2011年9月24日土曜日

私の還暦過去帳(58)

46年も昔になります、
その当時は私はアルゼンチンの奥地で農業をしていました。
トマトの収穫も山を越えて、やっと一息ついた時でした。

それと言うのは、ブエノス、アイレスに近い場所での出荷が始まったの
です、距離的、コスト的、野菜ですから鮮度も大切です、全部負けてし
まいますので、そこでバトンタッチして、近所の市場のみ出荷します。
しかし狭い市場ですので殆どがトマト、ケチャップの工場行きです、私
の農場は最後まで残り、出荷していました。

有る時、町のバーでケチャップ工場の支配人と話しをして、一箱、15
キロが120ペソで引き取ると話しが決まりました。
朝早く、使用人に40箱ばかりトラックに積み込みをさせて町に買い物
がてら、配達する事にして、出かけて行きました。
町外れの国道から、私道を100mぐらい入った所に小さな工場があり
ました。

事務所に着くと、支配人が出てきて、「80ペソしか買えない」と言い
ます、「かち~ン!」とトサカに来ましたが、他ではもう収穫していま
せん、近所の出荷状況を良く知っていますので、「120ペソと話しが
決まって、納得できないーー」とごねます、あたり前ですーー、使用人
がトラックからすでに10箱ばかり降ろし始めています、直ぐに中止さ
せて、もう一度交渉しました。

中々しぶとい返事ですーー、「ダメーー!」「そうかい~!」大声で使
用人に声を掛け、トマトを又、積み戻しさせました。
慌て出したのは支配人です、いっもの古い日本人では直ぐにあきらめて
置いて行くのにと、考えていたと思います。その手には乗りませんーー、
細い目をもっと細くしてーー、「ジロリ~!」相手の目を見て、無言
のままーー、トラックのエンジンを掛けて工場を出ました。
国道の入り口の前で車を止めると、使用人に声を掛けて10箱ばかり
捨てさせました。

真っ赤に熟れたトマトです、ケチャップにすれば最高に美味しい物が出
来たはずです、支配人と従業員が奥の工場の前で見ています、トラック
を前後に移動させて、タイヤでトマトペーストを作りましたが、もった
いなそうにインジオが欲しそうに見ています、夫婦もので、子供も二名
連れています、背中にカゴを背負って、わずかな買物が入っていますの
で、町からの帰りみたいです。

車を止めて、「欲しいか~?」「シーーー!!!セニョ~ル!!」使用
人に言って、一箱ずつ夫婦の頭の上に乗せてやり、空箱は必ずもってこ
いよーー、と念を押してくれてやりました。
新品の出荷箱を作るには150ペソ、その保証金は100ぺソですから、
念を押したのはあたり前です、「町外れの雑貨屋に夕方まで居るから、」
と声を掛けておきました。

工場の支配人は、私がいっも座席の下には散弾銃、ベルトの後ろには使
いなれた拳銃を持っている事を知っています、決してトラックには近ず
きません、支配人の弟達とつい最近酒を飲みながら、拳銃の標的射撃を
して、6個のビールの詮を5m離れて全部、アッと言う間にはじき飛ば
してしまった、凄腕の射撃を知っているからです、町外れの雑貨屋で腰

を落ちつけて、残ったトマトをどうするか考えていましたがーー、
この際、最後ですから配る事にしました。
ドイツ人の肉屋、ソーセージが美味しいお店です。車を止めて、使用人
が二箱店に置きました。
すると奥さんが飛んで来て、もっとくれですーー、「あいよ~!」3箱
追加です、トマトソースを作るそうです、何とーー、お土産は、ソーセ
ージが2キロぐらい、ワインが二本でした。

駅前の露天のボリビア人のおばさんに捕まり、安く売ってくれです「あ
いよ~!」ここでも大判ぶるまい、一箱80ペソです、喜んで、三箱買
ってくれました。
いっも美味しいパンを出してくれる、パン屋の女将さんに、ここも二箱
です、お返しはチーズパンでした。

小さな町です、友人の家などアッと言う間に配ってしまい、町外れの雑
貨屋でビールを飲んでいましたら、まだ残っているトマトを欲しそうに
見ているインジオに、少しずつ配ってしまい、木陰でトマトの空き箱を
ベットにして、昼寝をしていました。

目が覚めると、空箱が6個とナマズの干物が少しトラックに置いて有り
ます、さっきトマトをやったインジオが空箱を余計にもって来たのです
ーー、家に有った物をもって来たと思います。空箱を返品すると400
ペソの保証金を返してくれます。「ありがたや~!」です。夕方になり
まして、帰る頃には、空箱も全部帰って来て、余計に15個ほど有りま
した。

お土産や貰いもので差し引、ほとんど損にはなりませんでした。
しかしーー、工場ではトマトが入らなかったので、用意していた仕事が
出来ずに大事だった様です、私の知らない事ですーー。

それからは、一度決めた値段は必ず払ってくれました。
それから、私のことを純粋日本人、サムライと言ってくれました。

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