2011年9月29日木曜日

私の還暦過去帳(62)

ある時、農場で沢山のトラブルが起きた事が有ります、毎日罠をしかけ
てビスカッチャと言うウサギと狸の合いの子の様な動物を捕って、食料
にしていました。

週に二度ほど捕まえると、これで肉は心配有りませんでした。
それが全部盗まれていました。

それからトマト畑の盗難が凄く多くなりまして、誰か専門で盗んで居る
事が分り、インヂオに捜させましたが、直ぐに犬を連れた、若い男と言
う事を知らしてくれました。

ジャングルでは犬はレーダーとして、あらゆる事に第3の目を持って行
動しているのと同じです。プロの仕業です、賢い犬の様で、此方がどん
なに上手く隠していても直ぐに捜して無くなっています。生活が掛って
いますので、インヂオに行動のパターンを捜させて、大体どこから入っ
て来るか見当をつけて見張る事にしました。

私は高性能のライフルを用意して、それにはスコープも付いていて、か
なりの遠距離から撃てます。炎天下のトマト畑の近くの茂みに隠れてい
ました。
昼休みは、2時間は休みですから、畑に誰も居ませんので見張るのは真
剣です、私もいいかげんくたびれた時です、犬があたりを用心しながら
出てきました。

首を上げて、匂いを捜しています。耳も立てて音を探している事が分り
ます。150mは有りますので犬には分りません、その後に若い男が出
てきました。
ジャングルと畑の境です、男はトマトをドンドンと袋に入れています、
かなりの量です、トマトの値が出て町で直接売ればかなりの値段になり
ます。茂みの中で私はライフルの安全装置を外して、いっでも撃てる様
にしました。

スコープの中の+のサイトに犬の前足の心臓部分を狙いを付けて警告の
為に犬を撃つ事にしました。
ここからでは犬を撃つ事は簡単な事です、6倍のスコープで覗く目標は
手が届く様に見えます。犬がいなければ男は何も出来ません、側の犬が

撃たれる事は、あきらかに脅しと言う事が相手に分ります。犬ではなく
て、「お前を撃つ事が出来るぞ~!」と言う意思を分らせる事が出来ま
す。犬が立ち止まって男を見ている時、ライフルを撃ちました。
「ガ―ン~!」と言う音と同時に、犬が男の前にもんどり打って倒れて
行きました。

それだけで後は静まり返ったジャングルの中で木霊が長く鳴っていまし
たが、男が伏せた畑の畦のすれすれに、もう一発撃ちました。
畑の土から土煙が上がり、後はシーンとして何も動く物は無く、音も聞
こえませんでした。

後でインヂオに偵察に行かせたら、血だまりの土があったと、その他は
何も無かったと言って来ました。
それからは、ピタリとトラブルが止まり、何事も無く仕事が出来る様に
なりました。

たしかに犬は男が持って逃げた様です、何も捜しても有りませんでした
が、捨てられたトマトが入った袋だけが畑に残されていましたが、ライ
フルを撃った後に、ふと見上げた空の青さが今でも思い出されます。

生きると言う事に激しい環境の世界で、自然だけは何も変らずに動いて
いる思いを心に感じた日でした。

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