2012年3月23日金曜日

私の還暦過去帳(203)

私が夏になると思い出すことは、子供の頃にサトウキビを作りそれ
を切って来て、終戦後の甘味食品の不足から、甘いサトウキビの茎
をガリガリと、かじるのは楽しい遊びでした。

舌先がザラザラになるまでかじっていました。甘い汁が口の中で
溢れる様になります、友達と郷里福岡の田舎町で楽しんだ思い出です。
46年前に南米のアルゼンチン北部サルタ州の近くでは大きなサトウ
キビ栽培をしている場所が有りました。

製糖工場も有りまして、戦前のかなり古くから大規模に生産している
様でした。その場所はフフイと呼ばれていましたが、国道の両側に
見渡す限りのサトウキビ畑が広がって、灌漑用水路も整然と作られて、
設備が完備している事が分かりました。

サルタ州の農場で生産したトマトをブエノス・アイレスまで輸送して
いた時でした。フフイに近ずくと、天を覆う様な黒煙が見えます、そ
れも30kmも離れた所からも見えますので、その規模が大きな事が
感じられます。話には聞いていましたが、収穫前にサトウキビの葉を
焼いて茎だけにするのに焼くのです。

その後は人力の請負でサトウキビを切り出して、工場に出荷します、
かなりの人手を使用するので隣国のボリビアから出稼ぎ労働者が沢山
来て働いていました。丁度お昼時のランチ時間で国道の道端に沢山の
労働者が並んで家族と食事を始めていました、側には簡単な屋台も出
ていました。

トラックを運転して来て、スピードを落として屋台の食べ物を見ると
カツを揚げて、それをパンに挟んだサンドイッチを見つけて、食べた
くなりトラックを停止して注文しました。側では沢山のボリビア人達
が並んで、中には家族連れも沢山居ました。おなべを囲んで何か椀に

注いでいましたが、注文のサンドイッチが出来るまで近所を見ていま
した。皆はかなり煤に汚れて黒くなっています、食事を終わり、自分
の仕事に使う山刀を磨いでいる労務者もいました。
近くの畑では監督が馬に乗り、灌漑用水の流れを監視していました。

きちんと皮の帽子をかぶり、貫禄のある風格が感じられ、労務者達
が丁重な挨拶をしているのを、馬のムチを軽くあげて挨拶を返して
居るのを見て、昔からのしきたりを感じました。

サンドイッチが出来上がり、そのソースの美味しい香りを今でも思い
出します、運転を交代してもらい、トラックを発進して助手席で食べ
ながら周りを見ていました。

無蓋の大型トレラーに詰め込まれた様な感じで、労務者が煤に汚れて
乗っていました。どこか他の畑に移動すると思います、僅かな手荷物
と手にはサトウキビを切り出す山刀を持って乗っていました。
畑では灌漑用水を流す労務者がスコップで水を導いて流して居て、手
を揚げて挨拶しています、労務者を乗せたトレラーが動き出すと、

歌声が湧き上がり、何か唄い出しました。その歌声を聞きながら、動
き出したトラックから彼等に手を揚げて別れを返しました。
ジーゼルエンジンの音に歌声も直ぐにかき消され、果てしない緑のサ
トウキビ畑の波に見えなくなりました。

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