2014年1月21日火曜日

私の還暦過去帳(473)

タバコの話し、

私は今ではタバコも吸いませんが、随分昔の若い頃は吸った事があります。
大学生の頃は貧乏勤労学生でタバコなど買う金も無く、子供の頃から扁桃
腺を良く腫らすことがあり、父が吸うタバコの煙も余り好きではありませんで
した。
50年以上前はその当時は新生、憩などと言うタバコを皆が吸っていたタバ
コでした。それからハイライトなどが出て来たと思います。
田舎ではゴールデンバットという強い、安タバコを吸う人が結構沢山居ました。

私が学生時代東京の下宿で友人が吸っていたのは、キセル・タバコで、長い
竹のキセルを使って吸っていました。金が無くなると、彼はどこからか吸殻を
拾ってくると、それをほぐして中のタバコを取り出してから、いったん日に干し
てお茶缶に入れ、安物のブランデーなどを垂らしてからキセルで吸っていま
した。
夏休みで郷里に帰り、どこからか手に入れた葉タバコの葉を刻んだ物を袋に
詰めて持ち帰って来ていました。田舎では戦時中、物資不足で葉タバコ農家
から内緒で分けて貰った種で隠れて栽培して、収穫したタバコの葉は納屋の
奥に隠して乾燥させていたと友人が話していました。

これは日本の専売法で特定の許可がある農家で無いと葉タバコは生産出来
なく厳しい監視と契約があったと言う事です。

貧乏学生の知恵だったと思いますが、彼はどこから手に入れて来たタバコ巻
き紙を使い、器用にタバコを巻いて吸っていました。
紙が無い時は辞書のページを破り、それでタバコを吸っていましたが、殆ど
下宿ではキセルで吸っていた様でした。

50年以上の昔です、新宿駅近くには戦災バラックの飲み屋街がまだ残って
いた時代です。しけモク拾いという人も見かけましたが、殆どが浮浪者風の
人でした。
昔から新宿や渋谷はその様な人が多く住んでいたのは、周りに飲食店が多
く、綺麗なレストランも沢山ありましたので、夜の12時過ぎに店仕舞いをし
て、残りの残飯を綺麗にナイロンなどに入れて浮浪者やホームレス達に残し
てありました。
私も深夜ロードショー映画などを見て、終電で下宿に帰る時に何度も見たこ
とがありますが、彼等が数名でその様な物を持ち寄り酒盛りをしているのを
見た事があります。側を通ると彼等が吸っているタバコの煙が安タバコの匂
いではなく、しけモクの、吸い口フイルター付きの高級タバコ吸殻だと感じま
した。
卒業後に移住した南米のパラグワイでは、どこのバス停の売店でもタバコの
一本売りがあり、現地人が2本とか3本程度買い、吸っているのを見ました。
それからどこのバスも列車も『タバコ・ネ-グロは喫煙禁止』と張り紙があり
ました。
インジオや現地人が吸うトウモロコシの柔皮に包んで吸うタバコですが、これ
は10m先からでもその強烈な匂いが致します。勿論の事に蚊やブヨなども
吸っているだけで近寄る事もありません。

私も原始林伐採後の畑でブヨに悩まされ、しばらく高価なアメリカ製の虫除
けなどを使いましたが、インジオが葉巻を口にくわえているだけでブヨも害虫
も寄って来ないと言う事で、インジオのおばさんの自家製葉巻をくわえていま
した。
煙は肺に吸い込む事は無く、吹かしているだけでしたが、確かにブヨが沢山
生息するジャングルの側でもブヨが寄って来ませんでした。

まるで虫除けの蚊取り線香をくわえて居るようでしたが、私が吸っていたのは
それぐらいでした。

昔の我々学生時代に、ピースなどと言う両切りの10本入りタバコは、高級タ
バコでしたが、友達がアルバイトで稼いでいたので良くそのピースを吸ってい
ましたが、香りが独特で、直ぐにそのピースのタバコ匂いを覚えてしまいました。

移住船に乗船して南米に移住して行く時に、船の中は無税でタバコを安く買
えますので、船が停泊して遊びに出る時にポケットに2箱ばかり入れていま
した。バーなどでピースを勧めると、その香りが良いので、売ってくれと言わ
れた事もあります。
移住船が給油で停泊した、ベネズエラの沖合いにあるオランダ領のキュラソ
ー島で波止場の近くに買い物に出ていましたが、興味が湧く物も無く波止場
に戻って、そこで遊んでいる子供達を見ていました。

近くには大きな給油ホースから船舶重油が給油されているポンプの音が響い
ていました。私がぼんやりと見ながら何気なくピースのタバコに火をつけて一
口吸うと、近くに居た警備の兵隊がここは禁煙地域だと言う看板を指差して
いましたので、慌てて消して捨て様とするとその若い兵士が、そのタバコを欲
しいというゼスチャーをしているので、渡すと隠れる様に監視小屋の中に入
り、タバコを吸っている感じでした。

しばらくして小屋から出て来ると、周りを見回して、もっとタバコが欲しいと言
うゼスチャーをして居ますので、このタバコは高い値段だと言う事を教えると、
分かるのか残念な様子をしていました。

彼が肩に担いでいたライフル銃に興味があり、長い弾倉が付いているので、
指差して見せろというと、隠す様にして瞬間ライフルから弾倉を抜いて見せて
くれました。中には実弾が装填されて居るのが見えましたが、私もいたずら心
で、ピースの箱を1個、ポケットから出すと『これと実弾1個と交換しないか、』
と片言のスペイン語で言うと、若い兵士の目が輝くのが分かりました。

彼は警備の小屋に戻ると、直ぐに出て来て、私の側に来ると、片手に隠す様
に本当に1個の実弾を見せてくれました。
そうなれば私も周りを見回して、ポケットからピースのタバコを出すと相手に
握らせました。
暗黙の了解です、彼もすばやく私に弾を1個手渡すと、タバコをポケットに入
れると、肩にライフルを担ぐと横を向いて、さっさと巡回する様に波止場を振
り向きもしないで歩き出しました。
私が船のタラップを登りその警備の若い兵士を見ると、にっこりと笑い、嬉し
そうにタバコを吸うジェスチャーをしていました。

その弾は火薬を抜き、プライマーも抜いてダミーの飾りとしてしばらく記念に
持っていました。

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