2011年8月16日火曜日

私の還暦過去帳(31)

この話しは、前回の(30)の続きですーー、

人はそれぞれ一つの人生を担って歩いていると言いますが、
重き荷や軽い荷など、それぞれの人生の終着駅を目指して絶え間無く
歩いて行かなければなりません。
ユダヤ人の老人と出会って話をする様になってから、自分の人生感
が少し変った様です。彼の話は人の心を揺さぶり、衝撃と感動を
人の心に与える力が有りました。

ポーランド系、ユダヤ人としてワルシャワの町で生まれたそうですが
ナチ、ドイツがポーランド進攻してきたから全てが変ったと言って
いました。
全てのユダヤ人はゲットと呼ばれる居住地に押し込められて、
そこから強制労働などに駆り出されて行ったそうです。

ある時ドイツ軍から、トラックに乗せられて、強制労働に連れ出されて、
昔のユダヤ人の金持ち達が住んで居た場所で、家財道具の整理
や、隠匿物資の捜索を手伝わされたそうです、ある屋敷に着いたら

ドイツ軍将校が中庭の空き地に拳銃を持って立っていたそうですが、
その足元には射殺されたユダヤ人の家族が並んでいたそうです。
隠れて、どこかに潜んでいた家族の様でした。

そのようなユダヤ人はその場で射殺されて行ったのです。
両親と娘が二人、頭を後ろから打ち抜かれて血を流して死んでいた
その遺体をトラックに運び、かたずける時に娘二人はあきらかに
ドイツ兵の強姦を受けた後がなま生しく残って、目をそむけて
遺体を運んだと話してくれました。

まだほんのりと温かみが残る遺体だったと話していましたが、
その話をしている時に、彼も泣いていたのを覚えています。
そこをかたずけて次ぎの屋敷に行くと、そこでは軍用犬を使って
潜んでいるユダヤ人の捜索が行われていました。

屋敷の離れで使用人が住んでいた様な家を探していた時、犬が吼え
誰か隠れている事が分り、ドイツ兵が銃を持って取り囲み、
捜索を始めると直ぐに親子4人の家族が連れ出されて来ました。

子供は娘とその弟の様で、両親は子供をかばって命ごいをして、
ドイツ兵の前で地にひれ伏して、涙ながらに懇願していましたが、
情け容赦無くーー、まず両親が銃殺の為に庭に立たされると、
男の子供が泣きながらそれを止め様として、その場でまず射殺されて
しまい、直ぐに同時に両親も並んで銃殺されてしまいました。

残った若い20歳頃の娘は死を覚悟をしていた様ですが、
ドイツ軍将校は何を思ったのか、強制労働で連れ出されて来た
ユダヤ人を指差して、この娘を犯す様に命令しましたが、
誰も娘を前に行動を起す人は無かったそうです。
将校は一人の初老のユダヤ人を指差すと、「お前が初めにやれーー」
と指名して命令しました。

娘は家の中に連れこまれて、下半身裸にされて指名されたユダヤ人
の背中を押して犯す様に再度命令したが、初老のユダヤ人はその
将校の顔につばを吐きかけて、拒否したそうです。
その場で射殺されてしまい、次ぎはこの話をしてくれたユダヤ人の
番だったそうです、彼は死を覚悟して動かなかったそうですが、

将校は「あと20数える内に行動を起さないと、射殺するーー」
と言って数を数え始めたそうですが、すると、
娘は彼の手を取って、「生きなさいーー、どんな事をしても生きな
さいーー、」と小声で早口のポーランド語で話すと彼をソファーの
前に連れていき、生きる為の、生き残る行為を彼にさせたそうです。
しかし緊張と、恐怖の前では真似事だけで、ドイツ兵を喜ばす
だけだったと話してくれました。

その時オートバイに乗った伝令が来て将校に、近所でユダヤ人が
銃で抵抗して、死傷者も出ていると話すと、「遊びは終ったーー」
と言って、死体をかたずける様に言って、四人の死体をトラックに
乗せると、「お前達は地下室に入っておれーー!」と命令して、
真っ暗な電気も無い部屋に入れられて、上から蓋をかぶせて鍵を
掛けられて、放置されてしまったそうです。ドイツ兵は応援に

出かけてしまい、暗い部屋で遠くで聞こえる銃声を聞きながら
動かなかったそうですが、娘は真っ暗な中で彼にしっかりと抱きつき
緊張と狂気の嵐の時間を耐えていたそうですが、強制労働に連れて
こられて残った彼を入れて三人と、娘は何一つ話さず、真っ暗な

中でジーッと耐えていたそうですが、時間が経つほどに緊張も
緩み、抱いている彼女の体温も感じ、彼女の皮膚の感覚も感じて
来て、いっしか、しっかりと彼女と真っ暗な地下室で抱き合って
いたと話してくれました。

彼女は遅くなって戻って来たドイツ兵に外に連れ出されると
庭の中に立たされて、銃殺されてしまったと涙ながらに話して
くれました。

地下室から出る時、「天国で貴方の子供を育てるからーー」と言って
出ていったそうですが、撃たれる直前に手を上げて投げキスを
して倒れて行ったと言う事です。

彼は独身だと言っていましたがーー、
   
「一瞬の時間に人生のすべての情熱を燃やし尽くして行く人と、
 一生連れ添っても、単なる同居人で人生を終る人も居る」、

と彼が話したことを私は、一生忘れる事は
出来ません、愛とは何かーー、愛するとは何かーー、
今でも考える事が有ります。
彼とはその後二度と会う事は有りませんでした。

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