2011年8月1日月曜日

私の還暦過去帳(23)

 私の南米生活もかれこれ46年もの前になります、時間が経つのが
早いので、ふと~!思い出す事が時代的にどこで有ったか戸惑う
事が有ります、しかしーー、自分の心の画像にしっかりと焼きつい
た景色は迷う事無く思い浮かべる事が出来ます。

ある晴れた日でした。
直ぐ前の日に雨が少し降りまして、空には雲一つ無くて、青と言う
より、濃紺の感じがする空の色でした。

近くには一番近いと言っても180キロ離れた所に小さな精油所が
有るだけで、工場は同じく190キロぐらい離れた精糖工場が有り
ましたが、季節的に稼動していません、砂糖きびの収穫時期だけで
した。

インジオが薪にする木々を取りに行く小道を伝って歩いていました。
持っているものは水筒と、ズボンのベルトに差した拳銃だけで、
いつものインジオ老人の案内で歩いていましたが、彼の話しを
聞きながらゆっくりと歩いていると、一部何も生えていない所に出て
来たら、そこに大きな木が一本だけ立っていましたので話しを聞くと
「オンブー」と言う木だそうでした。

別名、水木と言われて、どんな山火事でも必ず残る木でした。
その地域はインジオが薪にして、ほとんど伐採してしまったそうで、
残った木が薪にならないオンブーの木だけ残っていました。

少し小高い斜面を登ると、パットーー!と開けた頂上に出て、
地平線まで広がる、広大なジャングルが目に飛びこんで来ました。
そこから見る空の色の素晴らしさーー、色鮮やかさーー、
現在の空からするとあの時の空の色は、人生で一番綺麗な素晴ら
しい空の色でした。

現在は晴れても白味掛かった青空です、抜けるような濃紺のどんな
青色でも染める事が出来ない色と思いました。
遠くは黒味掛かった色彩で空があくまで澄んでいると言う感じでし
たが、空に感動したのはその時が初めてでした。

遠くのジャングルのかなたに、一本の煙が真っ直ぐに、真っ直ぐに、
立ち上っていました。

あそこには誰か住んで居るのだと、風も無いその空に、人恋しく
誰かを呼ぶ様に、立ち上っていました。
何百キロと言う広い広大な面積に、地球と言う丸みさえ感じる
広大なジャングルが広がっていました。

側でインジオが腰を下ろして、黙って空を見上げていました。

「昔は毎日がこんな空だったーーー!、」
「今では雨上がりしか見られないーー」

人間と馬しか歩けない道で、誰もこの土地を荒らす人は居なかっ
たそうです、46年もの前に見た空が恋しくて時々思い出す事が
有ります、空が毎年毎年ーー、汚くなって行くみたいです。

私の人生も、時間も、全てが過去に流れてーー、年取った人生
の様に、空も汚くなっていったと思います。
 それにしては早過ぎると思いますーー、

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