2011年10月2日日曜日

私の還暦過去帳(65)

47年前の飛行機の話です、その頃は飛行機などは贅沢で余ほどの金持
ちしか乗れませんでした。
日本の羽田からブラジルのサンパウロまで夫婦二人で乗ると田舎で家が
一軒買える値段でした。

羽田からアラスカのアンカレッジ経由でニユーヨークに飛び、それから
フロリダ経由でサンパウロまで飛んで行くもので、だいたいニユーヨー
クで一泊していました。
そんな時代でしたが、私が搭乗したのはパラグワイの首都アスンション
からブラジル国境のポンタポランまで飛ぶ、プロペラ機でした。

私が生まれて初めて搭乗して飛行機は戦争中の輸送機で、第二次大戦に
大活躍したDC3のプロペラ機でした。
中はまったくそのままで、機体の両側にキャンバスのシートが吊り下げ
られて、乗客はそこに座っていました。
真中は荷物が積み上げられ網で押さえてありました。

戦争中は落下傘部隊で使用されたのでしょう、降下用意のランプもその
ままで、飛び降りる命紐をかけるワイヤーもまだ残っていました。
戦争映画で見たままです、降下ランプは二つ有りまして、青になったら
一斉に兵士が降下して行ったと思います。
エンジンの音も、アイドリング時はパカパカと乾いた音で、かなり排気
の煙りも出ます、「グワー~!」と全開のエンジンになるとうるさい事、
耳がびりびりします、滑走始めるとガタガタとまるで田舎道を走ってい
るみたいでした。

すると「スーーー!」と流れる様に景色が動き始めると、静かになり、
アッと言う間に飛び上がって上空を飛んでいました。
パラナ河の濁流を見ながら、のんびりと飛んでいました。
スチワーデスの女性は、魔法瓶のコーヒーを乗客に出すと自分も座って
新聞を読んでいました。

まばらな乗客を見ながら、戦争中は迷彩服の落下傘兵が銃を持ってあの
キャンバスのシートに座って緊張して敵地に到着するのを待っていたと
思いました。
小さな窓から地上の動きがかすかに見えます、私もフト~!思わず!、
輸送機がエアポットに落ちて、ガクンー!とショックを感じた時、高射
砲弾の炸裂する錯覚を覚えました。

単調なエンジンの音に眠くなり、ウトウトとして昔見た映画のシーンを
思い出していましたが、時代を巻き戻して鮮やかにそのシーンが蘇り緊
張した覚えが有ります、そんな事をしている内に到着して蟻の巣をブル
ドーザーで綺麗にかたずけただけの赤土の滑走路にガタガタと到着した
記憶があります、それとすごい土ぼこりがしていたのに驚いた事でした。

飛行場の外に出てみると、そこにはまだA型フォードが幌付きで走って
いたのも驚きでした。
そんな時代の空の旅でした。

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