私の還暦過去帳(13)
今日の話は46年ほど前に、アルゼンチンで農業をしていた時でした。
田舎の山奥のジャングルでの生活は単調な繰り返しで毎日が激しい労
働でした。
遊びと言う休息は魚釣り、鉄砲撃ち、酒を飲に町へ行き若い女の子達
と、ぎや~!と歌って踊って、馬鹿騒ぎをしている事などでした。
或る時近所で山豚が出て来たとの事で、インジオの案内で鉄砲撃ちに
出かけました。
狩猟はガイドが居ないと危険で、獲物を撃つ事は中々出来ません。撃
ち方は二名で、ガイドのインジオが道案内してくれましたが、猟犬を
3匹連れて来ました。
私達二名は木の上で待つ事になり、インジオが犬を連れて山豚を河の
近くの藪から追い出して来ました。
7~8頭の山豚が犬に追われて逃げて来ましたので、その中の大き目
の一頭をライフルで狙い上手く倒す事が出来ました。
しかしもう一人の友人は打ち損ねて、傷を負わせてしまいました。
大きな山豚は強暴な鳴声を上げて、犬達に襲いかかり傷で動きが鈍く
なって逆襲してきたのです。逃げられないと観念しての逆襲であつた
と思います。ライフルで狙っても近くに犬が居ますので撃てません。
インジオが犬達と山豚との格闘している所に追い付いて来まして、直
ぐに至近距離から山豚を散弾銃で打ち倒してしまいましたが、猟犬の
1匹が牙でやられてかなり腹部を切り裂かれて居ました。
彼は直ぐに犬を膝に抱いて、消毒をアルコールですると、縫い針で腹
部を縫合してやりました。
しかし出血が止まらず、直ぐに犬も弱って来ましたがどうする事も出
来ずに止血する為に必死で看護していました。
しかし犬は主人の膝で弱り行くのが分りました。
しばらくして、ふと見ると、他の犬も近くでじっと見ています。
膝の上で抱かれている犬は主人をゆっくりと見上げて、抱いている手
を「どうもーー、長いあいだ世話になりましたーー!」と言うかの様
に、ゆっくりとーー、ゆっくりとーー、舌で優しく舐めると最後は彼
の手にあごを乗せて目をつぶると二度と開きませんでした。
インジオは山豚の両目を復讐するかの様に撃ち抜き、山刀で頭を切り
落としてしまいました。
河の岸辺の小高い所にシャベルで穴を掘ると、その山豚の頭を枕にし
て、その猟犬を寝かせて土をかぶせると石を乗せて、お墓の様子を作
り、その前で生き残った犬とジット座っていました。
私達が帰ろうと誘っても動きませんでした。
彼は低い声で何か歌っていた様です。先に帰ってくれと言いますので、
歩き始めてもしばらくは彼の悲しい歌声が低く流れて聞こえていまし
た。
かなり離れた所からでも彼の泣くような歌声が聞こえていました。
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