2013年5月20日月曜日

第3話、伝説の黄金物語、(80)


 襲撃者への報復成功、

富蔵は車に乗り込むと、隠しコンパクトの座席の下からワルサー拳銃を
取り出してケースから取り出すと消音器を取り付けて、弾を装填した弾
倉を拳銃に差し込んで用意していた。

モレーノも愛用の拳銃を取り出すと使い慣れた動作で点検をしていた。
彼もシュマイザーを用意していたが、ケースから小型ライフルを取り出す
と、スコープを装着して調整していた。
それにはいつもの細長い消音器が用意されていた。

保安幹部がガスのボンベを2本用意して来ていた。それは細長いスプ
レーガンの様な感じで引き金を引くとガスが噴射するような構造になって
いた。保安幹部が手配の用意をした手下を促して車を発進させた。
後からも一台、黒塗りの目立たない車が付いてくるのが分かった。

バックミラーで見ると2人が乗車しているのが確認された。
サンパウロの郊外に出る道を住宅街に沿って走って行ったが、中産階級
が住む家並みが見えて来ると、保安幹部が緊張して、もう少しだと教え
てくれた。
小さな公園の並木の陰に目立たない様に駐車すると、椰子の木がある
家が目標だと教えてくれた。
富蔵がライフルを持ち、モレーノがシュマイザーを抱えていた。
軽いコートの下に銃器を隠して目標の家の近くまで歩いて行ったが、
シーンとした住宅街の静寂が気になるぐらいであった。
保安幹部も手下を連れてひっそりと足音を忍ばせると塀を乗り越えて庭の
茂みに隠れていた。
するとペドロが隠れていた茂みから足音を殺して出て来た。

お互いが声を潜めて情報を交換していたが、犯人がシャワーを浴びて寝
入ったところだと教えてくれた。見張りが何処からか出て来ると、風呂場
の窓が換気で少し開けてあると教えてくれた。
保安幹部の手下がすばやくガスマスクをすると、念を入れて点検してガス
ボンベのスプレーガンを持つと風呂場の窓に近寄っていくのが闇を透かし
て見えていた。

微かな蚊が泣くようなシュー!と言うみじかな音が聞こえていたが、その
他は何事も無く狭い離れの家は真っ暗に電気も消されて静まり返っていた。
しばらくして微かにペンシルライトが点滅するのが見えた。

保安幹部は用意して来た小型のカバンから靴に被せるカバーを出すと、
自分の靴の上に被せ、皆にもその様にする様に合図した。
卓上演習の時に教えられたように、皆は靴にカバーすると持ち場に着い
て、離れの部屋に最初に侵入する保安幹部の手下とそれを護衛するペドロ
がドアにへばり付いた。

ドアのノブが微かに音がすると入り口のドアが開き、ガスマスクをした手下
の男がガスボンベを手に部屋の奥に音を殺して進入して行った。
その横に同じくガスマスクしたペドロがシュマイザーを構えて速射姿勢で構
えていた。

シーンとしたみじかな時間が過ぎ、手下が出て来ると成功のサインを出す
と入れ違いに保安幹部が小さな包みを手に、富蔵を手招きした。
富蔵はガスマスクをすると懐中電灯を手に保安幹部と犯人が寝ているベッ
ドに入って行った。
ベッドの毛布が少しずれてシーツの上に金髪の犯人が横たわって寝ている
姿があった。保安幹部は注射器を取り出すと、犯人の性器のペニスをゴ
ム手袋でつまむと、先の尿道の中に針を差込み僅かな液を注射していた。
微かに身体が震える様に動くと、後は微動もしなくなった。

保安幹部は首の動脈と手の脈を少し時間をかけて確かめると、皆にうな
ずくように立ち上がり、成功のサインを出した。
後は手順どうりにあっと言う間に皆が消えてしまった。
車3台も別々の方角に走り去り、後はまったくの闇と静けさであった。

車を走らせながら富蔵は犯人の部屋のゴミかごに、無造作に捨てられて
いた紙くずをポケットから出すとモレーノに渡して調べるように言った。
ペドロが部屋中を探して何か重要な書類が無いか調べていたが、何も見
つけることは出来なかったが、富蔵は部屋を出る寸前に見つけた屑の中に、
破棄された紙を見て持ち帰ってきた物であった。

彼は懐中電灯で一枚ずつ紙をめくりながら調べていたが、突然、『これ
は重要な、貴重な事が書いてある』と言うと、まだ共犯者がいるようだ・・、
直ぐに対処して行動しなくてはならないと言った。

それからいくらもしない間に皆がスミス商会の保安課が使うオフイスに集
合していた。早速、ちぎれた用紙を並べてパズルのように貼り合わせて
いた。
犯人が何処かに電話しながらメモしていた事が分かり、次のユダヤ人襲
撃の予定を書いていた事が分かった。
何処かサンパウロ市内に住む共犯者に連絡を取っていたと感じられ、共
犯者が何人いるか、グループか・・、今は何も分からない事ばかりであった。
しかし、単独犯と決め付けていた事が間違いであったことが分かっただけ
でも、これからの対応は難しくは無かった。

それに共犯者の連絡先の電話番号も走り書きで見つかったことは、これ
からの行動に対して直ぐに動けると感じていたが、何よりも次の襲撃目標
まで分かった事は有難かった。

彼等はナチスドイツに敵対する連合軍に協力する全ての人間を対象にし
ている事が分ったが、彼等がどの様に組織を編成して行動に移したか、
それが問題と皆で話していた。

直ぐに共犯者の電話番号を盗聴することを決め、保安幹部が緊急に何処
か電話を入れていたが、今夜の内に共犯者の家に盗聴器を取り付ける事
が決まった。
切り捨てられたメモ用紙を修復して読むと、そこには標的として逃亡ユダ
ヤ人医師の二人の名前も読み取れた。

直ぐに医師達に電話が入れられ、部屋から出ないように注意して、保安
幹部は直ぐにホテルに宿泊している医師達二名に護衛を手配していた。

用心に越したことはない・・、『急げー!』と言葉短く命令していた

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム