと
思い耽っていた。ルーカスとルイスが起きて来た。
彼等は近くの川原に下りて行き、河の水で顔を洗い、タオルで
身体を拭くと、汗で臭くなった下着を交換して、今日一日の
身支度をしていた。私も彼等に習い、顔を洗い、下着を交換して
冷たい河の水で気持ちもさっぱりとさせた。何か元気が湧いて
来た感じで、彼等にも熱いマテ茶を入れてやった。

ルイスはお茶を大地に垂らすと、なにか口の中でつぶやきながら
祈っていた。そして、白木の墓標に向かって十字を胸の前で切る
と、死者の霊にも祈っていた。朝日の輝きがジャングルの隙間か
から注し込み、夜明けが今日の輝きとなって野営地を照らした。
 では次回をお楽しみに、

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