2012年5月8日火曜日

私の還暦過去帳(241)


昔のことです・・、
アルゼンチンのサルタ州エンバルカションの町はずれに住んで
農業をしていた時でした。
その季節はトマトの収穫時期で、一日、多い時は2回ほどトマト
を町まで運んでいました。農場までは長距離の大型トラックが入
ってくることが出来なかったのです、2ヶ所も急な坂があり、
大型トラックではブルドーザーが押して開いた道だけの山道では
すれ違いも出来なかったのでした。

朝の内に一台、午後の遅くに一台満載でトマトを町に運んで行き
ました。運転手が溜まりのバールに行くと、タルタガールから来
たトラックの運転手が、『お前の同国人らしき男を乗せてきた』
と教えてくれました。柔道をしている無銭旅行者のようでした。

駅の近くのバスターミナル辺りで降りたと言っていましたので、
近所でしたので興味があり探しに行きました。
すると知り合いのインジオが、『近くの酒場兼、レストランの店
で日本人が喧嘩をしてチャコ地方から来た現地人を柔道で投げ飛
ばした』と教えてくれました。投げられた相手は仲間を探しに

行ったと話していたので、暗くなり危険と感じて、急いでその店
に歩いて行く途中で、4名ほどの現地人の労務者がシャツで山刀
を隠して、中の2名はかなり酔っている様で立ち話をしていました。
直感で危ないと感じて、店に飛び込むと、がっしりとした男が椅子
に座り、ビールとハムのサンドイッチを食べていました。

手短に訳を話して、直ぐに町を出るように勧めました。私の気迫に
驚いたのか神妙に聞いていました。
町では、どこにも泊まる様なホテルは今時の収穫時期には有りませ
んので、それも教えました。あと僅かな時間でブエノスまでの長距
離トラックが出発しますので、汽車も無いし、バスも近所までしか

走りませんので『怪我をしたり、殺されたくなかったら、私の言う
事を聞いてくれ』と頼みました。相手は事の重大さに気が付いた様
で、私が紹介するから長距離トラックに乗せて貰い、すぐにこの町
を離れる様に勧めると、納得して了解してくれました。
現地人の労務者達がいる場所を避けて歩き、長距離トラックの駐車
しているバールの前に来て、アントニオのトラックに乗せてもらう

様に交渉して、アントニオには迷惑代としていくらかの金を握らせ
てOKを取りました。店でミラネッサのカツを挟んだサンドイッチ
を弁当に作って貰い、それを持たせてトラックに乗せました。
トラックは走り出したら、かなり停車無しで飛ばします、相手は神
妙にしてカバンをトラックの寝台下の物置に入れると、私に握手し
て『世話になりました・・・』と言ってくれました。

時間にしたら30分ぐらいの身近な時間です。名前も聞いたのです
が今では覚えても居ません、『袖すり合うのも多少の縁』ですが、
同国人として、何か日本人の旅の若者を助けたかった思いでした。
その当時、喧嘩で負けて仕返しに襲い、殺された相手の人間を何人
か知っていたからでした。警察の力が弱くて、隣国のパラグワイや
ボリビアなどに逃げると、それで迷宮入りでしたから・・・、

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