2011年9月28日水曜日

私の還暦過去帳(61)

だいぶ昔の事です、36年ぐらい前でした。
リオ、デ、ジャネイロからアルゼンチンのブエノス、アイレスまで国際
バスが走っていました。

3日近く掛ります、サンパウロから乗車していました。バスは沢山の人
が乗車しては、又降りて行きます。運転手は見習いを入れて3名いまし
た。
舗装道路ではかなりのスピードで走ります、たしか、レジストロと言う
日本人がお茶を栽培している所を過ぎて、夜道をかなり走った所でした。

朝早く、ほのぼのと明けてきて空がまだ薄赤く染まっている頃でしたが、
トイレ休憩で10分間と言って停車しました。
店はまだ開いていなくて、バス停の事務所だけが開いていました。
私はバスのトイレは汚いので、そこの事務所の横に有る、トイレに入り

ましたが、そこで掃除をしている人がどうも東洋人で、掃除もブラジル
人とは思えない、きちんと整理されて、たいした事もないありふれたバ
ス停のトイレでしたが、何か違う感じでした。
水道の蛇口も綺麗に磨かれて、入り口の横には花も咲いており、管理人
の人柄が感じさせられる所でした。

町外れの長距離バスのバス停にしては、余り見かけない綺麗なバス停と
感じましたが、トイレを済ましてバスに戻ると運転手がタイヤを見て騒
いでいます、釘が刺さっていると話しています、タイヤの交換をするか
ら、最低30分は停まっていると乗客に言って交換作業を始めました。

そうする内にコーヒーショップも開いて、ぞろぞろとお店に入って行き
ました。
乗客は「それではここで朝食とするか~!」と話しています、私はトイ
レを掃除していた東洋人が気になり、サンパウロの友人に貰った日本の
週刊誌や、月刊誌を全部読み終えていましたので、バスからそれを抱え
て、トイレのゴミ箱まで持って行きました。

年配のその人はまだ掃除を続けていましたので、目立つ様に雑誌を「ド
ン~!」とゴミ箱の横の台に置いて、大声で、「誰かこんな日本語の本
を読む人がバス停にくればいいのだが―ー」と言って、置いてきました。
私も朝食を注文して、先にコーヒーを飲んでいました。
窓から見ていましたら、その年配の管理人が掃除道具を横に置いて本を
めくっています、やはり日本人の方だと感じました。

運転手は乗客がほとんどお店で食事や、コーヒーを飲み出したので、
「1時間の休憩です―!」と告げると自分もコーヒーを注文してテーブ
ルに座ってしまいました。
早めに朝食を済ませて、管理人が本を抱えて消えた事務所の裏に散歩に
行きました。

少し歩くと林のような木がありそこに、こじんまりとした人家が有り、
畑も綺麗に野菜が作られていて、廻りではニワトリが囲いの中で餌を食
べていました。
どこか日本の田舎の感じがする風景で、畑には大根も植えられている事
が分りました。

畑のそばで管理人が、その方の奥さんらしき人に本を見せています、覗
き込む様に見ていますので、私は何か安心した気持ちでした。
こんな見も知らない土地で、のどかな日本的な風景を感じて、幸せそう
な老夫婦を見て、心安らぐ感じを受けてバスまで戻りました、どこに住
んでも、生活しても生の営みは、平和の安らぎが有れば、お金では買え
られない何物かが有ると心に感じました。

のどかに時を告げるニワトリや、老夫妻の足元のじゃれる猫達を遠くに
眺めて、ここまでにたどり着く長い道のりを思うと、人それぞれに歩ん
だ長い道のりを、「人生、幸せとはーー、」出発したバスの中で考えて
いました。

このバスもまた人生の縮図だとーー、誰か退屈しのぎにギターを弾き始
めて、その曲を聞きながら眠ってしまいました。

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