2012年1月31日火曜日

私の還暦過去帳(154)

今日は晴れて暖かい日でした。感謝祭のお休みで里帰りして
いた娘も帰りまして、急に静かになりましたが、この素晴らしい
天気に、私の有機栽培をしていた家庭菜園のかたずけをしました。

5月から収穫を始めて、長い期間沢山の野菜を食べて余った
物は多くの近所や知り合いに配りまして、喜んでもらいました。
今日も最後のトマトをかたずけていたら、トマトの茂みから青い

トマトが沢山採れまして、保存して赤くなったら食べる様にして
います。これで例年同じ様にクリスマスまで食べる事が出来ます。
今日の思い出話しは、かれこれ46年前となりますがアルゼンチ

ンの郊外で体験した初めての、大陸内陸部の嵐のすさまじい様子
を書く事にします。私がパラグワイを出て、ブエノス・アイレス
の郊外で知合いとトマト栽培を始めた頃です、苗を植えてその

支柱を立てる為に、パンパス草原の中に整然と作られた牧場の
中に支柱となる竹を切りに行っていた時でした。
だいぶ変わりやすい天気で、朝早く現場に行ってかなり切り出
して居た時でした。急に風が出て来て雲行きが怪しくなり、暗く

空が雲で覆われて、微かに遠くで雷鳴が聞えて、地平線は空と
の境が分らない様にどす黒く、まるで墨を塗りたくった様に真っ暗
となりました。風はますます強くなり、牧場の防風林のユーカリの

木々が音を立てて唸って、小枝が風で飛び散っているのが分り
少し心細くなってきました。その時にパラパラと雹も降り出して、
牧場の干草を囲ってあるトタン屋根の小屋が『カンカンーー!』

と乾いた音を立てて、まるで危険信号の様に鳴り、かなり遠くまで
聞えていました。その時です、多くの牧場の牛が列を作り急いで
ユーカリの日陰を作る小さな林の中に集まり出しました。

ボスと見られる牛が吼える様に鳴いています。その時雷鳴が近く
で鳴り、火柱が近所のユーカリの頂上で炸裂する様に光ると、あと
は『キ―ン!』と耳が鳴る感じで、ズドーンと衝撃が直に身体に感
じました。

その時は私もナタや山刀などは遠くに放り出して、防風林の中に
避難していました。50センチは直径があるかと思う大きな木でそ
の根元に座って、嵐が過ぎるのをジッと待っていました。

列を作って牛達が集まり、日陰樹の林はまるで牛の群れの塊が押
合い、圧し合いして居る感じでしたが、ちゃんと統制が取れ、真中
は子牛達が居て、外側は親牛が全部尻を外に向けて見事に空きも

なく丸く並んでいます。びっしりと隙間なく、まるで装甲車が並ん
でいる感じがしました。突然真っ暗くなった空から、かなりの大き
さの雹が落ち始め、パンパの草原の草が少し白く見える感じに染ま
りました。

私は初めての体験で少し身体に震えが来て、膝がガクガクしていま
した。『えらいこっちゃ~!』とこれでは迎えに来るトラックもい
つの事やらと、シュ―ン!と落ちこんでいました。遠くに見える牧
場主の水揚げポンプ用風車が物凄い速さで廻っていますが、連結は
外してあるのかポンプは止まっている様でした。

いつもはゆっくりと風車が『カターン、カターン』と軽い音を響か
せて水を汲み上げていましたが、今日はまるで恐ろしいような感じ
で廻っていました。

その時、地平線からまるで渦巻きが涌き出る感じで竜巻が突然に現れ
天と地がその竜巻で繋がって居る感じで、どす黒い雲が凄い早さで雪
崩を打つ様に流れています。時々その真っ黒い雲の中に雷鳴が飛び散
り、『ズシーン』と言う音が伝わって来る感じがしました。

その頃は『なむあみだぶつ!』などと口で唱えていました。威勢の良
かったお兄さんがまるで、震えながらユーカリの木にしがみ付いてい
る感じで、まるで恥じも外聞も無く、ひたすら嵐が過ぎるのを祈って
いました。

なんと自然の偉大さ、すさまじさ、強烈さに、ただただ恐れ入ってい
ました。おそらく近くで『ドーン!』と落雷でもあり、樹上の木が
『バリバリ~』などと音を立てていたら、これまさに、おしっこでも
漏らす事になったと感じていました。

その頃は喉はカラカラ、緊張で膀胱が破裂しそうになっても、出るも
のも出ない状態で、少しショック状態でいました。生まれて初めての
体験で一人で来た事がますます悔やまれました。誰かと来ていたら
少しは心強い感じだったと思いましたが、時はすでに嵐の真っ最中で、

あるのは口の中で、もごもごとつぶやく『なむあみだぶつ!』のみで、
生きた心地がしませんでした。そうしている内に遠くで雲が切れ、少
しどす黒い雲がちぎれて行き、僅かですが空が見え雷鳴もダンダンと
遠くに鳴る様に聞えまして、どうやら峠を越した感じがしました。

近くの牛達の群れも、何か鳴き声が変わり、落ちついて来た感じがし
ます。私もホッとして、心の緊張が取れ少し安心したのか、さっきま
で堪えていた物が急に緊急信号をだして来ました。

しがみついていたユーカリの木根に、それこそ『ジョー!』と激しい
音を立てて出す物を出してしまいました。やれやれと言う感じが心か
ら湧いて来て、ホッとした気分も出て来ました。
その時に地平線のかなたに光りが輝き、七色の虹が出て居るのを見付
けて、その神々しい輝きに何か神秘な感じを受けた思いがします。

自然の雄大さ、凄さ、神々しさ、神秘さを今でも忘れることは出来ま
せん。

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