私の還暦過去帳(68)
だいぶ昔になります、私が管理していたレントハウスに居たテナントで
した。べトナム戦争で負傷して、少し片腕が曲がらない様でした。グリ
ンベレーと言われた特殊部隊にいた元軍人で、少しアル中の様に飲んで
いました。
激戦の中で戦って来た兵隊稼業で、心もかなり傷ついている様でしたが、
根が陽気な男で、ビール片手に私が仕事に行くと、よく話しに来ました。
私が東洋人の顔で、何か親密な感じがあつたかも知れません、ベトナム
時代はサイゴンに恋人も居たようです。
ベトコンのテト攻勢が有った時に、市街戦に巻き込まれて、迫撃砲弾が
恋人の居た家に直撃して、丁度荷物を取りに帰っていた恋人はその時に
死亡したと話していました。
結婚を誓っていたと言って居ましたが、サイゴン陥落、その前に負傷し
て、日本の厚木基地近くの病院に入院していたと話して居ました。
腕が曲がらなくて負傷兵として、除隊になつたそうですが、サイゴンに
は二度と戻る事はなかったそうです、ベトナムのジャングルで待ち伏せ
攻撃をしたとき、ベトコンが撃ちまくる突撃銃の弾がジャングルの地面
すれすれに飛び交うすさまじさは、今でも忘れられないと言っていまし
た。
ビールを片手に、彼がしみじみと『戦争なんてーー、愚の骨頂~! 生
き残っても、すべて人間の心まで破壊してしまう!』と話していた事が
忘れられません、現在、アフガンでの戦争で多くの若者の命と、心まで
殺し、破壊していると思います。
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