2011年9月6日火曜日

私の還暦過去帳(45)

貴方は奇跡を信じますか、このお話は前回(44)の続きです。

ある所まで来ると、そこから先は誰も歩いた足跡が無かったそうです。
爆死した死骸が腐りかけて、そこから先は水溜りと最悪な地雷原の様子
を見せた土地で、そこに座り込んでしまい、追いかけて来る兵士から身
を隠していたそうですが、その時爆死した人の身の近くに砕けた仏像の

一部が有って、それを手に取り必死に祈ったそうですが、子供の声を聞
き付けて足跡を探して、その足跡を伝って来た兵士が発見して、今にも
銃を構えて、狙いを付けて溜まり水に半身浸かって隠れて居る場所を探
して、少し離れた所からポルポト兵士がまさに撃とうとしたところ、仏
陀に祈った奇跡が起りました。

カンボジアから難民でアメリカに来て、英語を覚えてアメリカ社会に溶
け込んで仕事をしていた夫婦ですが、真の仏教徒らしくその態度から感
じられました。
彼は最後と感じて、ポルポト兵士が狙いを付けて、まさに撃つ瞬間、妻
と子供に覆い被さって、泥水に伏せたそうです。

「バ~ン!」と銃声がして、背中に背負っていた荷物に弾が命中して、
パラパラと降り出した大粒の雨の中で、これで最後と観念して、ドロの
塊を手にポルポト兵士に投げつけたそうです。
すると、そのドロの塊を除け様として、兵士がバランスを崩して足を滑
らせて、銃を片手に草むらに転んだ瞬間ーー、「ドカ~ン!」と地雷を
踏んだのか大爆発が起きて、半身が吹き飛んでしまった。

雨は激しく降り出して、雷も鳴り出して、激しい雨のしぶきで視界も近
くがぼんやりしか見えなくなり、そっと身を起してタイ側の国境の方を
見ると、そこに誰か手招きする人影が有り、正面ではなく右側の木立の
ジャングルの外れで直ぐ側でした。

土砂降りの雨の中、泥水があふれて、ぬかるみの荒地を左に子供、右手
にワイフの手を引き、死に物狂いで歩き出したら、人影がゆっくりとう
なずいて、佇んで居るような感じで、それをめがけてがむしゃらに歩き、
たどり着いて見ると、そこには何も無くーー、見廻すとタイ側の方向
に通じる道が遠くに微かに見えて、地雷原を乗り切り、生き長らえた事
を知ったそうです。

安心して、ワイフの手を離したら、そこから仏像の破片がポロリと落ち
たそうで、全然自分が握り締めていたとは信じられ無かったと話してく
れました。
綺麗に洗って泥を落としてポケットにしまい、それからは肌身放さず、
アメリカに難民として移住して来てからも、一度も肌から放したことが
無いと言っていました。

彼は仕事が終り、別れの時にその仏像の石片を手に私と握手して、「貴
方が心平和で、幸せな人生で有ります様にーー」と、祈ってくれました。
お互いに合掌して別れましたが、彼が今も元気で平和な家庭をこのアメ
リカでいとなんで居ると信じていますーー。

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